ザックがパワープレーについて言及「残り2分ならまたやるかもしれない」
「自分たちのDNAのところにそういったプレーがないということは分かっている」
指揮官がまず述べたのは、日本のサッカー文化にパワープレーそのものがないということだった。事実、少年サッカーからJリーグまで見渡しても、パワープレーを前面に出す戦術を敷くチームは数少ない。DF田中マルクス闘莉王(名古屋)がいることを前提に、ゲルト・エンゲルス(元浦和)、ストイコビッチ(元名古屋)あるいは現名古屋の西野朗監督が選択肢に入れるなど、チーム状況や選手の特徴、試合の展開などでパワープレーは見られるが、全体的に見ればそれは数少ない例外だ。
ザッケローニ監督はさらに説明を続ける。
「4年前、日本代表の監督に就任したとき、日本にあるサッカーを尊重しながら、そこにインテンシティー(強さ)やアグレッシブさを付け足していこうということを身上としてやってきた」。日本人の良さを生かすことをベースにするという考えだ。
これまでにもFWハーフナー・マイクやFW豊田陽平ら高さのある選手を試してきたが、チーム戦術のオプションにならなかったことにも言及した。「時にヘディングの強い選手を終盤に入れて試してきたが、そういう選手が入ってもグラウンダーでつなぐサッカーをし、戦い方を変えなかった。子供のころからの慣れなのかなと思う」
そしてたどりついた結論は「だから、5分以上はパワープレーはできないということは分かっている」ということ。では、指揮官はコロンビア戦をどう戦おうとしているのか。
「相手がベタ引きして、最後の数分のところではチョイスというのはあるべき、トライすべきと思っている。(過去2試合は)適したプレイヤー(DF吉田麻也)がいたからチョイスした。残り2分ならまたやるかもしれない」
とどのつまり、最後の最後でパワープレーを選択する可能性があるという覚悟だ。そもそも日本にとってパワープレーは基本的には最後の手段。勝利への執念がさせる戦術だということでもある。
ただ、残り期間でパワープレーの練習を行う意思はないという。「3日あっても、2週間あっても、そういうことをトレーニングしたところでゲームには出せない。これまで染みついているプレーを選手はやろうとしている」
問題はここにある。選手の間では、パワープレーはコートジボワール戦だけに限ったものだと思っていた者、やる以上は練習をすべきと言う者、監督が選択した以上は受け入れるという者とに分かれている。
原博実専務理事はギリシャ戦の翌日、「DFの吉田(麻也)を前線に上げるなら練習しておくべきだけど、このチームには合ってない」とパワープレーを否定していた。この日はザッケローニ監督の横で目を閉じ、指揮官のひと言ひと言を聞いていた。
5分間でも2分間でも、やるならやるで多少の練習はすべきだろう。練習を大事にするのは日本人のメンタルだ。そして、指揮官から選手に意図をしっかり説明する必要がある。短時間のプレーでも、パワープレーを出すのは雌雄を決する時間帯になるからだ。コロンビア戦まであと3日。時間はなくはない。
(取材・文 矢内由美子)

