川又堅碁(撮影:Noriko NAGANO)

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ミックスゾーンに現れると雰囲気を明るく変える選手がいる。北朝鮮戦、中国戦と途中出場した川又堅碁だ。

2015年、川又は不発に終わり失意の中で開催地の中国・広州を後にした。「期待に応えられなかったというのが今回だったと思います。もうちょっとやらなければいけなかった」と反省の弁ばかりを口にしながら、静かに報道陣の前を通り過ぎた。

だが、今回は朗らかそのもの。チームスタッフも「大人しい選手が多い中で川又の存在はムードを上げて貴重」という。追加招集で日本代表に合流するなり、川又はチームを盛り上げた。

「(ムードメーカーは)意識はしてないです。元々こういう感じの性格なんで。本当はチームっぽく最初から盛り上げればよかったですけど。まぁ3日ぐらいかかったけど、今はチームがまとまっていると思うんで、非常にチーム状況はいいんじゃないかと思います」

2試合とも出場すると前線を活性化した。だが川又はまだ物足りなさを感じている。

「出たら次は目に見える形で結果を出したいですね。中国戦も絡んで、あれは意味がないわけじゃないけど、FWは数字だから」

もしかすると韓国戦が最後のアピールの場になるかもしれない。そこで川又は何をしたいのか。

「だけど次の試合は優勝が懸かってるんで、自分の数字だけに捕らわれないでチームのためになることを最優先して。それがゴールだったらゴールなんですけど、横パスしてフリーで味方がシュートを打てるんだったら。そういう勝つためのサッカーをみんなでしたいです」

そこまで笑顔を交えながら語っていた川又に、ワールドカップメンバー入りの際のライバルになるだろう、大迫勇也や岡崎慎司に対し、自分のほうが優れているのは何かと聞いてみた。

川又は真顔になり「……何だろう」と考え込む。しばらく経って「いや、何もないです」と厳しい口調で答えた。本当は思うこともあるのだろう。だが川又は口を閉ざした。明るいが大言壮語を口にしたいとは思っていないのだ。

それでも川又はもう一度考えた後、「あ、じゃあ探して見てください。それで教えてくださいね!」と明るく言うと、その場を後にした。

明るさとギラギラした部分、弁の巧さなどは、所属チームの偉大な先輩ストライカーと同じかもしれない。

【日本蹴球合同会社/森雅史】