【音の正体】マンションで“静かすぎる”と音が気になる！？遮音の落とし穴と本当の対策

マンション購入や住み替えを考える中で、多くの人が気にするのが「音の問題」。
今回は、株式会社さくら事務所の執行役員CAO 辻優子さんが、元デベロッパー時代の経験と居住者としての実体験を交えて、「遮音すれば解決」と思われがちな“音問題”のリアルを解説しました。

【1】マンションに“完全遮音”はない

まず知っておきたいのは、マンションは構造的に音がゼロにはならないという事実。
天井・床・壁がつながった「共同住宅」である限り、音や振動は必ず伝わるリスクを持っています。

「遮音技術は進歩していますが、他人の音を完全にシャットアウトする設計は、現実的に存在しない」と辻さんは語ります。

【2】外の音を遮るほど、内の音が気になってくる

騒音を防ぐために“遮音性の高い窓”や“インナーサッシ”を導入する人も増えていますが、実はここに落とし穴があります。

「静かすぎる室内では、今まで気づかなかった“自分の家の音”が際立って聞こえるようになることがある」と辻さん。
特に夜間や、外部の音が少ない地域では、時計の音や足音、家具のきしみなどが逆に気になることも。

静音性を高めた結果、「気になる音」が増えてしまうという、意外な副作用もあるのです。

【3】“音問題”がトラブルに発展する理由

辻さんによると、問題の本質は「物理的な音」だけではありません。

たとえば、実際に辻さんが住んでいたマンションでは、上階のインターホンの音やスマホのバイブ音がかすかに聞こえたことがあったそうです。
設計にも施工にも問題がなかったにも関わらず、「なんとなく気になる」という心理的な部分が大きく影響していたとのこと。

つまり音問題は、以下の要素が複雑に絡み合っているのです：
・物理的な構造（コンクリートの厚み、施工精度など）
・音の伝わり方（鉄筋などを通じた振動など）
・感じ方の違い（同じ部屋でも人によって気になる・気にならない）

【4】“厚み”だけでは測れない遮音性能

「このマンションは床厚30cmだから安心」と思うのは危険。
辻さんによると、「軽量化のために中が空洞のボイドスラブ」を使っている物件もあり、見た目と実性能が一致しないケースも。

また、インナーサッシも「断熱目的」で設置されている場合が多く、遮音性との相性によっては、逆に室内から発生する音を感じやすくなることもあると指摘しています。

【まとめ】

マンションの音問題は、単なる「遮音性の話」にとどまりません。
遮音が強化されることで「静けさ」が際立ち、内側の音が気になることも。
また、音の感じ方は人によって大きく異なり、物理的スペックでは測りきれない部分も多く存在します。

株式会社さくら事務所では、実体験や専門知識をもとにアドバイスを行っています。
「このマンション、大丈夫かな？」と不安になったときは、専門家へ聞いてみるのも選択肢のひとつです。