【原ゆみこのマドリッド】マドリッドに来る楽しみが増えた…

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▽「何だかいい迷惑よね」そんな風に私が怒っていたのは火曜。お昼のスポーツニュースがほとんどスペインサッカー協会のビジャル会長他複数幹部の逮捕の話題で終わってしまった時のことでした。いやあ、先週はレアル・マドリーもアトレティコもそれぞれのキャンプ地に到着。前者はアメリカのロサンジェルス、後者はセゴビアのロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)でプレシーズンのトレーニング中なのをいいことに、私もバケーション旅行を満喫しています。サッカーとはまったく関係のない1週間を過ごしていたため、まさかマドリッドに戻る早々、それもバラハス空港でスーツケースが出て来るのを待っていた午後11時過ぎに柴崎岳選手がヘタフェ加入決定のニュースを知って驚いたものでしたけどね。

▽だったら当然、翌日のTVで取り上げられるはずと期待していたんですが、いやいや、何とも間が悪い。汚職横領文書偽造、その他もろもろの容疑で朝から治安警察中央部隊がここ27年間、スペインサッカーのトップに立っているビジャル会長の自宅やその息子でスポーツ専門弁護士、CONMEBL(中南米サッカー連盟)のディレクターも務めるゴルカ氏の事務所に急行。お昼過ぎにはラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会本部にビジャル会長が連行され、立ち合い捜査となったため、いえ、マドリーやバルサの最低限の映像はあったんですけどね。時期も時期、木曜の2017-18シーズン・リーガ対戦日程抽選会は開催延期となったものの、現在ではどのクラブも戦力補強の動きが加速。こうも連日、何件も移籍があるのでは、いくら日本のファンたちが心待ちにしていた柴崎選手の4年契約が決まったとて、スペインマスコミで大きな話題にならないのは仕方ない?

▽実際、6月24日まであった昇格プレーオフ決勝で柴崎選手のいたテネリフェを破り、たった1年で辛い2部生活に別れを告げたマドリッドの弟分チームにしても今週は新入団選手のプレゼンラッシュですかね。ただ月曜のFWアンヘル・ロドリゲス(2部サラゴサから移籍)、DFブエノ・ゴンサレス(ベティス)らは本当に初めてのヘタフェなんですが、火曜に登場したアルバロ・ヒメネス(RMカスティージャ)、ダニ・パチェコ(ベティス)は昨季もレンタルでプレー。後者などテネリフェとの2試合で3得点と、まさにプレーオフ優勝のヒーローでしたっけ。そしてこの日の新顔は、マルケル・ベルガラ(ラス・ソシエダからレンタル移籍)だけで、1部チームで最後のプレシーズンスタートとなる水曜も完全移籍が決まったチュリ(アルメリア)とポルティージョ(ベティス)のプレゼンなんですよ。

▽そして金曜、いよいよ待望の柴崎選手のプレゼンが開かれるんですが…。うーん、水曜夕方の練習後、チームはセゴビアに移動しちゃいますからね。そちらは土曜までの短い滞在で、月曜からはバレンシア州のオリバ(スペイン南東部のビーチリゾート)でキャンプと日程はわかるんですが、ヘタフェの広報部長に訊いても「全然、話の出てなかった移籍で私たちも突然聞いたの。まだ柴崎がいつ練習に合流するかもわからないわ」とのこと。それでもスタジアムが改装中のため、恒例のピッチでのユニフォーム姿披露がなく、正面ゲートに何となく誘導されてきたパチェコやアルバロにサインをねだっていた若いヘタフェファンたちが柴崎選手入団のことをもう知っていて、「プレーオフで見たよ。上手いし、絶対、1部でエギュラーを取れる選手だ」と太鼓判を押してくれたのは私も嬉しかったかと。

▽ちなみに29日にその第2次キャンプも終わった後、次の週辺りからはスタジアムから5分程、下ったところにある練習場でセッションをやるんじゃないかと思いますが、さて。まだ新シーズン用になっていませんが、ヘタフェの練習予定はオフィシャルサイトに出るはずなので、夏休みでマドリッド観光に来る機会があれば、タイミングを合わせて、柴崎選手を見に行っても楽しいかも。8月の第3週週末近辺には兄貴分のアトレティコや今季、マドリッド第3のチームの座を争うことが宿命づけられているレガネスとの親善試合も予定されているようなので、それについてはまた日付が正式に決まったら、お知らせしますね。

▽え、1部に復帰したばかりのヘタフェでも外にキャンプに出るのに、1部2年目となるレガネスが猛暑のマドリッドを1度も離れないのは変わっていないかって? そうですね、お金がないからなのか、アシエル・ガリターノ監督の方針なのかは知りませんが、確かに彼らは昨年の夏もどこにも行かず。ブタルケ(レガネスのホーム)からちょっと、歩いたところにあるらしい練習場で頑張っているんですが、私が見学に行くのにネックとなっているのはスタートが午前9時と早いこと。

▽何せ、こちらもセルカニアス(スペイン国鉄近郊路線)C-5線のZaraquemada(サラケマダ)駅から徒歩15分と、セントロ(マドリッド中心部)から時間がかかりますからね。夕方セッションのある日に行ってみたいものですが、そんな彼らも今週は水曜、木曜、金曜と連続プレゼン。左SBラウール・ガルシア(アラベスから移籍、元アトレティコでアスレティックの選手と同姓同名だが別人)、右SBザルドゥア(レアル・ソシエダからレンタル移籍)、GKクエジェル(スポルティングから移籍)の順番になりますが、もう22日からは親善試合もスタートするとか。対戦相手はRMカスティージャ(2部B)だったり、バジャドリッド(2部)だったり、今季も1部復帰を目指すラージョだったりと地味なものの、1部2期目となれば他のチームの見る目も違ってきますからね。今季はもう少し早めの残留確定ができるよう、しっかり準備してくれたらと思います。

▽一方、FIFA処分のせいで新入団選手プレゼンとは縁のないアトレティコはこのところ、一体何をしているのかというと…。いやあ、先週、ビトロはセビージャと契約延長する直前に翻意。2022年までの契約を結んでくれたんですが、選手登録のできる来年1月になるまではラス・パルマスにレンタル移籍ですからね。今はカナリア諸島(大西洋にあるリゾート諸島)で練習していますし、ジエゴ・コスタもチェルシーのプレシーズンにはあれこれ理由をつけて参加せず、移籍成立を母国ブラジルで待ってはいるんですが、最近のアトレティコはCL報酬などで羽振りはいいものの、身に着いた貧乏性のせいでしょうかね。コンテ監督が構想外にしているコスタの値下げを待っているのか、まだしばらく時間がかかるよう。

▽うーん、彼の場合、リーガ前半戦はプレーできずとも、チームで練習だけ参加という方向になりそうですが、9月初旬にはイタリア、リヒテンシュタインと対戦するスペイン代表のW杯予選も控えていますからね。あまり長くバケーションを取るのは当人にとって、良くないんじゃないかと思いますが、こればっかりはねえ。あ、ここずっと、ロス・アンヘレスで1日2セッション、多い日は午前7時45分からの早朝練習を含めて3セッションで汗まみれになっているチームメートを横に、未だにサウールがバケーション三昧なのはU21ユーロに参加していたせいなので、怒っちゃいけませんよ。

▽そんなサウールは31日に合流。メキシコ遠征やアウディ・カップには参加せず、特別メニューでシーズン開幕に備えるそうですが、今週は6月に恥骨炎の手術をしたガメイロが合宿に参加。もちろんまだ皆と一緒に練習はできないものの、リハビリは順調に進んでいるようです。その他、昨季限りで引退したチアゴがアシスタントコーチとして加わり、ハードなメニューのせいでガイタン、ブルサリコなど、各部の痛みが出て皆勤できてない選手もいるようですが、まあこの時期にはよくあること。とりあえず、22日に予定していたヌマンシア(2部)とのメモリアル・ヘスス・ヒル杯はなくなったため、どの選手もこの夏、最初の親善試合となる25日のトルーカ戦までに体調を整えてくれればいいんじゃないでしょうか。

▽そして最後に現在、UCLAのグラウンドでプレシーズンのトレーニングを続けているお隣りさんについてなんですが、昨季がリーガ優勝、しかもCLは2連覇なんて、凄い成績だったせいですからですかね。クリスチアーノ・ロナウドのマドリーに戻らない発言騒ぎも当人がまだバケーション中でコメントもないため、どこかうやむやになってしまった感もありますし、ハメス・ロドリゲスのバイエルン移籍もキャンプ出発前に決定。特別休暇延長のあったキャプテンのセルヒオ・ラモスも今週頭から合流していますし、あとはマンチェスター・ユナイテッド行きの夢が消えてしまったモラタがミランに行くのか、チェルシーに行くのか、ダニーロにオファーがあるだかないだかぐらいで、ジダン監督のチームは平穏に過ごしているよう。

▽この先、マドリッドで控えているイベントも金曜のセバージョス(ベティスから移籍)の入団プレゼンぐらいなため、私も遠目から気長に様子を伺っている感じです。ええ、サウール同様、U21ユーロで活躍したセバージョスもそれが終わると、すぐアメリカに飛んで、この土曜に最初のプレシーズンマッチ、それこそ8月8日のUEFAスーパーカップの予行演習となるマンチェスター・ユナイテッド戦に挑むチーム本隊に合流。その先も26日にはマンチェスター・シティ戦、29日にはアメリカ版クラシコ(伝統の一戦)のバルサ戦、8月2日のMSL選抜チーム戦と、巡業があるマドリーは大西洋の向こうの地から帰って来ませんからね。コンフェデレーションズカップに出場したため、戻りが月末になるロナウドを含め、選手たちの姿をバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で見かけることができるのはおそらく、来月の4日以降になるんじゃないかと。

▽ただ夏休みにマドリッドを訪れる人にとっては、公式戦を楽しめるチャンスもあって、いえ、リーガは8月3週目の週末からなんですけどね。マケドニアのスコピエで開催されるUEFAスーパーカップを現地観戦するのはハードルが高いものの、コパ・デル・レイのチャンピオン、バルサとリーガのチャンピオンのマドリーが激突する今季、公式戦初クラシコ、スペイン・スーパーカップの方は13日にカンプ・ノウで1stレグがあった後、16日にサンティアゴ・ベルナベウで2ndレグが開催。毎年、この日付けはバケーションに出ている両チームのアボナドー(年間シート保持者)も多いため、リーガなどと違い、比較的チケットが手に入れやすいのも嬉しいところでしょうか。

▽まあ、マドリッドのチームの近況はこんなところなんですが、1週間ぶりにマルカやAS(スペインのスポーツ紙)をじっくり読んでみれば、今月27日にはディナモ・ブカレス相手にヨーロッパリーグ予選3回戦1stレグを迎えるアスレティックを筆頭に、もう10チームもプレシーズンマッチを戦っていることが判明。セビージャが来日してセレッソ大阪に1-3で勝利なんていうのはともかく、乾貴士選手のいるエイバルも月曜にはレアル・ウニオン(2部B)に3-1で勝ち、おやおや、これじゃもう目が離せない? 難点なのはリーガ3強以外、親善試合のTV中継がないことですけどね。私もまた、サッカー漬けになる日々が始まる時期になりました。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。