井口資仁氏(写真:AP/アフロ)

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球場がどよめきに包まれた。ロッテファンだけではない。整列した選手たちも驚きの表情を隠せなかった。ロッテ・井口資仁監督が2022年10月2日、ソフトバンクとのシーズン最終戦(ZOZOマリン)後に行われたセレモニーで、電撃辞任を表明した。

続投が既定路線だった中で挨拶の場に立った井口監督は、「今年こそ頂点をつかむとキャンプインし、シーズンをスタートしました。3年ぶりのBクラスとなってしまったことは、私の責任だと思っています。私は今季限りで退任させていただき、次の指揮官にバトンを託したいと思います」と辞任する意向を発表した。

「井口路線の継承という観点で考えると...」

スポーツ紙デスクは「まさか...でしたね。今年は5位でしたがシーズン終盤まで混戦のパリーグで食らいついていました。20年から2年連続で2位となり、指揮官としての評価は高かった。就任5年目の今年は特別な思いがあったはず。結果を残せず、身を引くことを決断したのでしょう」と語る。

結果を出せなかった井口監督だが、同情すべき点はある。今季は主軸を担うはずのレアード、マーティンが打撃不振でふるわず、打線のやりくりに苦労した。その中でも高部瑛斗が頭角を現し、44盗塁で自身初のタイトルを獲得。高卒ルーキーの松川虎生を開幕スタメンで起用するなど若手を積極的に登用し、3年目右腕・佐々木朗希は4月10日のオリックス戦(ZOZOマリン)で完全試合を達成するなど自己最多の9勝をマークした。

井口監督で思い出されるのはドラフト時のクジ運の強さだ。19年ドラフトでは楽天、阪神と3球団が1位指名で競合した藤原恭大、翌20年も西武、日本ハム、楽天と4球団が競合した佐々木朗の当たりクジを引き当てた。19年オフに楽天からFA宣言した美馬学の獲得に成功するなどチームのマネジメント能力が高い。今後はGMとしてチームを支える可能性が十分にある。

注目されるのが、後任監督だ。有力候補として、福浦和也1軍打撃コーチ、OBで野球評論家の里崎智也氏、初芝清氏の名前が報じられている。

「井口路線の継承という観点で考えると、福浦打撃コーチが適任だと思います。個々の選手の能力を熟知し、雄弁なタイプではないが選手たちに慕われている。ヘッドコーチに有能なブレーンをつければチームを進化させることができるでしょう。個人的には、現在社会人野球のオールフロンティアで監督を務める初芝さんは面白いと思います。現役引退後はかずさマジックのコーチ、セガサミーの監督を務めるなど、アマチュアの指導者として経験が豊富です。ロッテでどういう野球を見せてくれるか興味深い」(スポーツ紙記者)

井口政権に一区切りをつけ、新たな指揮官の下で再スタートを切る。(中町顕吾)