プロトタイプだけの超高性能 ポンティアック・トージャン(2) きっと完成時はドッカンターボ
フェラーリ308 GTBに並んだ特別仕様の価格
ゲイル・バンクス氏が組んだ、特別なV8エンジンを積んだポンティアック・トージャンは、この1台しか作られていない。オプションで希望は可能だったものの、価格はフェラーリ308 GTBに並び、二の足を踏ませたのだろう。
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ポール・カウランド氏が所有するトージャンはプロトタイプで、1985年にグレートブリテン島へ運ばれ、所在がわからなくなっていた。ところが偶然にも、彼がテレビ番組の撮影で話しかけた人物は、それを購入した男性の息子だった。

ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
「素晴らしい話を聞かせてくれました。購入した彼の父は、とても大切にしていたそうです。亡くなって以降、絶対に手放せない気持ちのままだと教えてくれました。でも、念のため名刺を渡したんですよ」
カウランドが続ける。「取材を終えて帰宅する途中、電話が鳴りました。自分がクルマにピッタリの人物だと話してくれて、納得できる価格が提示されたんです。プロトタイプだったことは、その時点では知りませんでした」
少し放っておいても復活できるアメリカ車
レッドのトージャンには、デモ車両としてほぼすべてのオプションが盛り込まれていた。ゴッティ社製のアルミホイールに、LCD式のメーターなど。
約50台のカーコレクションを保有するカウランドだが、運転は難しいという。「ようやく、クルマのことを理解してきた感じです。今買わなければ二度と手に入らないという強迫観念で、コレクションは増えてしまうんですよね」

ポンティアック・トージャン・ツインターボのオーナー、ポール・カウランド氏 マックス・エドレストン(Max Edleston)
彼が購入してからも、4年間ほど放置されていたらしい。「アメリカ車は、少し放っておいても復活できる点が好きですね。ブレーキフルードの交換など、簡単な整備で再び走るようになる場合が殆どです」
1985年にはドッカンターボを味わえたはず
ジャンプケーブルをつなぎ、トージャンのV8エンジンを始動。アクセルペダルを軽く踏むだけで、2つのヘッドが左右に揺れる。ターボチャージャーの唸りはなく、ブローオフバルブの悲鳴も聞こえない。
カウランドの話では、ターボブーストは本域まで上昇しないという。「完成直後には、高品質な鍛造部品が多用されていたはずですが、どこかの段階でのリビルド時に、質の悪い部品で代用されたんじゃないでしょうか」

ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
アクセルペダルを踏み込んでも、ダッシュボードのブースト計は大きく変化しない。ボートの場合は、基本的に高域で回り続けるため、ターボラグは問題にならない。大径だから、ブースト圧を充分に高めるのに、そもそも相当な時間が必要だろう。
恐らく1985年の時点では、強力に打ち出されるドッカンターボを味わえたはず。「本来の状態へ戻すのに、どれくらい費用がかかるんでしょうね」。彼がつぶやく。
とても状態の良いトランザムのような走り
ブレーキは、ポンティアックのトランザム用オプションが組まれているだけ。300km/h以上の速度域では、明らかに役不足なはず。そのかわり、英国の一般道を走らせるのに、過剰ではないパワー感ではある。
4速ATは、太くなったトルクに合わせてアップグレードされている。停止中にDを選択すると勢いよく繋がり、ブレーキペダルを踏んだままでもトージャンは進みたがる。800馬力の勢いではないとしても、確かに速い。

ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
「とても状態の良い、トランザムのような走りだと思います。特に、サスペンションの設定は最高ですね」。カウランドが話す。乗り心地は快適で、ステアリングも正確。典型的なアメリカン・マッスルカーとは、印象が大きく異なる。
時速200マイル以上の性能はプロトタイプだけ
最高速度は時速206マイル(約331km/h)だという、開発者のラッセル・クヌーセン氏の主張は、大げさなものではないだろう。カウランドも、そう考えている。V8エンジンに並ぶターボの大きさと、バンクスの技術を鑑みれば、不可能ではない。
量産車だと表現することに疑問は残るが、1985年から1991年にかけて、136台のトージャンが提供されたことも事実ではある。限られた生産数ながら、ポンティアックの期待へ応えた内容でもあった。

ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
それでも、殆どには自然吸気のV8エンジンが載った。ターボチャージャーやスーパーチャージャーを希望した顧客は、1人づつしかいなかった。300km/h以上の性能が与えられた例は、プロトタイプだけだったことも間違いではない。
実は、クヌーセン・オートモーティブ社は、アメリカ・ネブラスカ州で事業を続けている。「他社がボディを与えたモデルとして、当時では優れたデザインの1つだったと思います。充分な注目も集めましたよ」。クヌーセン本人が振り返ってくれた。
ポンティアック・トージャン・ツインターボ(1985〜1991年/北米仕様)のスペック
北米価格:6万2000ドル(新車時)
生産数:136台(トージャン合計)
全長:−mm
全幅:−mm
全高:−mm
最高速度:331km/h
0-97km/h加速:7.3秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1510kg
パワートレイン:V型8気筒5733cc ツインターボチャージャーOHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:811ps/4800rpm
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速オートマティック(後輪駆動)
