日本の約8割の地方から都会へ若年女性が流出する現状を、ある女子大生は「地方は江戸時代」と表現しました。就職活動での性別における役職の分担や、冠婚葬祭で女性だけが働き続ける風習、そして「結婚は?」と繰り返される挨拶代わりの干渉。これまで120人以上のヒアリングをしてきた山本蓮さんが、地方からの脱出を願う女性たちが直面する、日常の違和感の実態を浮き彫りにします。 

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「子どもの面倒は?」「寿退社?」に絶句

── これまで地方在住・出身の20~30代女性に120人以上にインタビューをし、SNSで配信してきた「地方女子プロジェクト」。山形県出身の19歳の女子大学生が「東京が令和だったら、地方は江戸時代だと思っています。家のことは女の人がやって、外のことは男の人がやる。男だから女だからをやめてほしい」と話す姿に、衝撃を受けました。このプロジェクトを立ち上げた山本蓮さんご自身も地方在住ですよね。

山本さん:地方では「男が外、女が家」という考え方がいまだに根強いです。私の見た範囲で言うと、女性が働ける主な職種や勤務先も限定的で、都市部に比べて選択肢が少ないと感じます。私は山梨県で生まれ、山梨県内で進学しましたが、5年前の就職活動では東京と山梨の会社を受けました。そのとき目の当たりにしたのは、とくに中小企業において、山梨では総合職や営業職は男性、一般職・事務職は女性というように、事実上、性別によって役割やキャリアがわかれている現実です。

これは募集要項に明示されているわけではないのですが、選考などで「我が社にはこれまで女性社員がいませんが、やっていけますか?」と聞かれたり、企業パンフレットに掲載されている職種別インタビューを見たりして「この企業では、男性中心の職種、女性中心の職種にわかれている」と、察しました。新卒の時点でこんなに差があるなんて…。

また、私が求人募集を見た限り、山梨では女性のいわゆるオフィスワーカーとしての募集数が限られており、介護や子育て関係などのケアワーカーや非正規雇用での募集が多いように思えます。このように、働ける業界や職種が限定的だと考えられる状況はそのまま、地方での男女間の賃金格差につながっています。

── 就職活動は、山本さんが出会った最初の「地方女子の壁」だったんですね。ご自身は、周囲の言動から地方特有だと思われる問題を感じたことはありますか?

山本さん:山梨県の会社に就職したところ、勤務先にお子さんが大学生くらいの女性上司がいましたが、やや体質の古い取引先の方から「女が昼間こんなところで働いて、子どもの面倒は誰が見るんだ?」と言われる様子に驚きました。彼女は「もう子どもは成長しているので大丈夫です」と答えていましたが、相手は納得しないようで…。私も退社の挨拶のときに、年配の方から「寿退社か?」と言われ唖然としました。

男性は飲食で女性はずっと料理の風習

── それは…。個人の問題でもありますが、都市部では今はそこまで言う人は少ない気がします。「地方女子プロジェクト」では、他にどのような指摘がありましたか?

山本さん:さまざまな声が上がりましたが、「東京が令和なら、地方は江戸」と言った人は、「集まりや祭りで、男性はずっと座って飲食するいっぽう、女性は料理を作り、働き続けているのがイヤで、地方から出たくなった」と述べていました。これまでそんな光景が当たり前だと思っていましたが、彼女の指摘で「これはおかしなことなんだ」と、ハッとしました。

また、インタビューした女性本人の体験談としては少なかったものの、「女子だから」と、進学の可能性を絶たれるケースを見聞きした人は多数いました。「女だから大学まで行かなくていい」「弟の進学を優先したいから、姉は高校まで」という例もありました。

── 進学の選択肢が限られる場合があるのですね。地方ではプライベートな話題への感覚が異なる気がするのですが…。

山本さん:富山在住の不妊治療中の女性は、ご近所さんに会うたびに「子どもは(まだ)?」と聞かれるのが苦痛、と語っていました。コミュニケーションの手段としてあいさつ代わりに聞かれるので、家から一歩出ると全員が敵に見えるくらい思いつめたそうです。

私は未婚の26歳ですが、「今、何歳だっけ?結婚は?」「そろそろ嫁に行く齢じゃんけー」の嵐がやってきました(笑)。NHK『クローズアップ現代』に出演して、地方女子が周囲の言動や扱いに違和感を持っていることを伝えたことがあったのですが、放送後もご近所から「きれいに映っていたから、嫁のもらい手が増えてよかったね」と言われ、内容がまったく伝わってないことに愕然としました。

地方から逃げ出したい自分もいたけれど

── 相手も悪気があっての発言ではないにしても、固定観念はまだ根強いんですね。

山本さん:日本では約8割の地方で、若年女性が都市部に流出し、人口減少や少子化を招いていると言われています。有識者でつくる民間研究機関「人口戦略会議」は全国744の自治体が人口減少に歯止めがかからない恐れのある「消滅可能性自治体」に該当すると公表しました。これは2020年から50年までに、20歳から39歳までの若年女性人口が、半減する自治体を指します。

「地方女子プロジェクト」インタビューで明らかになった「若年女性が地方から出たくなる理由」は、仕事の選択肢の少なさ、保守的な価値観や習慣の両方でした。

活動を続けるなかで気づいたのですが、「今までこうして自分の体験や意見を話せる場所がなかった」と言う人は非常に多いんです。「自分の置かれている状況は当たり前で、意見を言って変えられるなんて考えもしなかった」という意見もあったので、大勢で悩みやおかしいと感じる部分を共有する場が必要だと思いました。そこで、今年から各地で対面式の「本音おしゃべり会」を開始したんです。

── 体験や本音を共有する場は大切です。ひるがえって山本さんは、ずっと山梨に留まっていますが、都市部に出ようと思わなかったのですか?

山本さん:幼い頃から地方は閉鎖的だと気づいており、もちろん、ここから逃げたい自分もいました。とくに山梨では周囲にバリバリ働く女性が少なく、女性が第一線で働き続けるロールモデルが見つけられません。だから高校生の頃は、都会に出たい気持ちが湧いた時期もあります。

でも、自分の学びたい大学が県内にあり、自分がやりたいと思った地方創生・地域活性化に関わる就職先が見つかったので、結果的に県内に残りました。自分の意志でここに残ったわけで、今は地方から仲間とともに現状を変えようと思っています。

取材・文:岡本聡子 写真:山本蓮、地方女子プロジェクト、ヤマモトクミコ