韓国で出生率が急上昇、背後にある「幸運」と「努力」とは―中国人専門家
中国における政策と経済の関係などを研究し、北京市により領軍人材(リーディング人材)にも認定された馬江博氏はこのほど、韓国における出生率の急上昇の原因を分析する文章を発表し、経済面がもたらした「幸運」と政府などの「努力」が組み合わさった結果との考えを示した。ただし、人口問題について「楽観視」できる状態ではないという。
韓国で2026年第1四半期に生まれた子の数は前年同期比14.8%の伸びを見せ、7万5000人に達した。過去7年近くでの最多だった。
韓国で23年に特殊出生率(女性1人が生涯に子を何人産むかの推定値)が0.78という「歴史的などん底」に落ち込んだ。通年の出生数はわずか23万5000人はで、出生率はわずか0.44%だった。現在では出生率は再び0.5%を超え、合計特殊出生率は3年連続で上昇した。人口維持の基準になる出生率の2.1にはほど遠く、人口縮小の大勢は変わっていない。しかし、この突然の反発は、世界に向けて「韓国は一体何を正しく行ったのか」と問い掛けをもたらした。
この出生率反発の土台になったのは、人工知能(AI)の波が韓国にもたらした歴史的な「富の祭典」だ。最も重要な原動力は、世界の高帯域幅メモリ(HBM)市場のトップであるSKハイニックスだ。SKハイニックスはエヌビディアの「御用達サプライヤー」であり、世界のHBM市場シェアの57%を握る、AI産業チェーンで最も利益を出せる企業の一つになった。SKハイニックスの2026年第1四半期の営業利益は前年同期比405%の37兆6100億ウォン(約4兆1000億円)で、営業利益率はエヌビディアさえも上回る72%に達した。
さらに重要なのは、SKハイニックスに利益を従業員に分配する意欲があることだ。同社は労働組合と2025年9月、年間営業利益の10%をボーナスとして使い、さらにボーナスの上限を撤廃することで合意した。試算によると、26年の従業員1人当たりのボーナスは日本円で約7600万円に相当し、2027年には1億5000万円相当を突破する見込みだ。
韓国で恩恵を受けているのは大企業の従業員だけでない。富の効果は株式市場全体に波及している。AI関連の勃興の恩恵を受け、韓国の株価は25年に76%近く上昇し、26年になってからも70%余り上昇した。このことで、全国民による株式投資ブームが発生した。
韓国の証券口座は現在までに1億を超えた。このことは、韓国人1人が平均で2に近い証券口座を持つことを意味する。無数の一般人が韓国株を買うことで、AI産業の莫大な利益を分かち合っている。手元に大金があり、将来に期待できるようになれば、出産についての自信も自然に湧いてくる。
AIによる恩恵が「思いがけない幸運」であるならば、政府が出産補助金の増額を続けていることは、実績を出すための「努力」と言える。
国による出産福祉は、子育てのすべての段階を網羅している。出産するとすぐに「初対面利用券」を受け取ることができる。第1子は200万ウォン(約22万円)、第2子以降は300万ウォン(約33万円)だ。0−11カ月の嬰児には親に月額100万ウォン(約11万円)が、1−2歳ならば月額50万ウォン(約5万5000円)が支給される。8歳未満の子どもには、1人当たり月額10万ウォン(約1万100円)の児童手当もある。
最も重要なのは「6+6育児休業」の制度だ。夫婦が子どもが18カ月になるまでに相次いで育児休業を取得した場合、最初の6カ月間は元の給与の100%の補助金を受け取ることができ、休業期間中には月を追うごとに補助金が増額されるので、休業の最終月までに、夫婦は最大で累計約4000万ウォン(約440万円)を受け取ることができる。さらに地方政府は国とは別に、出産についての独自の手厚い補助を設けている。
25年の韓国の少子化対策予算は前年比13%増28兆6000億ウォン(約3兆1000億円)に達し、出産関連の行政の支出がGDPに占める割合は2%に達した。
企業も次々に追随している。富栄グループは「子どもを1人産めば1億ウォン(約1100万円)」という「異次元の奨励」を提示した。サンバンウルグループは勤続5年の従業員に対し、第1子と第2子の出産に3000万ウォン(約330万円)、第3子の出産に4000万ウォン(約440万円)の奨励金を支給している。政府はまた、企業が支給する出産補助金を、子どもが2歳になるまで全額免税にした。
ただし、韓国における出生率の反発はまだ、「枕を高くして眠れる」状態にはほど遠い。韓国の若者には依然として高い住居費用が重くのしかかっている。ソウル市内のマンションの中央値価格は、24年に初めて10億ウォン(約1億1000万円)を突破し、現在も高値で推移している。
新韓金融によると、韓国で住宅価格対所得比は24.1倍にも達する。すなわち、中所得世帯が24年以上飲み食いせずに過ごしてようやく家を1軒買えることになる。39歳以下の出産適齢期の層では、住居費とローンの返済が収入の35%を占めている。重い住宅ローンへの重圧が、出産をしり込みさせる厳しい重しになっている。
韓国国土研究院の調査はさらに直接的だ。住宅価格の変動が第1子の出生率に与える影響は30%を超える。住宅価格が1%上昇するごとに、翌年の出生率は0.002低下する。韓国では多くの若者が、自分の住む場所さえ安定しておらず、いつ引っ越しを強いられるかもわからず、結婚して子どもを産むことなど到底考えられないと率直に語る。政府は住宅補助金を打ち出しているが、ソウルなどの大都市では、法外な住宅価格を前にして、この程度の補助金は焼け石に水だ。
韓国の経験は少子化が進む中国にとって、生々しい教訓だ。まず、産業の高度化は、最終的に一般の人々に利益を分け与えるものでなければならない。労働者が産業価値に見合った収入を得られるようにしてこそ、出産意欲を根本的に高めることができる。
人口問題を解決するには同時に、「真の資金捻出」を実行せねばならない。出産補助金、育児休業、保育サービスなど、すべての項目で確実な投資が必要だ。さらに重要なことは、住宅問題が若者を押しつぶすことなく、結婚して子を設けることを若者にとっての選択肢に再びすることだ。(翻訳・編集/如月隼人)
