8月、コンビニ大手3社が「おでん」の販売を始めた。コンビニジャーナリストの吉岡秀子氏は「全体の味を決めるのは『つゆ』。かつおベースにセブンはあごだし、ローソンは追い鰹、ファミマは野菜だしをプラスと、各社がつゆを変えてきている」という--。

■共通して「昨年よりおいしい」と自信

この夏はとんでもなく暑かった。毎日毎日暑すぎて、さすがにおでんの販売時期は9月にずれ込むんじゃないかと思っていたら、セブンとローソンは8月6日から、ファミマは20日からと、ほぼ連年どおりに。各社の読みはピタッと当たり、お盆を過ぎて「朝夕、涼しくなった」と感じる日が多くなった今、おでんを買い求める人は増えている。

コンビニおでんは、各チェーンが毎年知恵を絞って作り出すオリジナル商品だ。つゆもおでんだねも三社三様。レジ横の鍋をじっくりのぞけば、各チェーンの持ち味がよくわかる。

撮影=吉岡秀子
「つゆは多めに入れますか?」と、店員のほうから声をかけてくれたセブンのおでん。ランチ時はおにぎりとの買い合わせが人気で、おでんのつゆはスープ代わりだ - 撮影=吉岡秀子

それぞれの特徴を詳しく見ていく前に、業界全体のトレンドを分析しよう。

大手3社が共通して「昨年よりおいしくなった」と語気を強めたのは「つゆ」だ。コンビニのおでんは、サラリーマンたちが夜な夜な立ち寄る居酒屋の「おでん屋」のものとは違う。客層が老若男女と幅広いうえに、

「ランチタイムに主食と合わせるスープとして、おでんを購入される方が多い」(セブン広報)
「だしの利いたつゆと合うので、おでんだねにさぬきうどんをそろえています」(ローソン広報)

と、時に「おでんだねより、つゆを味わいたい」客が結構いる。

おにぎりやサラダ、サンドイッチ、総菜など「食」のバリエーションが豊かな店の宿命だ。コンビニおでんは、「汁もの」「おやつ」「おつまみ」「おかず」と、ひとつで何役もこなさなくちゃならない。だから、おでん全体の味を決める「つゆ」のリニューアルに、各チェーンは並々ならぬ意欲を燃やすのだ。昨年と同じ味はひとつもないので、試してみる価値はある。

■「あごだし」をブレンドしたセブン

では、各社のおでんを見ていこう。定番商品を強くする戦略を貫くセブン。大根や玉子といった鉄板商品のブラッシュアップに加え、要の「つゆ」を大きく変えた。

ファミマやローソンもかつおだしをベースにしているが、セブンは初めて全国の基本のだしにあごだしをプラス。上品なコクが増した感じだ。

「地域の嗜好性に合わせ、全国9種類のつゆをご用意しましたが、基本のだしは冷凍しないかつおで作る鰹節から取っただし、昆布、野菜だし(キャベツ・玉ねぎ)、そしてあごだしをブレンドしています。おでんは低糖質・低カロリーな具材が多いので、野菜の旨味も入ったヘルシーメニューとして推していきたい」(セブン広報)

例えば、つるんとした食感でつゆがらみのいい「つゆだく味しみ白滝」(86円※価格はすべて税込み、以下同じ)は、食べ応えがあるのに一個5キロカロリーしかない。おでんのチョイス次第でヘルシーな食事が完成するというわけだ。

今年からおでんの具材の価格が80円、100円、130円(※税抜きの場合)の3パターンに統一されたので、買いやすくなった。店頭の「お品書き」をチェックしてみてはどうだろう。ちなみに売れ筋トップ3の「大根・玉子・白滝」は全部1個86円だ。

■「悪魔のおにぎり」を入れる雑炊アレンジ

次に、ローソンのおでんを見ていこう。特徴は「野菜やチーズ、ひじきなど、具だくさんのおでんだねがオススメ」(ローソン広報)ということ。ローソンのおでんは、購買者層の約6割が女性で、その声に応えて開発を進めたという。

新作のラインアップは、キャベツやくわい、枝豆などが入った「ひじきと5種類野菜のさつま揚げ」(100円)や低温の油でじっくり揚げることで豆腐に気泡を入れて、つゆを染みやすくした「つゆしみがんも」(110円)など、確かに女性が好みそうな創作おでんだねが充実した。

画像提供=ローソン
ニンジン、レンコン、枝豆、きくらげ、キャベツなど5種類の具材が入った、食べ応えある「つゆしみがんも」(110円) - 画像提供=ローソン

つゆも変わった。「追い鰹製法」を取り入れ、9つに分けた地域の嗜好に合った醤油を使い、旨味とコクが際立つ風味に。

ギョッとしたのが「おいしく食べられるアレンジ法がある」という話だ。

「おにぎりをおでんのつゆに入れて雑炊風にすることで、さまざまな味をお楽しみいただけます。中でも『悪魔のおにぎり』を入れると、青のりの香りが広がるおいしい雑炊にアレンジできますよ」(ローソン広報)

青のりとかつおだしの相性はいいはずだから、これは試してみたい。さらに「つゆに牛乳を入れて、ミルクおでんを楽しむという強者もいます」(同)

なんとフリーダムな! 自分の好きな味にカスタマイズして楽しめるのも、カジュアルなコンビニおでんの魅力だ。

画像提供=ローソン
ローソンの看板商品「悪魔のおにぎり」。白だしで炊いたご飯に天かす、天つゆ、青のり、あおさが入ったくせになるおいしさは、おでんのつゆに入れると旨味あふれる雑炊に変身する - 画像提供=ローソン

■「つゆ染み」「つゆ含み」にこだわり

最後にファミマのおでんは、売り場を「おでん処」と命名するだけあって、より本格志向になった。こだわりは、やはり「つゆ」。

「焼津産鰹節と北海道産真昆布に丸鶏の旨味、今年はさらに野菜だしを入れて、後味まで奥深い風味が続くよう仕立てました。繊細なだしの旨味をすっきりと飲みほしていただけます」(ファミマ広報)

飲んでみると、なるほど、コク深くてやさしい味のスープのよう。セブンやローソンのつゆとはまた違う「だし感」だ。

おでんだねはリニューアルした定番が出そろったが、中でも玉子商品のブラッシュアップが光った。人気が高い「こだわり味付たまご」(90円)は、黄身まで味が染み込んだしっとりとした食感に。「だし巻玉子」(110円)は、「つゆが染みやすいよう、玉子の巻き方を緩くした」と手間ひまをかけた。

画像提供=ファミリーマート
「昨年より、つゆをたっぷり含んでおいしく召し上がれますよ」とファミマの担当者が太鼓判を押した「だし巻玉子」(110円)。ふわっとした食感が玉子好きにはたまらない - 画像提供=ファミリーマート

「そのほか、厚揚げは豆腐をより柔らかくして、つゆが絡みやすくするなど、今年の改良ポイントはつゆ染み、つゆ含みの向上です」(ファミマ広報)

撮影=吉岡秀子
野菜の風味が加わったつゆが自慢の、ファミマのおでん。どのおでんだねも、つゆが染み込む仕立てにリニューアルした。人気5は「大根」「玉子」「白滝」「こんにゃく」「厚揚げ」 - 撮影=吉岡秀子

■注文の分だけ販売する「レンジアップおでん」

番外編のビッグニュースは、今後ファミマは一部店舗で「レンジアップおでん」を販売するという。常時、おでん鍋を売り場に置くのではなく、注文が入った時だけおでんをレンジで温めて提供する新スタイルだ。鍋を仕込むことなく、廃棄率の改善も見込める。このスタイルを支持する声が大きくなれば、従来の販売スタイルを覆す、「次世代おでん」が生まれるかもしれない。

こうして令和時代も、コンビニおでんは健在だ。注文時、「つゆ多め」と頼むのはOK。今年はおでんそのものを楽しむのはもちろん、地域ごとにだしが違うつゆを使って、自在にアレンジするのがトレンドになりそうだ。

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吉岡 秀子(よしおか・ひでこ)
コンビニジャーナリスト
関西大学社会学部卒業。会社員生活を経て、フリーランス記者として独立。2000年代前半からコンビニ業界に密着した取材を続け、ビジネスや暮らしに役立つコンビニ情報を各メディア、講演などを通じて発信中。著書に『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)など多数。
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(コンビニジャーナリスト 吉岡 秀子)