金字塔の体験を意味する フェラーリ12チリンドリ x アストン マーティン・ヴァンキッシュ(2)
812スーパーファスト以上の才腕
フェラーリ12チリンドリは、V12エンジンの実力へ迫るほど、DNAが通じる812スーパーファスト以上の才腕が顕になる。だが、その表出を強要されることはない。
【画像】過去イチに競合関係のV12 GT フェラーリ12チリンドリ x アストン・ヴァンキッシュ 全107枚
一般道を駆け足で流す状況では、低域でのトルクは僅かに絞られる。後輪操舵システムとリミテッドスリップ・デフ、ABSは、シンクロして制御される。シャシーの電子頭脳は全力で働いているはずだが、フィーリングは至って自然。感服の仕上がりにある。

イエローのフェラーリ12チリンドリと、ガンメタリックのアストン マーティン・ヴァンキッシュ ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
アストン マーティン・ヴァンキッシュより、12チリンドリはホイールベースが185mm短いうえ、後輪操舵システムが擬似的に20mm縮める。ステアリングのロックトゥロックは、前者が2.3回。後者は1.9回転と、明確にクイックだ。
車重は、オプションのカーボン製アイテムで軽量化されていたが、92Lの満タン状態で1806kg。前後の重量配分は48:52だった。他方、ヴァンキッシュは82Lが満タンで1952kg。大人2名分ほど、12チリンドリは軽い。
明らかに濃い個性 12チリンドリの好敵手
バンピーロード・モード時は、適度にロールするサスペンションへ慣れる必要はあるが、すぐに信頼関係を築ける。カーブへ鋭く侵入し、グリップ力を活かしながら脱出する一連は快感。アクセルペダルの加減で、繊細にライン調整もできる。
ボディはしなやかに上下動し、操縦性は秀抜。乗り心地も素晴らしい。快適性はスーパーサルーン級で、精度はスーパーカー、バランスの良さはグランドツアラー。12チリンドリは、唯一無二の運転体験を叶えている。刺激的でありながら、知的でもある。

アストン マーティン・ヴァンキッシュ(英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
対してヴァンキッシュは、V12エンジンを始動させると、パワフルさをトラッドに乗り手へ主張してくる。個性は明らかに濃い。発進させると、やはり好敵手だと実感する。
だが明らかな違いもある。ステアリングのレシオはより自然だが、必要以上に重いかもしれない。操舵時のフィーリングはやや薄く、僅かにダイレクト感が弱い。アクセルやブレーキの反応にも、同じ表現は当てはまる。鮮明な臨場感までは得にくい。
運転体験へ影響を与える敏捷性の差
12チリンドリは、完璧といえるほどコーナリングが従順。ヴァンキッシュはノーズの長さを物語るように、カーブの頂点を目がけて回頭するまでに、僅かなラグを感じる。旋回中のバランスは驚異的だが、その前に微かなアンダーステアが介在する。
後輪操舵システムが備わらないためか、フロントのグリップ力が巨大だからか、理由は定かではない。V12エンジンの搭載位置は、フロントアクスルでの比較で12チリンドリより約25mm前方だが、レイアウトが原因ではないだろう。

アストン マーティン・ヴァンキッシュ(英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
この小さな敏捷性の差が、運転体験の面白さへ影響を与える。12チリンドリもヴァンキッシュも、減速から操舵、加速という規則だったアプローチでコーナリングを堪能できる。だが前者は、思いのまま自由に操ることも許してくれる。
急な雨の中、ヴァンキッシュを追走するシーンで、それを体験した。同僚のマット・プライアーは、負荷を過度に高めないよう丁寧なライン取りを続ける。他方、12チリンドリに乗る筆者は、より滑沢にコーナリングへ興じれていたことは明らかだった。
金字塔の体験を意味する最新フェラーリ
ヴァンキッシュの乗り心地は、路面状況が悪い区間では褒めにくい。減衰特性を磨き込む余地はあり、バネ下重量もかさむ様子。とはいえ、それ以外の場面では心が奪われるほどスムーズ。一緒の時間を過ごすだけで、満たされる。
過剰なほどのトルクを使いこなせば、珠玉の充足感へ浸れる。内蔵を偏らせる勢いの加速力を、芳醇なサウンドを奏でながら披露してみせる。

フェラーリ12チリンドリ(英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
グランドツアラーとして焦点が絞られたヴァンキッシュは、他では叶えられない幸福感を生む。だが、軽くない車重が及ぼす操縦性への影響は否定できない。12チリンドリは、圧巻の動的能力と異次元といえるバランスで、それへ対峙する。
2台とも、速さを僅かに削ることで、高速巡航時の洗練度は一層狙えるはず。だが、最新のフェラーリを運転することは、金字塔の体験を意味すると表現しても過言ではない。
V12の最新フェラーリとアストン 2台のスペックフェラーリ12チリンドリ(英国仕様)
英国価格:33万9245ポンド(約6615万円)
全長:4733mm
全幅:2000mm
全高:1292mm
最高速度:339km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:6.4km/L
CO2排出量:353g/km
車両重量:1806kg(実測)
パワートレイン:V型12気筒6496cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:830ps/9250rpm
最大トルク:69.0kg-m/7250rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
アストン マーティン・ヴァンキッシュ(英国仕様)
英国価格:33万4000ポンド(約6513万円)
全長:4890mm
全幅:1981mm
全高:1290mm
最高速度:344km/h
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:7.3km/L
CO2排出量:312g/km
車両重量:1952kg
パワートレイン:V型12気筒5204cc ツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:835ps/6500rpm
最大トルク:101.8kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

フェラーリ12チリンドリ(英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
