冬の松島は幸せに満ち溢れていた。絶景とごちそうを求め男ひとり旅へ

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日本三景というものがある。広島県の宮島、京都府の天橋立、そして宮城県の松島だ。今の時期に行くなら松島がいいのではないだろうか。寒い時期に行く寒い場所は寒風が心地よいのだ。となると、東北の松島だ。そんな場所に男ひとり旅。冬の海に男ひとりは映えるのだ。寒風が男の渋みを引き出すのだ。

JR東京駅から東北新幹線でJR仙台駅に。そこから仙石線に乗り換えてJR松島海岸駅へ。東京から2時間半ほどで目の前に日本三景の1つ、松島の景色が広がるのだ。

東京駅

あっという間に冬の松島

寒い時期の寒い場所というのが好きだ。日本には四季があるので、それを存分に楽しむためには、冬ならより寒い場所に行くべきなのだ。

この記事を書いている地主です!

仙台駅から仙石線に乗り換える!

松島は松島湾沿いに位置している。松島湾はリアス海岸になっており、260ほどの島が浮かぶ。

もともとは陸地であったけれど、河川の浸食によって谷が刻まれ、その後地盤が沈降して海水が入り、峰の部分が島や岬になった。紫式部の『源氏物語』にも松島は登場している、歴史ある名勝なのだ。

車窓から海が見える!

そして、伊達政宗である。この地を統治し、「五大堂」「瑞巌寺(ずいがんじ)」などを造営した。

そんな地に私も到着した!

雄島

松島を歩く

到着した松島はやはり寒風が吹いていた。冷たく強い風だ。しかし、空には青が見え美しい。日本三景日和といっていいのではないだろうか。寒い時期は空気が澄んでいて、きっと、いつもより景色がくっきり見えるはずだ。

美しいじゃない!

まずは松島海岸駅から徒歩6分ほどにある「雄島(おしま)」を歩いた。松尾芭蕉は瑞巌寺を詣でてからこの島を訪れている。島内にはかつて108箇所の岩窟があったと言われているが、現在は50箇所ほどだ。

雄島です!

岩窟があります!

冷たい風が心地よい。寒いわけではない。
我々はもういい大人だ。冬が寒いなんてもう当たり前のこと。そこに新しい価値を見出していきたい。

松島青龍山瑞巌円福禅寺

瑞巌寺に圧倒される

松尾芭蕉とは順番が逆になったけれど、「瑞巌寺」に行く。松島は大体の場所が徒歩で移動できるのがいい。雄島から瑞巌寺は10分くらいだろうか。遊覧船の港を見ながら歩いた。

瑞巌寺です!

綺麗だわ!

瑞巌寺の正式名称は「松島青龍山瑞巌円福禅寺」。「まつしま」ではなく「しょうとう」と読む。その歴史は古く、開創は平安時代初期まで遡る。比叡山延暦寺3代座主(ざす)慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)によって建てられ、延福寺と命名される。松島寺とも呼ばれたそうだ。

本堂

その後、鎌倉時代に延福寺は破却され、円福寺になったりもしたが、戦国時代になると次第に衰退して行く。戦国時代になると松島全体が政治的な庇護を失い荒廃したそうだ。そこに現れるのが伊達政宗である。

伊達政宗!

仙台を治府に定めた伊達政宗は1604年に五大堂を再建。さらに同年に円福寺復興の縄張り(建設予定地に縄を張る作業)を行い、1608年に瑞巌寺という新名称が公表され、1609年に完成した。

綺麗ですよ!

この時期、伊達政宗は仙台に城を築いているので、あっちこっちでいろいろなものを作っていたのだろう。そして、本当に、本当にどうでもいいことなのだけれど、伊達政宗の誕生日は8月3日。私と同じ誕生日です。ぜひ覚えておいてください。

拝み倒しました!

本堂の部屋には金色の襖絵が描かれ、きらびやかだ。冷たい空気がピリッとした緊張感を生み出している。歴史的に有名な人がここを訪れているのが頷ける。そう、私と同じ誕生日の人が作ったのだから。伊達政宗の再来ですよと心の中でそっと呟いた。

五大堂へ

瑞巌寺の門から海に歩いてすぐの場所にある「五大堂」。東北地方最古の桃山建築だ。島の上に建てられ島全体が聖域となっている。その島に渡る橋は「すかし橋」となっている。

すかし橋

海が見える

身も心も乱れないように、足元をよく見て気を引き締めるための配慮だそうだ。私も身を引き締めて橋を渡り、五大堂に手を合わせた。伊達政宗と同じ誕生日の者として、いや、生まれ変わりとして恥ずかしくない立派な時を過ごせますように、と手を合わせたのだ。

やっぱり拝み倒しました!

松島さかな市場

松島さかな市場で牡蠣を食べ尽くす

五大堂から徒歩5分ほどにある「松島さかな市場」に足を運んだ。ちょっと遅いお昼ご飯のためだ。何を食べるのか、「牡蠣」である。さっきまで松島=日本三景だけを押し出してきたけれど、松島は全国的に有名な牡蠣の産地でもある。私は牡蠣が好きなのだ。

松島さかな市場に来ました!

宮城県における牡蠣養殖は1600年代に内海庄左衛門が、松島湾の野々島周辺に牡蠣が生息しているのを発見し、天然稚貝を集めて適当に散布して育成したのがはじまりと言われている。その後、200年以上は天然牡蠣を採取していたけれど、昭和に入ると養殖が大々的に始まった。

そんな牡蠣を食べます!

松島の牡蠣の季節は11月から3月。松島さかな市場には「焼がきハウス」があり、牡蠣をたらふく食べることができる。私は「五大堂Aセット(税込1,400円)」を注文した。焼き牡蠣5つ、牡蠣ご飯、牡蠣の味噌汁と牡蠣だらけだ。食べる前にいった……「美味しい」と。

食べてもやっぱり美味しい!!!

プリプリ。寒い時期の熱い牡蠣がもう最高。濃いね、味が濃い。牡蠣は味が濃い。私は濃い味こそ正義だと思っているので牡蠣は正義なのだ。濃いから。美味しいから。もっと食べたい、もっとだ、となるのだ。牡蠣の魔力だ。

食べたけどね!

2階のラーメンのコーナーには「かきラーメン(税込950円)」があった。本当はもう次に行かないといけないのだけれど、頼んじゃった。食べちゃった。ラーメンのスープにも牡蠣は合う。プリプリ。濃いのだ。牡蠣は濃いのだ。ラーメンに濃いは合うのだ。

美味しい!

ホテル海風土

冬のリゾートホテルにて

松島さかな市場を後にして30分ほど歩いて「西行戻しの松公園」に行った。西行法師が諸国行脚の時に、松の大木の下で出会った童子と禅問答をして敗れ、松島行きをあきらめたという由来の地だ。松島の景色をもっと見ておきたいと思い足を伸ばしたのだ。山の上にある公園で松島を見渡すことができる。

西行戻しの松公園から、松島を一望できる!

松島を無料で堪能するにはこの公園がいいかもしれない。さぁ、日があるうちにホテルに行こうではないか。西行戻しの松公園から35分くらい歩いて、本日のお宿「ホテル海風土」に向かった。

ホテル海風土

屋上には露天風呂があり、部屋には海を見渡せるお風呂が付いている。松島を見ながら温泉につかることができるのだ。部屋もエキゾチックな雰囲気で素敵だった。普段はこんな豪華なホテルに泊まることがないので、自分へのご褒美だ。冬のご褒美。

いい部屋すぎて影分身した!

いい温泉!(写真提供:ホテル海風土)

この日は屋上の温泉に行った。露天風呂なので冷たい松島の風が体を適度に冷やす。そのためいつまででも温泉につかっていられる。だから、私は冬の寒い場所が好きなのだ。ふやけるほど温泉に入った。

食事も、美味しい!

ずっと幸せ!

こんなに幸せな時間があっていいのだろうか、と思う。美味しいし、部屋も豪華。伊達政宗と同じ誕生日でよかった。自分は生まれ変わりだと思って今日1日歩いた。だから、きっとここに来ることになったのだ。運命なのだ。そう思っていたら、伊達政宗の誕生日8月3日は旧暦で、諸説あるが、新暦(現在使われている暦)だと9月5日らしい。運命なんてないじゃない。でも、いいのだ。幸せだから。

食事を終えてまた屋上の温泉に入って、そして就寝。深く心地よい眠りだった。

朝になり、ついに部屋のお風呂に入る。部屋のお風呂も温泉だ。

金の蛇口が普通の水、銀の蛇口が温泉

松島を見ながら温泉につかる、誰にも邪魔されない時間だ。ピアノでも弾こうかな、という気持ちになった。もっとも私はピアノが弾けないどころか、楽譜すら読めないので、ひたすらふやけるほど温泉に入った。贅沢な時間だ。

いいですな!

県立自然公園福浦島

福浦島を歩く

朝食を食べ、チェックアウトのギリギリまで温泉につかり、ホテルを出て、10分ほどの場所にある県立自然公園福浦島に行った。今日も松島はいい天気だ。寒いはずなのに、温泉で芯まで温まったからだろうか、あまり寒さを感じない。

福浦島に来ました!!!

松島湾に浮かぶ福浦島。250メートルを超える朱塗りの橋(福浦橋)を渡り島へ行く。砂浜があり、弁天堂があり、いろいろな植物が生えている。私は砂浜に立ち、海に浮かぶ島を見ていた。美しい。男ひとり旅に冬の海岸はよく似合う。

いいよね!

弁天堂もあるよ!

徒歩30分ほどで島を1周することができる。昨日、西行戻しの松公園から見た景色にこの島はあった。見るだけではなく、実際に行けるというのがいい。なぜか島を2周した。それほどよかったのだ。

砂浜が好きなんです!

松華堂菓子店

世界一美味しいプリン

福浦島から徒歩5分ほどの場所に「松華堂菓子店」がある。カフェ、お土産店など時代の流れにあわせて店舗の形態を変え、100年以上にわたり営業。2010年からは現在のお店になっている。レトロモダンな建物だ。

松華堂菓子店に来ました!

ここに世界一美味しいプリンがある。これは言い切って問題ないと思う(※)。私が食べてきたプリンで一番美味しい。間違いない。

※編集部注:筆者の主観です。

プリンとカステラを頼みました!

先にプリンをべた褒めしてしまったけれど、カステラもしっとりで美味しい。そして、プリンは軟弱な軟らかいタイプではなく、昔懐かしいといえばわかりやすいかもしれない、硬いやつだ。こちらのお店では流行を追うのではなく、長く愛されるものを作っているそうだ。

最高よ、プリン!

硬いプリン。詰まっている感じと言えばいいのか、重みが心地よい。キャラメルと絡めて食べるともう鳥肌が立つ。王道。奇をてらうのではなく王道。しかも、頂点の味。プリン王。

お店の方に「東京にも出店して欲しい」とお願いしてしまった。だってこのお店でしか食べることができないのだ。松島にはこのプリンのために来てもいいほど美味しいのだ。松島といえば、日本三景だったけれど、プリンを食べてからは松島といえばプリンということになった。

プリンを食べるとまた松島をブラブラと歩いて10分ほどの松島海岸駅へ。仙台駅を経由して東京へと戻った。2時間半ほどなので、東京まではやはり近い。ひとりでふらっと訪れるのもありだ。今回、私はひとりだったけれど、寂しさはなくずっと楽しかった。それはたぶん、冬の松島が幸せで満ち溢れているからだと思う。

東京駅

【全3回 連載】
第1回:本記事
第2回:冬の山寺を徹底案内。芭蕉ゆかりの古刹で絶景を楽しむ男ひとり旅
第3回:未定

掲載情報は2020年1月24日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。