「ブラボー!」の一言でスタジアムを盛り上げる長友。(C)SOCCER DIGEST

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 三笘薫の負傷により、北中米ワールドカップに向けて暗雲が垂れ込めた日本代表。このエースだけでなくコンディションや立ち位置が定まりきらない選手が複数いて、5月15日のメンバー発表を前に不安が広がっている。

 その流れを変え得る存在はいるのか。もし“いる”とするなら、そのひとりが39歳のベテラン、長友佑都だ。

 純粋なパフォーマンスだけを見れば、今回の代表入りは盤石とは言えない。3月に右ハムストリングを痛め、実戦復帰は5月に入ってから。本人も「まだまだ」と語るように、コンディション面は万全とは言い難い。

 それでもなお、この男にはプレー以外の部分でチームに影響を与えてきた実績がある。
 
 2018年のロシア・ワールドカップ開幕前、日本代表は厳しい状況にあった。3バックを試したガーナ戦(5月30日)、本田圭佑をトップ下に置いたスイス戦(6月8日)でいずれも0−2で敗れ、チーム状態は芳しくなかったのだ。

 スイス戦の2日後、長友が金髪で現れる。練習場に姿を見せた瞬間、記者団からどよめきが起きた。そうして気合いを入れ直した彼は練習後、危機感を口にする。

「(スイス戦で)自分が何をやれたかといえば、得点にも絡めなかった。このままだとワールドカップで3戦全敗もあり得る」

 さらに本田圭佑にも苦言を呈した。
 
「圭佑なんかもまだまだ走んなきゃいけない。もっとミスを減らしてくれないと、チームは勝てない。そういうことはもちろん圭佑とも話しましたけど、もっと僕たちが若い選手よりも戦えないと、走れないと。経験だけでは勝負できないですよね。そんな甘い世界ではないと思いますよ、サッカーは」

 長友の断固たる決意がチームメイトにも伝わったのか、その後、日本代表はワールドカップコロンビアを破るなど躍進を遂げる。ベスト16でベルギーに2−3と劇的な逆転負けを喫するものの、大会前の状況を考えれば“奇跡の快進撃”だった。

 だからこそ、今回も長友に同様の役割を期待したくなる。三笘の負傷でチームの前提が揺らいでいるのは事実だ。こうした局面では、戦術や個々のコンディションに限らず、全体の空気をどう保つかも問われる。
 
 その点で、長友にはピッチ上のパフォーマンスだけでは測れない“影響力”がある。それは、当人の言葉を借りれば「日本で唯一無二の魂」だ。

「普通じゃない魂。僕のこれまでの経歴もそうだし、成し遂げてきたことも含めて、普通じゃないですよ。とにかく地獄に落ちたとしても這い上がってくるその魂があると。苦しいときとか逆境に打ち勝つ、誰よりも強い魂があるっていうことですね。

ワールドカップ期間中、長い合宿期間の中で色々と上手くいかない時もあります。外には出ていない出来事もたくさんあるんでね。そういうことも自分はしっかりと処理できるなと。それも含めた魂です」

 プレー以外の領域でチームに与える影響。それはロシア大会でも証明済だ。もちろん、39歳の長友を選ぶリスクもある。純粋な戦力としての優先順位は慎重に見極める必要があるだろう。
 
 ちなみに、スタッフとして連れて行くべきとの見方には賛同できない。選手とスタッフではそもそも立ち位置が違うし、スタッフと選手の間には確かな距離がある。選手としてワールドカップに行く、そこは本人が最も譲れない部分ではないのか。

 それでもなお、日本代表に長友は必要か。三笘が負傷し、不確定要素が増えた今だからこそ、その判断が問われる。もうメンバー発表は間近だ。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)
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