この記事をまとめると

■カワイイいデザインの国産車を紹介

■独特なデザインのクルマが多く、いま乗っても古さを感じることが少ない

■カワイイクルマの特徴として丸いヘッドライトがアイコンになっているケースが多い

スペックや機能性を気にせずに愛したい可愛い国産車たち

 ファミリー向けミニバンを筆頭に、最近は厳ついオラオラ顔のクルマが市場で台頭しています。また、シャークヘッド型など、薄くシャープな表情もいまやすっかり主流になりました。そこで、今回はあえて「カワイイ」国産車5台をピックアップ。ゆっくり和んでいただければと思います。

●日産のV字回復を支えた個性派コンパクト

 まず最初は、日産の3代目「マーチ」です。カルロス・ゴーン指揮下における日産・ルノーのアライアンスにより2002年に登場。息の長さが特徴のマーチですが、この3代目も2010年までの8年間生産され、その間人気をキープしました。

 日産テクニカルセンター内で進められたデザインは、のちに独立する猿渡義市の手になると言われています。水平基調のドッシリした下半身に、丸いキャビンが載ったスタイルは日本車離れしたもので、個性的だった先代に負けないものでした。

 とくに、フード上にちょこんと貼り付いたヘッドライトは「目」そのもので、その愛らしさは多くの女性ユーザーが支持。また、「パプリカオレンジ」など、豊富なカラーバリエーションも「カワイらしさ」を倍増させたようです。いまだに、街を走る同車にはセンスのよさが溢れています。

●余計なモノを削ぐことで生まれた個性

 2台目は、ホンダの初代「トゥデイ」です。同社は、10年以上空白だった軽自動車市場への再参入を計画、軽ボンネットバンという規格を十二分に生かしたシンプルさで1985年に登場しました。

 いわゆるMM思想により、超ショートノーズかつロングキャビンとしたボディを「ペンタストリーム・シェイプ」と命名。バンパーとフードに食い込む丸いライトは、メインターゲットの女性を意識したと思われますが、単に「カワイイ」というより、ボディ全体で「キュートさ」を醸し出したと言えます。

 当時、四輪デザイン室の室長だった木越由和は、ほとんど独力でこの個性的なスタイリングをまとめたとされます。女性を意識しながら、安っぽい「カワイさ」に陥らなかったのは、氏の純粋なアイディアがそのままカタチになったからだと思えます。

カワイイクルマはコンセプトも独特

●5チャンネル体制下で生まれた実力派コンパクト

 3台目は、オートザムの「レビュー」とします。バブル期のマツダによる5チャンネル体制下、「キャロル」に次ぐコンパクトカーとして、1990年にオートザムブランドから発売されたモデルです。

「ハイコンパクト2.5BOX」のキーワードにより、わずか3800mmの全長に1470mmの全高を持ったセダンボディは、コロっとしたプロポーションが「カワイさ」を感じさせます。同時に、楕円形のヘッドライトのフロントはオートザムらしいスマイルフェイスとされました。

 見かけによらず、居住性などの高い機能性を携えたレビューは欧州市場などで人気を獲得しました。たしかに、実用性とカジュアルさを融合させたボディはかつての欧州コンパクト車を彷彿させます。その点、「カワイさ」ばかりがクローズアップされた国内は少々残念だったと言えそうです。

●トヨタの考えるクルマじゃないクルマ

 次は、トヨタの「WiLL Vi」です。1990年代の新しい消費スタイルを模索する、大手異業種5社による合同プロジェクトがWiLL。その第1段として2000年に登場となりました。

「ヴィッツ」をベースに「4ドアパーソナルカプセル」をキーワードとしたボディは、独特のクリフカットシルエットが特徴。まさに昔の馬車をイメージさせ、クルマとは思えない「カワイさ」を実現しました。「なごみ」がコンセプトのインテリアも、オレンジとブラウンの組み合わせがまるでスイーツのようです。

「Be-1」など、日産のパイクカーシリーズに比べるといまひとつ影が薄い印象のWiLLシリーズですが、従前のクルマらしさとかけ離れた新しさは間違いなく新鮮と言えそうです。

●原色が楽しいリアルチョロQ

 最後は、スズキの「ツイン」。1999年の東京モーターショーに「Pu3コミュータ」の名前で出品されたコンセプトカーの市販版として、4年後の2003年に登場した2ドアマイクロクーペです。

 ふたり乗りとして、わずか2735mmの全長に1450mmの全高としたプロポーションは、まさにチョロQそのもの。このボディの前後に大きな丸いライトを置いたのですから「カワイイ」のは当たり前で、青や赤、黄色と行った原色のボディカラーがオモチャ感を増幅しました。

 ただよく見ると、未塗装のバンパーとホイールアーチはボリューム感に溢れ、小さなボディに安定感を与えています。さらに、左右非対称のグリルは欧州コンパクトカーを彷彿とさせ、単にカワイイだけのクルマじゃないところがユニークと言えます。

 さて、一般的に「丸いライトのクルマはカワイイ」と思われていますが、今回の5台を見ると、同じ丸いライトでもクルマ全体としてはじつにさまざまな個性を発揮しているのがわかります。冒頭のように、最近はシャープな顔こそが「新しいデザイン」という風潮がありますが、もっと視野を広げたスタイリングを期待したいところです。