小惑星は頻繁に地球に接近しており、月の公転軌道より内側に入り込む小惑星も頻繁に観測されています。


2025年10月1日6時36分(※1)、アメリカのキットピーク国立天文台にある「ボーク望遠鏡」が直径2m前後の小惑星「2025 TF」(旧称C15KM95)を発見しました。観測結果から、2025 TFは発見の約6時間前、同日0時49分に、南極大陸上空を約409kmまで接近・通過していたことが明らかとなりました(※2)。これは観測史上2番目の接近距離となります(※3)。


※1…この記事での日時は、日本時間よりも9時間遅い世界時表記となっています。


※2…地球の中心から地表までの距離を6371kmとして計算。厳密に言えば今回のように、極地ではこの距離が最小で6357kmまで短くなりますが、小惑星の接近距離自体に観測誤差が大きく、この差は誤差の範囲に吸収されてしまいます。


※3…発見後に衝突した11例、および小惑星として登録されていない火球の数例を除きます。


【▲ 図1: 「2025 TF」は、南極上空わずか409kmの場所を通過しました。緑色は静止衛星軌道。(Credit: CNEOS(NASA))】

南極上空を通過した小惑星「2025 TF」を発見

地球の近くを小惑星が通過するのは、おそらく多くの人が思っている以上に日常茶飯事です。かつては本当に日常茶飯事かどうかは理論的な推定に留まっていましたが、観測技術の向上により、実際に観測できる事例が増えています。


例えば、この記事の執筆時点から過去1年以内に、月の公転軌道(約38万4400km)よりも内側に入り込んだ小惑星は、観測されたものだけでも188個あります。そしておそらく、これよりずっと多くの小惑星が、一度も観測されないまま地球を通過したでしょう。


このような状況のため、単なる接近通過が話題にあがることは減りましたが、特異な接近事例は話題になることがあります。今回取り上げる「2025 TF」もその一例です。


【▲ 図2: リバプール望遠鏡で撮影された2025 TF。(Credit: Филипп Романов)】

2025 TFは、キットピーク国立天文台アメリカアリゾナ州)にある「ボーク望遠鏡」にて初めて観測されました。発見日時は2025年10月1日6時36分ですが、地球に最接近したのはその約6時間前である同日0時49分(±1分)であると推定されています。


なお、この小惑星の発見が最初に報告された後、それ以前に「カタリナ・スカイサーベイ」や「ツビッキー掃天観測」でも観測されていたことが判明しています。ただし、いずれも最接近後の観測記録となります。


上空わずか409kmまで接近!

最接近時、2025 TFは南極大陸上空からわずか409km(396〜423km)まで接近していたと考えられています。これは最接近距離が368km(357〜379km)であると推定されている「2020 VT4」に次いで、観測史上2番目の接近記録となり、地球上空から1000km以内を通過したことが確認された2例目の小惑星でもあります。


2025 TFは推定直径が1.3〜2.8mと、かなり小ぶりな岩塊であることが推定されています。これほどの大きさの場合、仮に大気圏に落下しても全て燃え尽きてしまうか、せいぜい小さな隕石が地表に届く程度でしょう。


最接近高度が、低軌道の人工衛星や国際宇宙ステーションと同じくらいであるため、この点が気になる方もいるでしょう。しかし、これくらいの小惑星の接近は頻繁に起きている一方、観測が難しいため、大半が見逃されていると考えられています。2025 TFは幸運にも観測できた事例と言えるでしょう。人工衛星の数は増え続けていますが、これといった被害が報告されていないのは、人工衛星という “的” がいかに小さいかを示唆しています。


このように、2025 TFの接近は特に被害を及ぼすものではなく、特に注意を促す内容ではありません。しかしこのような話題は、普段ならばアメリカ航空宇宙局(NASA)が何らかのコメントを残すのが常ですが、今回に関しては特に何も声明を出していません。その理由は、2025年10月1日からアメリカ政府機関が一部閉鎖されている影響であると考えられます。一方で、NASAが運用している小惑星軌道のデータベース「JPL Small-Body Database」を始めとして、2025 TFに関する情報は掲載・更新されています。


ひとことコメント

2025 TFのような小粒な岩の接近は珍しくないけど、最接近距離が1000kmを切るのは数年ぶりになるよ!(筆者)


 


文/彩恵りり 編集/sorae編集部


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