古代ローマの汚水溜から「当時の庶民が食べていたファストフード」の手がかりが見つかる

by James Stringer
地中海西部に浮かぶスペイン領のマヨルカ島はかつて古代ローマの植民地であり、ポレンティアという都市が築かれていました。そんなポレンティアで見つかった古代ローマ時代の汚水溜から、当時の庶民が食べていた「ファストフード」の手がかりとなる鳥の骨が大量に見つかったと報告されています。
International Journal of Osteoarchaeology | Wiley Online Library

Roman-era 'fast food' discovered in ancient trash heap on Mallorca | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/romans/roman-era-fast-food-discovered-in-ancient-trash-heap-on-mallorca
ポレンティアは古代ローマ人が紀元前123年にマヨルカ島を支配した後、紀元前1世紀頃に作られたとされる古代ローマの都市であり、やがてこの地域で最も活発な古代ローマの港のひとつとなりました。20世紀初頭に行われた発掘調査により、ポレンティアには公共の広場・神殿・寺院・記念碑・居住区・劇場・墓地といった都市を構成する建築物があったことがわかっています。
マヨルカ島にある地中海高等研究所のアレハンドロ・バレンズエラ氏は、ポレンティアで見つかった汚水溜から発掘された動物の骨を調査しました。この汚水溜は深さ約4mほどで、堆積物に含まれる陶器から紀元前10年〜紀元30年に使われていたとみられています。
この汚水溜は地元の庶民階級が集まって軽食やワインを楽しんだ「ポッピナ」という飲食施設の近くにあり、ポッピナのカウンターには食料品を保存する陶器製のつぼであるアンフォラが埋め込まれていたとのこと。
バレンズエラ氏による調査の結果、ポレンティアの汚水溜からはヨーロッパからロシアにかけて分布しているウタツグミと思われる骨が他のどの鳥よりも多く発見されました。

by John Freshney Photography
ウタツグミは鳴き声がきれいなことで知られていますが、マヨルカ島の地元料理にはウタツグミを用いるものがあり、現代でも時々食べられているとのこと。バレンズエラ氏は科学系メディアのLive Scienceに対し、「私の個人的な経験で言えば、その味は鶏肉よりもむしろウズラのような小型の狩猟鳥に似ています」とコメントしています。
発見されたウタツグミの骨を詳しく調べた結果、頭蓋骨や胸骨の一部、脚や前腕の骨は数多くあった一方で、二の腕や腹部、大腿(だいたい)骨などはほとんど見つかりませんでした。以下は、汚水溜にあったウタツグミの骨の分布を表したもので、骨の色が濃いほど多く見つかったことを示しています。この傾向は、食べられない部位は調理中に除去して捨てられ、肉が豊富な部位は調理されて客に提供されたことを示唆しています。

バレンズエラ氏は残された骨の分析に基づき、ポッピナの商人が胸骨の一部を除去してむね肉を平らにし、グリルで焼いたり油で揚げたりして素早く調理したと推測しています。また、料理は陶器の皿に盛られて提供された可能性もありますが、ウタツグミの小ささと屋台料理という文脈を考えると、扱いやすいように串などに刺された状態で提供された可能性もあるとのこと。
バレンズエラ氏によると、古代ローマの食文化と関連のある鳥類の中でもウタツグミを含むツグミ科は特殊な地位を占めているとのこと。いくつかの古典文献では、ツグミが上流階級の食事会で提供される珍味として頻繁に登場しており、ツグミの養殖が収益性の高い事業だったことも記されています。
ツグミが上流階級以外でどの程度消費されていたのかはよくわかっていませんでしたが、今回の研究結果は古代ローマ都市の庶民階級が通うポッピナのような店でも、ツグミがよく食べられていたことを示しています。
バレンズエラ氏は論文で、「これらの鳥が飲食店に関連する汚水溜に存在したことは、ツグミが主に高級品だという従来の認識を覆すものです」「代わりにこの証拠は、ツグミが広く消費される日常の食事の一部であり、都市の食料経済の一部を構成していたことを示しています」と述べました。
