鹿島下部組織から鹿島学園高、法政大を経て、鹿島入りした上田。プロ入り後から才能の片鱗を見せて付けている。(C) SOCCER DIGEST

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 Jデビュー戦から5試合で3ゴール。鹿島で期待通りの活躍を見せているU-22日本代表の上田綺世が、同代表の北中米遠征に臨んでいる。
 
 今年7月、上田は法政大卒業を待たずに常勝軍団の門を叩いた。加入前から大きな期待を懸けられており、6月には日本代表の一員としてコパ・アメリカにも参戦。同大会では無得点に終わったものの、駆け引き、動き出し、クロスへの反応は南米の強敵に対しても引けを取らず、ゴールの予感も漂わせていた。

 
 研ぎ澄まされた得点感覚――。それは教え込んで上達するような代物ではなく、ストライカーとしての本能だろう。その類まれなゴールセンスは鹿島学園高時代から変わっておらず、当時からずば抜けていた。
 
 
「1年生の頃は身体が出来上がっていなかったですし、スピードも2年の後半にかけて上がってきて、ようやく身体的に成熟しました。そして、特に2年の終わりから3年の頭にかけて、得点を取る幅が広くなったんです。右足、左足、頭、プレーの幅、動き出すタイミング。そういう吸収率が急に上がったように思えました」
 
 こう話すのは高校時代の恩師、鹿島学園の鈴木雅人監督だ。
 
 上田が鹿島学園に入学したのは今から5年前。鹿島アントラーズJrユースノルテからユースに昇格できず、地元の強豪校へ進学した。当時は線が細く、身体も出来上がっていない。そのため、世代別代表はおろかチームでも出場機会を得られなかった。だが、2年生を迎え、状況が一変する。フィジカルが完成し、高校年代で活躍する土台ができたのだ。1年次からゴールへの欲は人一倍あったが、ようやく自身のイメージと身体がマッチするようになった。
 
 そして、迎えた最終学年。関東でも指折りのFWに成長した上田は、チーム内で圧倒的な存在感を示す。とりわけ、凄まじかったのは勝負強さだ。
 
 インターハイ予選の決勝ではCKのこぼれ球を拾うと、自陣のペナルティエリアから独走。50メートルを一気に駆け上がって、ひとりでゴールを決めてチームを全国大会出場に導いた。本戦では3回戦で姿を消したものの、2回戦ではアディショナルタイムに起死回生の同点弾。冬の選手権も予選決勝で鮮やかな直接FKを決めると、本大会の1回戦では自らの2ゴールで逆転勝利の立役者となった。県リーグでは18試合で33得点を挙げ、12月のプリンスリーグ関東参入戦は初戦で決勝弾、続く2回戦(昇格決定戦)では3得点の大暴れでチームの昇格に貢献した。
 
 勝負所でエースの仕事を果たす――。そこは高校時代から変わっていない。しかし、欠点も多い選手だった。守備は不得意で調子に波もある。監督からすれば、使いづらい一面があったのも事実だ。
 
「上田はふざけたところもあるけど、信じていれば、(ゴールという)答えを出してくれる。そこは今までの選手とは違うので、我慢する価値があった。仲間からも守備をしないと不満が出ましたけど、『こいつは得点を取ることが仕事だから』とは言えないけど、『上手くサポートしてくれ』と伝えました。下手したら他のチームに行っていれば、サッカー選手として終わっていたかもしれない。守備はしないし、ぐうたらで変に要領が良かったから(笑)。だけど、それも個性。良いところは伸ばして、ダメなところは高校生に対して先生として厳しく接しました」
 
 多少の問題には目を瞑り、鈴木監督は上田を使い続けた。だからこそ、個性が磨かれ、その才能が花開いたとも言える。
 
「一生懸命頑張るけど、得点を取れない選手もいる。言い方はあれですけど、見方によって上田の印象は変わる。あいつは周りを気にしないし、自分は得点を取って価値を証明するという想いがあった。自分は良い動きをしても、良い守備をしても得点を取れないとダメなんだと言い聞かせていました。得点イコールすべて。それがすべて良いとかではなく、ひとつのスタイルとしてゴールへの欲を持った選手と考えれば魅力的でした」
 
 鹿島学園の3年間を経て、法政大で飛躍を遂げた上田。今は来年の東京五輪を目指すU-22代表でエースの座を争っている。高校入学時を考えれば、誰もが驚く成長曲線だろう。だが、鈴木監督に驚きはない。
 
「上田は覚悟を持っていました。今の若い子は保証を欲しがる。はっきり、こうなりたいと思っているけど、今の子どもたちはダメだったらこっちの道に行く選択肢を持っている。それが悪いわけじゃないけど、上田はサッカーで勝負をすると決めていた。ストイックだったし、良い意味でサッカー選手になることだけを考えていました」
 
 東京五輪開幕まで11か月。スタンスは今も昔も変わらない。高校時代から積み上げてきた得点嗅覚を武器に、上田は貪欲に上を目指して走り続ける。
 
取材・文●松尾祐希(フリーライター)