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「子どもたちのため」の活動として位置付けられながら、入会の強制や役員負担の多さに疑問の声があがるPTA(Parent-Teacher Association)。「スリム化」や「不要論」をとなえる保護者も少なくなく、改革や廃止に踏み切る学校もある。

弁護士ドットコムがPTAに加入した経験をもつ会員の弁護士にアンケートを実施したところ、「強制参加は時代遅れ」「明確なルールがない」といった、厳しい意見が寄せられた。

アンケートは12月3〜18日に実施し、26人からオピニオンが寄せられた。PTA自体が必要か、不必要かについてはほぼ同数だったが、「必要」と回答した弁護士からも「負担を軽くする試みが必要」など、意義を認めつつも課題を指摘する声が相次いだ。

以下では、PTA経験者の弁護士たちから寄せられた声やエピソードを紹介する。

●入会は「不利益を懸念」「情報交換のため」

保護者たちから特に疑問の声があがるのは、PTAの「強制」加入だ。アンケートに回答した弁護士からも「事実上強制的な雰囲気があり、よくない」とのコメントがあった。

PTAの入会理由について尋ねると、入ることが「当然」という雰囲気があったこと、入会しないという選択肢がなかったことなどの消極的な理由が目立った。

「当然入るものという雰囲気だったので、特に考えませんでした」 「加入案内に『任意だが毎年全員加入している』と書かれているため、加入しないことで不利益を受けたり、迷惑をかけたりするのではないかと不安なので」 「転校組のため、参加しないことにはどうしようもなかったから」

一方、PTAを情報交換、ほかの保護者や学校と関わるための場としてとらえ、入会した弁護士もいた。

「子どもたちと学校の現状を知ることと保護者同士で情報交換ができる機会をふやしたかったから」 「学校や教育委員会に対して意見を言うべき時に、PTAという団体によれば、個人によるより行政は動きやすい。PTAが存在して活動することに意義があると思うなら、参加して支えなければならないと思ったから」

活動の多くが平日日中におこなわれることも、働く保護者の不満を招く要因のひとつとなっている。この点、ある役員経験者の弁護士は「小学校まではPTAの活動が平日に行われるため参加が困難であった。中学・高校は土曜日であることが多く、参加が可能となった」としている。

●時間、予算、場所…非効率ポイントの改善を

弁護士は、PTAの必要性をどのようにとらえているのか。アンケートには「必要」「不要」がほぼ半々だったほか、「まったく任意ならよい」「単位会(各学校)は必要だが、市P・県P(PTA協議会等)、全国組織は不要」などの意見もあった。

「必要」と回答した弁護士からは「地区PTA連合会の役員もやらされたが、淡々とこなせば楽しいこともあった(会長経験者)」などの前向きなエピソードが寄せられた。

一方で、PTAの意義は認めつつも「強制参加は時代に合わない」「会議が無駄に長い。地域住民に配慮するあまり、無駄な活動が増えている」など、改善を求める声もみられた。以下、その一部を紹介する。

「会費、とくに県や全国に納入される多額の会費が子どもたちのために使用されているのか疑問がある。県の役員の中には、子どもたちが卒業後も居座り、全国大会に出張し交通費や無駄な懇親会等で上納された会費の一部を使用している。このようなことは不当である」(会長・副会長経験者)

「慣例を続けるのではなく制度変更が必要と思う」(役員経験者)

「個々の負担を軽くする試みが必要であると感じた」(PTA副会長・その他役員経験者)

「予算も活動スペースも時間も制約が多いので、全てが古いまま続いていて、極めて非効率的である(新しいことといえば、連絡手段がLINEであることぐらい)。活動内容も活動方法も抜本的に見直す必要がある」(係活動経験者)

「不必要な内容の活動も、これまでしてきているからというだけで実施しているものが多く、もう少しメリハリがあってもよいと思う」(役員経験者)

●PTAは「不要」過度な同調圧力への疑問

一方、「不要」と回答した弁護士からは、「日本社会の変化と昭和のままの法規・統治体制であることのズレが市民レベルで表面化している団体だと思います(会長経験者)」など、PTAの存在意義自体を問う厳しい意見や疑問の声が寄せられた。

「無駄な活動が多すぎるのに、誰かが現状維持に固執するので何も変わらない。解散して、一から出直すべきだと思う。コロナ後、ほとんど何も活動しなくなっても支障は出ていないと思う」(役員経験者)

「無駄な会合が多すぎる。リモート会議を活用すべき。先例を踏襲しすぎ」(役員経験者)

「現在のPTAの形としては、時代遅れで存在意義が一切ない。令和の少子化に応じた新しい形で新生すべき」(役員経験者)

「悪しき前例主義を背景として明確なルールのない中で、過度な同調圧力によって運営されている」(副会長経験者)

「会費の管理を事実上学校がしていることと、報告漏れ口座があったなどの管理の杜撰さ」(副会長・係活動経験者)

「不要」と回答した弁護士の中にも、役員経験者が複数みられた。引き受けたのは「ノルマ達成のため」「前任者やパパ友に頼まれた」ことなどが理由だという。一方、「役員を断った」というある弁護士からは、次のエピソードが寄せられた。

「役員を断ったら(当時司法試験受験生)電話がかかってきて、役員選出会議に出ないなら勝手に選任すると言われた。それでもやりません、と言ったら選ばれなかった。子どもも学校の教師に『お母さんは役員をしないのか?』と言われた。子どもにまで文句を言うのはおかしいと思う。共働きや介護中の人など負担が大きい人もいるのに、全く考慮しない組織はものすごくおかしいと思う」

●弁護士たちの挑戦「理屈で説得」「改正案の作成」

さまざまな思いを抱えながらも、PTAに入会し、活動をおこなった弁護士たち。彼らだからこそ、できたこともある。以下、回答した弁護士が実際にPTAでおこなったことについてのエピソードを紹介する。

「積極的に参加した人が、参加して良かったと思えるような活動にするよう工夫した。P(保護者)の立場から学校に助言、提言などできた。弁護士だからできたというわけでもないと思うが、弁護士だから意見を傾聴してもらえた面はあると思う」(会長・その他役員経験者)

「入会申込書がない→作った、会費の額が多すぎ→減額した、体育館での総会、毎年作る冊子など手間のかかることが多い→ウェブを利用するようにした。自動的に入会になっているとか、役員が義務とか、任意加入団体であることと矛盾する仕組みになっている→活動は強制できないことを伝えた(自分は会長だったので)」(会長・副会長・顧問経験者)

「弁護士であれば理屈で説得でき、規約等の改正も容易」(会長経験者)

「規約の改正に関して意見を言い、改正案の作成をした。PTA会費の使途や支出の際の手続について適当にしないよう意見を述べた」(その他役員経験者)

「『弁護士だから』というのは特にないが、地域の『ボス』への反論等はした。周囲も弁護士さんが言っているのだから・・・という雰囲気で当該反論には一目置いてくれたように思う」(役員経験者)