プーチン大統領

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 ロシア軍のウクライナ侵攻が泥沼化している。ジャーナリストの深月ユリア氏は、「そもそも、なぜ人類は戦争をするのか」という根本的な視点から著名な臨床心理士を取材し、「戦争をする人間心理」について分析した。

【写真】臨床心理士の黒岩貴氏と女優でジャーナリストの深月ユリア氏

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 ウクライナ戦争が開戦してから、3か月近くが経つ。ロシア軍は物資も枯渇し、戦闘が困難になっている部隊も続出しているが、いまだにプーチン大統領は諦めない。人類の歴史は戦争の歴史でもある。なぜ、戦争はなくならないのか?

 漫画「サイコ・ドクター」のモデルとなった麻布メンタルクリニック(東京)の臨床心理士・公認心理士の黒岩貴氏は次のように指摘した。

 「人間は人の上に立ちたい、偉くなりたい、という権力志向があります。たとえば、国会議員になったら次は大臣になりたい、大臣になったら総理大臣になりたい、という風にどこまでも上昇志向が止まらないんですよね。女性が男性を選ぶ時も、権力を持つ男性が選ばれやすいですよね。例えば、お金がなく無職の男性より、金持ちだったり、社会的ステータスが高い男性を選びますよね」

 「そして、もう一つ、人間には『誰かに従っていきたい』というマゾヒズム的傾向があります。例えば、フランス革命で苦労して大勢の人々が犠牲になって絶対王政を倒したのに、ナポレオンの帝政が復活していますよね。ドイツも苦労してロマノフ王朝を倒したのに(※筆者注 同王朝が倒れた直接的な要因はロシア革命だが、ドイツが善戦したため、ロシアはドイツに屈服した…という解釈)、ヒトラーのような独裁者が台頭しています。せっかく、市民で平等に物事を決めていこう、となっても、絶対的権力者が生まれるのです。実際に現在の日本でも『今の日本はダメだ!戦前の方が良かった』という人たちがいますよね。明らかに現在の方が民主的で平和であるにも関わらずです」(黒岩氏)

 脳学者の中野信子氏は自身のYouTubeチャンネルで人類が戦争をする原因について次のように語っている。

 「99%の人間は自分と異なる意見にたいして不寛容です。『世のため・人のため』という大義名分で人をバッシングする行為を脳は快楽だと感じます。その心理が戦争をしたい人たちに利用されます。残り1%はそもそもが他人に関心のないサイコパスです」「人間は自分達が凄くて、相手がバカだと言いたい、何か共同で協力出来る目的意識がないと、争ってしまう悲しい生き物です」(中野氏)

 なるほど、今回のウクライナ戦争もプーチンの権力志向と「ゼレンスキー政権は悪だから打倒しなければならない」だというプロパガンダが大義名分としてうまく利用されている。では、ウクライナ戦争はいつまで続いてしまうのか?プーチンの現在の心理は?

 黒岩氏は「ウクライナ戦争は、ロシアがあと2か月ももたないかと思います。既に当初のロシアの国家予算を越えていて、武器・弾薬が製造できなくなったら終わらせるしかない。ただし、このままではプーチンは戦犯として裁かれてしまうので、少しでも良い条件で戦争を終わらせるタイミングを謀るでしょうね」と私見を述べた。さらに、黒岩氏は「プーチンはコミュニケーションが苦手で、自己愛が強い自己愛性パーソナリティ、被害妄想が強いパラノイア(妄想性パーソナリティ障害)の徴候もあるようです。クリミア侵攻する前の2013年に離婚していますが、現在のプーチンの暴走を止めてくれる家族がいないのも、ここまでの状況になった一因でしょう」と推察した。

 戦争をなくす方法はないのか?

 黒岩氏は「戦争をなくすには、まずは隣の人に親切にすることからだと思います。『戦争反対!』『地球を守ろう!』と叫んでも、例えば、歩いていて肩がぶつかって謝らずにいたり、中には『どこ見て歩いてるんだ!』と怒鳴る人もいますが、それではどうしょうもないかと思います。マザー・テレサのところにボランティアの手伝いに行った人たちも、『まずは貴方(あなた)の隣人を大事にしなさい』と帰されているんですよね。まずは隣人に優しく、温かくすること…かと思います」と持論を語った。

 新訳聖書に書かれたイエス・キリストの言葉として「自分を愛するように隣人を愛せよ」 「目に見える兄弟を愛さない者が、どうやって目に見えない神を愛することができるだろうか」 という名言がある。目に見えないが故に戦争を起こしたい権力者に都合よく利用されてしまう大義名分より、目の前の隣人に優しく、温かくすることが、平和への第一歩という意味だろう。

(ジャーナリスト・深月ユリア)