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イメージキャラクターを務めるワインのワイナリー経営者と記念撮影するロナウジーニョ

 ロナウジーニョが自由の身になって約1カ月が経とうとしている。

 今年3月、ロナウジーニョは彼のマネジメントを一手に引き受ける兄のアシスとともにパラグアイに向かった。自身の本の宣伝とカジノのオープニング、そしてあるNGOのチャリティのためだ。

 到着した夜、彼らは超高級ホテルのスイートで逮捕された。理由は偽造されたパラグアイのパスポートを所持していたから。ロナウジーニョ兄弟は警察に勾留され、2日後には裁判所に出頭。3時間に及ぶ審議の後、そのまま刑務所に送られた。ロナウジーニョの弁護士は何度も彼らの釈放を請求したが、却下された。

 4月に入ると、保釈金160万ドル(約1億7000万円)を払ってやっと刑務所から出ることができた。しかし、自由は与えられず、2人は首都アスンシオンにある四つ星ホテルの一泊360ドル(約3万9000円)の部屋で軟禁生活を送ることとなった。

 幸か不幸か、コロナウイルスの感染拡大でホテルの宿泊客は彼らのみ。ホテルはホールを提供して、ロナウジーニョにボールも蹴らせてくれた。ちなみにホテル代はバルサ時代の親友リオネル・メッシが出してくれたという噂もあるが、真相はわからない。

 逮捕から131日目、2人は釈放された。勾留期限がぎりぎりで、パラグアイ当局はもう一度刑務所に収監するか、釈放するしかなかったが、収監するには証拠が不十分だったのである。

 こうして兄弟は8月24日、晴れて自由の身となり、翌日には帰国し、リオデジャネイロの自宅に戻ることができた。ちなみにロナウジーニョは完全な無罪放免だが、今回のパラグアイ行きを計画したのは兄のアシスであることから、アシスは今後2年間、4カ月に一度、ブラジル当局への出頭が義務付けられている。

 それにしても今回の事件は謎が多い。ロナウジーニョブラジル人なのは誰もが知っている事実だ。それなのに、なぜ彼は偽のパラグアイのパスポートを使って入国したのか、なぜ空港ではおとがめなしだったのに、その夜ホテルで逮捕されたのか、なぜこれほど長く勾留されたのか。

 ブラジル人は、ロナウジーニョがその知名度を利用されて、何らかの事件に巻き込まれたと思っている。パラグアイは南米では有名な何でもありの国だ。すべては金次第で汚職が蔓延し、すべての法に抜け道がある。パラグアイ当局はロナウジーニョという世界的有名人を逮捕することで、自分たちが有能であり、きちんと仕事をこなしていることを宣伝したかったのではないかという見方もある。

 ロナウジーニョの弁護士は、兄弟がパラグアイ警察の幹部から「金を払ったら、今すぐブラジルへ逃がしてやる。秘密裏に国境まで連れて行ってやろう」と持ち掛けられたと明かしている。ロナウジーニョ自身は、「パラグアイを去る時は、堂々と玄関から出ていきたい」としてこれを断ったというのだが......。何でもありの国なので、ブラジルでは、「返されたロナウジーニョも実は偽物なのでは?」というジョークが流行っている。

 ただし、ロナウジーニョも決して「白」とは言えない。

 ロナウジーニョは今回、自伝のプロモーションでパラグアイに行ったが、これまで彼がプロモーションを行なってきたのはドイツ、中国、ロシアなど大国ばかりである。なぜわざわざ人口700万人の、本などあまり売れないパラグアイに宣伝に行ったのか。

 今回のパラグアイ訪問を企画したのはダリア・ロペスという女性である。彼女は以前から国際的犯罪組織との繋がりが噂される人物だ。パラグアイに銀行口座を開けば、ブラジルより格段に低い税金ですむことを口説き文句に、ロナウジーニョにパラグアイに資産を移させ、それを利用して彼女自身はマネーロンダリングをするつもりだったのではないかとの見方もある。そして、そのためにはロナウジーニョのパラグアイのパスポートが必要だった。ロナウジーニョの逮捕後、彼女は姿をくらましている。

 ロナウジーニョ自身がどこまで真相を知っていたのかは定かでない。だが、ロナウジーニョを被害者だと見ている人は多く、事件があったにもかかわらず、彼の人気は変わることがない。彼のインスタは最近フォロワーが一気に増え、現在は5100万人以上に上る。

 また、事件前に契約していたスポンサーとの関係もそのままで、ひつは「ベッドクリスト」というブックメーカー、もうひとつに至っては「エンブラツアー」というブラジル政府系の旅行会社だ。数日前にはあるワイナリーから新しくワインが発売され、そのイメージキャラクターにロナウジーニョが起用された。ワインはその名も「チャンピオンのワイン」である。

 ロナウジーニョは、まるでこの半年に起きた出来事すべてがなかったかのように振る舞っている。以前、付き合っていた女性と、再びビーチでデートしているところもパパラッチされた。また現在は自伝映画も準備中だ。タイトルは『The Happiest Man in the World(世界で一番幸せな男)』だ。

 ビーチにワインに女性に映画。ロナウジーニョは相変わらず子供のように無邪気だ。今回の一件にもまるで懲りた様子はない。そんな彼がまた何かのトラブルに巻き込まれないかと、不安は残るのだ。