食べ放題のビュッフェスタイルが経済的に成立する理由とは?

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「定額で食べ放題」をうたうデザートビュッフェやランチバイキングなどに行くと、つい「元を取ろう」と張り切って食べたり飲んだりする人は多いはず。食べ放題・取り放題なビュッフェスタイルは、一見すると店にとっては損失を生みかねないように思えますが、ビジネスとしてちゃんと成立しています。ビュッフェスタイルはなぜ損を生まないのか、そのからくりを海外ニュースメディアのthe Hustleが解説しています。

The tricky economics of all-you-can-eat buffets

https://thehustle.co/the-economics-of-all-you-can-eat-buffets/

◆人件費と原材料費の節約

the Hustleがアメリカ全国で展開されている食べ放題プラン30種類の価格を調査したところ、平均およそ20ドル(約2200円)で、その内訳は原材料費が7.40ドル(約800円)、人件費が6.00ドル(約660円)、家賃・テナント料が2.8ドル(約300円)、そのの他費用が2.8ドル、純利益がおよそ5%の1ドル(約110円)だとわかりました。

食べ放題プランは利益率が低い分、大量の客を呼び込む必要があります。42の州に498店舗を抱える食べ放題チェーン「ゴールデンコラル」の1店舗はフロア面積が5000平方フィート(およそ465平方メートル)で、475人分の席が確保されていて、特に人が多い土曜日には、900人以上が利用することもあるとのこと。しかし、通常のレストランではそれだけの人数をさばききることは困難です。

食品コンサルタントのジョー・エリクソン氏は、ビュッフェスタイルの利点は人件費を抑えられるということだと指摘し、「一般的なレストランでは、1人の料理人が1時間に最高でも25人までにしかサービスを提供できません。しかし、ビュッフェスタイルでは一度に大量の料理を作るため、1人の料理人で1時間当たり200人分の料理を準備できる可能性があります」と語りました。

また、一度に大量の料理を作ることのできるビュッフェは、食材を大量に購入することで原材料費を安く抑えるというメリットもあります。the Hustleが食品卸売業者のデータを使って計算したところ、1人前の原材料費はフライドポテトが0.30ドル(約33円)、サラダが0.50ドル(約55円)、パスタが0.75ドル(約75円)、ローストチキンが1.13ドル(約120円)、ステーキが2.25ドル(約250円)にまで抑えられることが判明。



ただし、ビュッフェの欠点の1つが「用意すべき料理の量を予測するのが難しいこと」であり、2014年に行われた研究によれば、ビュッフェスタイルでは料理の5%〜25%が廃棄されると報告されています。こうした食品ロスを削減することもビュッフェスタイルを成功させるためには重要なポイントです。

◆客に多く食べさせるためのテクニック

ビュッフェスタイルの価格は一律に設定されており、サービスの範囲内であればどれだけ食べても価格が変動することはありません。そんなビュッフェスタイルを提供する店の狙いは「できるだけ安く、できるだけ早く客の腹を満たす」こと。そのため、ビュッフェスタイルのレストランでは、ポテトや米など、安価で腹が膨れる料理を最初のトレイに並べることが多いそうです。2013年の研究によれば、ビュッフェの客の75%が最初のトレイに並んでいる料理を皿に取り、客が食べた料理の66%が最初の3つのトレイから取られていたことがわかったとのこと。



また、「ビュッフェで使用した食器のサイズが小さいほど、全体の食事量が減る傾向がある」と2012年に報告されており、実際にレストランによっては取り皿が少し小さめになっていることもあるとthe Hustleは指摘しています。他にも「ポテトのような腹が膨れる料理を取るスプーンは平均よりも大きくし、肉を取るトングは平均よりも小さくする」や「水を飲むためのグラスは大きくし、頻繁に水を補充する」といった工夫が採用されているケースがあるそうです。

また、the Hustleによると、一部の高級ホテルのビュッフェでは、「トリュフやフォアグラ、カキなどの高級食材を使ったメニューはわかりにくい場所に配置する」という作戦が採用されていたことがわかりました。

◆ほとんどの人は食べ放題の元をとれない

平均的な量を食べる客、平均よりも小食な客、平均よりも大食らいな客という3パターンに分類すると、1人当たりの平均利益はそれぞれ1ドル、3.70ドル(約400円)、−8.50ドル(約930円の赤字)になるとのこと。しかし、300人の客を想定した場合、平均的な量を食べる客は225人、小食な客は60人、大食らいな客は15人という割合になるそうで、この割合を当てはめて計算すると、全体の利益は319ドル(約3万5000円)となります。つまり、食べ放題を利用する客のほとんどは店に損失を与えるほど食べることはできず、全体で見るとレストラン側が損をすることはありません。



また、ビュッフェスタイルではソフトドリンクを個別に販売することで利益を上げるという作戦もあります。ソフトドリンクの原価は非常に安いので、1杯2ドル(約220円)で販売しても、粗利率は1000%を超えるそうです。

ただし、大食らいな客が大量にやってきて延々と食べ続ければ、もちろん店の損失はどんどんと膨らんでしまうため、ビュッフェスタイルを採用するレストランでは制限時間が課されている場合がほとんど。遠慮なく食べ続ける大食らいの客とレストランの間でトラブルが起こることもあり、2012年にはウィスコンシン州のビュッフェスタイルのレストランで魚のフライを合計20枚も平らげた客がレストランから追い出され、店の前で抗議する様子が報じられました。

Man Denied All-You-Can-Eat Fish Arrested For Picketing - Eater

https://www.eater.com/2012/5/15/6586551/man-denied-all-you-can-eat-fish-arrested-for-picketing