「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ公式HPより)

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 冬ドラマが始まった。注目すべきは、最近増えつつある医療ドラマが、今クールはなんと6本。いくら何でも多すぎじゃないのか。それにしても、なんでこうも増えたのか――。

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 医療ドラマのトップバッター、「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ)は1月9日に第1話が放送された。放送枠はこれまで、「Dr.コトー診療所」(03年、06年)、「白い巨塔」(03年)、「医龍―Team Medical Dragon―」(06年、07年、10年、14年)、「グッド・ドクター」(18年)など、多くの人気医療ドラマを放送してきた木曜劇場だ。そう考えると、初回視聴率8・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)は、あまりパッとしないような気も……。

「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ公式HPより)

 医療モノが6作品もあるというのに、最初からこれで大丈夫だろうか。その6作を並べると以下の通り。

 昨年秋「ドクターX」を放送したばかりのテレビ朝日こそ入っていないものの、民放の放送曜日は綺麗に分かれている。もっとも、放送時間は22時からときっちり横並び。つまり、水曜と日曜を除いた毎晩10時から、どこかの局で医療ドラマが放送されることに……水と日は休診日ということか? 民放プロデューサーは言う。

「確かに多いですよね。医療ドラマがここまではびこるのは、やはり数字が取れるから。つまり、視聴率が見込めるから企画書が通りやすく、スポンサーにも説明しやすいということです。昨年春に放送された中条あやみの『白衣の戦士!』(日本テレビ・平均視聴率8・7%)のようなドタバタおちゃらけドラマでも、そこそこ数字が取れちゃいましたからね」

1月医療ドラマ一覧

 かつては医療モノと言えば、生真面目な作りだったが、

「医療モノはずいぶん昔から制作されてきましたが、やはり大ヒットして嚆矢となったのは『白い巨塔』(78年・フジ)でしょう。山崎豊子さんの原作で、最初に映像化されたのは田宮二郎主演の映画でした。67年に佐藤慶主演でテレビドラマ化(NET※現テレ朝)されましたが、社会現象まで生み出したのは、田宮主演でドラマ化された78年版です。その後、何度もドラマ化されているように医療ドラマの金字塔と言ってもいいでしょう。医局内部の内紛劇は、現在の『ドクターX』(テレ朝)にも踏襲されています。もっとも、かなり軽妙な作りになっていますが……」(同・民放プロデューサー)

 確かに、“白い巨塔”内部のゴタゴタや、専門的なことはわからないけど緊迫感のある手術シーンなど、思わず見入ってしまうことはよくある。さらに、医療モノが増えている理由は他にもある。

「はっきり言うと、医療モノは楽なんです。制作のプロデューサーやディレクターにしてみたら、外ロケが少ないので、手っ取り早いし、金もかからない。大掛かりに見える手術シーンだって、スタジオにセットを建ててしまえば、ずっと使えるわけですから。局内のスタジオ費はタダ同然ですし、カメラ5台を同時に回して一発で撮ることもできますからね。照明だって、一発OKです。さらにスタジオ内では、タレントの管理もしやすいんです。日テレさんの生田でも、TBSさんの緑山でも一緒です。スタジオに入ってもらえれば、メイク室はあるし、食堂はあるし、待ち時間も勝手に遊んでてくれてかまわないですからね。手術シーンなども、すでに各局でノウハウができあがっていますから、演じる役者にしてみればメスを持つ手なんて、フレンチでフォークとナイフを使うようなものでしょう(笑)」(同・民放プロデューサー)

 夢のない話になってきたが、言われてみれば、たしかに『ドクターX』の手術シーンなど、主人公の大門未知子の手元は別撮り、彼女は目を大きくヒンむくだけである。

刑事ドラマは大変

「これが外ロケだったら大変です。カメラは1台で、1シーンを撮るのにポジションを4回くらい変えなければならない。そのたびに照明さん、音声さん、メイクさんが走り回らなければなりません。医療モノと共に刑事モノも数字が取れますが、こちらは外ロケが多いから大変なんです。しかも繁華街でのロケが多いから、早朝か夜間のロケになる。夏は暑いし、冬は寒い。そんな中でお守りをしなければならないマネージャーだって大変ですよ」(同・民放プロデューサー)

 平たく言えば、数字が取れて撮影が楽だから医療モノが増えた、というワケか。

「それとお金でしょうね。昔は“まげモノ”、つまり時代劇が人気でしたから大変でした。京都でしか撮れないし、結髪さん(髪結い)や殺陣指導も大変でした。そうした人件費と京都のホテル代が制作費を圧迫しました。不景気になって真っ先に切られたのがまげモノだったのは、そういう事情からです。それとコンプライアンスの強化で、ヤクザモノも撮れなくなりましたね。今では『ごくせん』(日テレ・02年、05年、08年)だって、できるかどうか微妙なほどです。それに較べて医療モノは、大物の役者さんでも白衣着せてキャップ被せておけばいいわけですから、スタイリストやヘアメイクにだって、それほどお金はかからない。消去法で医療モノが増えたとも言えます」(同・民放プロデューサー)

 シビアな世界である。では、今期の医療モノで注目されるのはどれだろうか。

「『アライブ』は予想通りの結果でしょう。主演の松下奈緒はいまだにNHK朝ドラ『ゲゲゲの女房』のイメージが強く、その後の民放ではヒットに恵まれていません。最近では同じ木曜劇場では『グッド・ドクター』(山崎賢人、上野樹里)が数字を取っていましたが、二人とも数字を持っていますからね。やはり主演がどれだけ数字を持っているかは重要です。その点、期待できるのは天海祐希の『トップナイフ』(日テレ)でしょう。彼女が数字を持っていることはもちろんですが、原作・脚本は林宏司さん。『救命病棟24時』の第2シリーズ(01年・フジ)や『医龍』シリーズ、一昨年に劇場版も公開された『コード・ブルー―クターヘリ緊急救命―』なども手がけた手練れですからね」(同・民放プロデューサー)

 こんな見方もあるという。

「マンガが原作の『恋はつづくよどこまでも』(TBS)は、上白石萌音と佐藤健ですが、上白石の妹・萌歌が出演した『義母と娘のブルース』と同じ枠となります。佐藤は『ギボムス』にも出演していたわけで、果たして姉との共演は話題となるのかも見物ですね。また、『病室で念仏を唱えないでください』で伊藤英明が演じるのは、救命医でありながら僧侶という禁断の組み合わせ。こちらも原作はマンガですが、視聴者はどう反応するのかが気になります。そして、NHKの『心の傷を癒すということ』とテレビ東京『病院の治しかた』はいずれも実話をベースとしたドラマ。これらがどの程度注目されるかによって、今後の医療ドラマのあり方にも関わってくるかもしれません。さらに、『病院の治しかた』で主演する小泉孝太郎は、弟・進次郎議員の評判が落ちる中、どれだけ頑張れるかも注目ですね」(同・民放プロデューサー)

 あなたは今クール、どの医療ドラマをご覧になりますか。

週刊新潮WEB取材班

2020年1月14日 掲載