志半ばで関大を去った織田(共同通信社)

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 何度も涙を流しながら、プロスケーター・織田信成(32)がモラハラを受けていたことを告発した。しかし、その“一方的な主張”を聞いた人たちからは疑問の声が上がっている。その言い分を聞くと──。

【別写真】モラハラはどっち?笑顔の濱田コーチ

「先日、子供から“モラハラって何?”と聞かれたんです。リンクのロッカーで、子供同士でそういう話をしているみたいで…動揺は子供たちにも伝わっています」

 織田に対するモラハラ騒動。その舞台となったアイスリンク「関西大学たかつきアイスアリーナ」に通う、あるジュニア選手の母親はこうつぶやいた。

 リンクでは関西大学(以下、関大)の学生だけでなく、紀平梨花選手(17才)らが所属する「関西大学カイザーズフィギュアスケートクラブ」のジュニア選手たちも練習している。その保護者の1人はこんなことを言う。

「信成先生にはすごく期待していたのに、結果的にまともな指導を受けた選手は少ないのではないでしょうか。むしろ、彼からひどい仕打ちを受けたという声もあるんです」

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 11月18日、織田は会見を開き、関大アイススケート部の監督を辞任に追い込まれた理由は濱田美栄コーチ(60才)によるモラルハラスメントだと明かした。そして、精神的苦痛を受けたとして濱田コーチに1100万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

 織田は2017年4月に関大アイススケート部監督に就任。タレントやプロスケーターの活動をしながら監督業を行っていたが、今年9月に監督を退任した。

 会見で織田は、監督就任前後から濱田コーチと“確執”があったことを明かした。訴状などによると、2017年2月、選手に危険が及ぶ練習方法をやっていると感じて濱田コーチに意見すると、濱田コーチが激高。その後、無視や陰口、悪い噂を流されるなどのモラハラ行為が続き、(今年の)3月頃から体調が悪化し、8日間入院したという。

 そして、「年が30才ほど離れていて、何も言えなかった」など、約2年半にわたりモラハラを受けていたと主張。監督でありながら「パワーバランスがあり、決定権はなかった」と涙ながらに訴えた。

「濱田コーチの教え子には宮原知子選手(21才)や紀平選手ら世界レベルで活躍する選手が多くいます。確かに織田さんとはキャリアは違う。しかし、濱田コーチは選手の個性に応じた指導法に定評があり、モラハラをするような人ではないと思うんですが…」(スポーツライター)

 織田が主張する2017年2月の“激高事件”について「関西大学たかつきアイスアリーナ」で指導する田村岳斗コーチ(40才)も首をひねる。

「濱田先生が織田さんに激高したのは見たことがありません。確かに、織田さんが練習方法について“危ないからやめるように”と言ってきたことはありました。しかし、その朝の練習中に濱田先生はおらず、コーチとしてリンクにいたのは私だけでした。しかも、むしろ危険だったのは、自分のアイスショーの曲をかけて練習をしていた織田さんでした。すごいスピードで滑っていましたからね」

「関西大学たかつきアイスアリーナ」には、3組の指導体制がある。1つは織田と織田の母・憲子さん(72才)をコーチとする「織田組」、本田武史コーチ(38才)と長光歌子コーチ(68才)が中心の「本田・長光組」、もう1つが田村コーチもいる濱田コーチを中心とした「濱田組」だ。

「この一件があった日の夕方、午後からリンクにきた濱田先生と織田さんと憲子先生、長光先生と私の5人で今後の練習について話し合いました。織田さんは濱田先生に意見を言ったら激高されたと主張していますが、むしろ逆で、濱田先生は織田さんの練習ルール変更の意見を尊重しました。そもそも、この話し合いの場を設けたのは濱田先生です。なぜ織田さんが事実と違うことを話しているのか理解できません」(田村コーチ)

◆「あなたは親失格」と言われた人も

 一体、何が真実なのか。織田を知る多くの保護者や関係者に話を聞いた。ある選手の保護者はこう打ち明ける。

「五輪にも出た選手ですから、彼の滑りを見ただけでも勉強になると、選手や保護者は織田さんの就任を心待ちにしていました。実際、フィギュアを習いたいということで新しく入ってきた子もいました。

 しかし、織田さんは監督やコーチというよりあくまでプレーヤーでした。指導者という立場の自覚は残念ながらあまりなかったのではないでしょうか」

 トッププロとして活躍しながら、大学の監督を担うのはかなり厳しい状況だったようだ。別の保護者が続ける。

「織田さんは濱田コーチから『モラハラ』を受けたと主張していましたが、激高がモラハラというなら彼からモラハラを受けたという保護者や生徒は多いはずです。

 成績がよくない学生に“価値がない選手”と言ったり、海外から練習に来た子に“自分の国に帰れ”と怒りにまかせて言うことを聞いたこともあります。

 ある保護者は“今時の子は挨拶もできない”と長時間にわたって説教を受けたうえで“親として失格”とまで言われ泣いていました。厳しい指導もスポーツにおいては必要だというのは理解していますが、織田さんがああいう形で主張するのは天ツバといいますが、あまりにも違和感がありました」

 保護者だけではない。関大関係者も織田の発言をこう非難する。

「2年前になりますが、織田さんに“コーチとしてもっとアドバイスしてほしい”と食い下がった学生と保護者がいました。自分の練習に力を入れてないがしろにされていると感じたようでした。その保護者にむかって織田さんは“このリンクはぼくと大ちゃん(高橋大輔選手・33才)のために作られた。きみはそのレベルにないです”と言った。この発言は発破をかけるというレベルのものではなく、波紋を呼びました」

 織田への違和感を口にする保護者が多かったが、なかには彼への感謝を口にする保護者もいた。

「“トップにいきたいから教えてほしい”という教え子に、織田さんは熱い口調で“ぼくがちゃんと教えてあげるから”と話していたところを見たことがあります。確かに、いつも子供たちの側について教えてくれるわけではありませんでしたが、世界のトップで戦ってきた選手がその場にいることに意味があると思いました」

 織田は2018年3月、あるイベントで「スケートの指導者になることがいちばんの目標」と言い、「(指導者としては)まるっきり(松岡)修造さんタイプ」「諦めない気持ちや努力することで乗り越えていける喜びを伝えてあげたい。心に訴えかけられる指導者になりたい」と熱く語っていた。

 選手や保護者に対する厳しすぎるような言葉も、選手への熱い思いから出たものかもしれない。しかし、自らがモラハラ告発をする以上、保護者からの告発の真偽も含め、自身の発言への責任もしっかりとるべきだろう。織田をよく知るスケート関係者はこう話す。

「プロとしてアイスショーに出る以上は、相当な練習を積まなければいけない。一方で監督として選手の指導にも力を注ぎたい。難しい立場にあったのは事実だと思う。自分の思い通りにいかないことからくる焦りが、今回の騒動の根底にあったのかもしれません」

 保護者たちの言い分について、織田はどう答えるのか。12月上旬、自宅から出てきた織田を直撃した。しかし、何を聞いても、「ごめんなさい、何もお答えできません」の一点張りだった。

 一方、織田に1100万円の損害賠償を求められた濱田コーチはこう話す。

「弁護士と対応を協議しているところなので、今はお話しできません。しかし、近いうちに必ず私の方からきちんとお話しさせていただきます」

 フィギュアスケートシーズン真っ只中の争いは、氷の上だけにすべきだろう。

※女性セブン2019年12月19日号