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化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長ら3人が無実の罪で逮捕された「冤罪事件」をめぐり、身体の拘束を解かれないまま死亡した同社元顧問・相嶋静夫さんの遺族が4月6日、保釈を繰り返し認めなかった裁判官37人の判断は違法だったとして、総額約1億6882万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

裁判官による「人質司法」の責任を問う異例の裁判を起こした理由について、相嶋さんの長男は「二度と同じ悲劇が繰り返されない社会にしたい。この問題をぜひ社会全体で考えてほしい」と語った。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●逮捕・勾留の判断を「違法」と主張、約1億6882万円を請求

大川原化工機の社長らは、警察官や検察官による捜査の違法性を問う裁判ですでに勝訴している。

警視庁を管轄する東京都は賠償金を支払ったほか、当時の捜査に関わった警視庁公安部の元幹部らに対する求償について、都の監査委員が権利行使を勧告。その後、元幹部ら3人が都に賠償分を支払ったとされる。

今回の訴訟は、「裁判官」の問題に焦点を当てたものだ。逮捕状や勾留状(身柄拘束を続けるための許可)の発付、勾留の延長、面会の禁止、保釈請求の却下といった判断をおこなった計37人の裁判官の責任を問うとしている。

●7回も保釈を請求するも却下、約11カ月後にがんで死亡

訴状によると、相嶋さんは2020年3月11日、大川原化工機が製造する噴霧乾燥器を中国などに不正に輸出した疑いがあるとして、同社社長の大川原正明さんや元取締役の島田順司さんとともに警視庁公安部に逮捕された。

相嶋さんの弁護人は7回にわたり保釈請求をおこなったが、いずれも東京地裁の裁判官に却下された(うち1回は請求が認められたものの、検察官による不服申し立て後に取り消された)。

相嶋さんは2020年9月下旬から極度の貧血などの症状が現れ、体調が著しく悪化。同年10月には進行胃がんであると診断されたが、その後も保釈や職権による勾留取り消しは認められなかった。

相嶋さんは約11カ月にわたり身体拘束を受け続け、2021年2月7日に死亡した。

●「身体拘束の継続は憲法などに違反」と主張

相嶋さんの遺族(妻、長男、次男)は訴状で、捜査機関が根拠とした専門的な法令解釈の内容が不明確であったにもかかわらず、裁判官が事実関係を精査せず、安易に「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」を認めたと指摘。

また、深刻な症状が発覚し、継続的な治療が不可欠な状態となって以降は、逃亡や罪証隠滅を図る客観的・主観的な可能性はなかったと主張している。

こうした状況で相嶋さんの身体拘束を続けたことは、個人の尊重を定めた憲法13条や、非人道的な取扱いを禁じた自由権規約7条に違反するとしている。

●長男「裁判官の本当の姿を共有したい」

都内で開かれた記者会見で、相嶋さんの妻は「警察は理由も告げずに夫を連れ去りました。11カ月後、やっと自宅に帰ってきた時には骨壷に入った遺骨になっていました」と振り返った。

保釈請求を退けられ続けた相嶋さんは、絶望の中で「これでも人間なのかねぇ」とつぶやいたという。

「(裁判官たちには)死に至る病にかかっている人間の保釈を却下し続けた理由をお聞きしたいと思います」(相嶋さんの妻)

長男は「裁判官の責任をどのように裁判官が判断するのか。まさに、裁判官という専門職の自立性が試されている。今回の裁判を通じて、裁判官の本当の姿を国民の皆さんと共有していきたいと思っています」と語った。

次男も、裁判官が杓子定規的に逮捕や勾留を認めている実態について、「自動販売機のボタンを押すように逮捕状を押す」と批判。

そのうえで「父ががんで倒れているにもかかわらず、保釈請求の却下を繰り返した。こうしたプロセスを社会全体で是正していかなければ、他の犠牲者が出ると思い訴訟を起こしました」と述べた。