会見で涙を流す阿部慎之助監督=千代田区の球団事務所 
写真/産経新聞社

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 25日、球界だけでなく日本列島にショッキングなニュースが駆け巡った。巨人・阿部慎之助監督が家族間の騒動を巡り現行犯逮捕。翌26日に球団に自ら辞任を申し入れ、一夜にして“巨人軍監督”の肩書が消えてなくなった。
 事件の詳細は明らかになっていない点も多く、ここで言及すべきではないが、辞任したその日のうちに阿部前監督の復帰を求めるオンライン署名活動が発足。オンライン署名の数は28日午後の時点で10万筆を超えている。

◆阿部前監督の復帰署名は数日で10万筆超に

 躾の範疇だったかどうかはさておき、姉妹ケンカの仲裁に入る中で長女に暴行を加えた事実関係は本人も認めているとのこと。少なくとも今季、もしくは今後数年間は10万筆超の願いが叶うことはなさそうで、話題は早くも来季以降の巨人の組閣に移行しつつある。

 巨人軍監督といえば、これまで投手ならエース級、打者なら4番といった「生え抜きのスター」が務めてきた。そんな不文律に加えて、次期監督には「クリーンなイメージ」「チームの信頼回復」「強力なリーダーシップ」など、別の要素も求められることになるだろう。

◆“クリーンな巨人OB”として評価される高橋由伸氏

 そんな条件に最もフィットしそうなのが、2016年から3シーズンにわたって指揮を執った高橋由伸氏だ。前回は現役引退と同時の就任であり、指導者としての経験がほぼない中で、難しい舵取りを強いられた。

 指揮を執った3年間のチーム順位は2位、4位、3位。常勝軍団の監督としては物足りなさもあったが、当時二軍でくすぶっていた岡本和真を我慢強く起用し続けるなど、退任後にその手腕が再評価されたのも事実だ。現役時代からのクリーンなイメージも不変で、現時点で最右翼と呼べる存在である。

松井秀喜氏の可能性は…

 もう一人、有力な候補として取り沙汰されているのが、松井秀喜氏だ。こちらは巨人一筋ではなく、キャリアの半分をメジャーリーグで過ごした。今もアメリカに生活の拠点を置いており、監督就任には高い壁がある。

 しかし昨年、長嶋茂雄氏が死去した際、恩師との“約束”に言及。具体的にそれが何だったかは本人にしか分からないが、長嶋氏も松井氏が再び巨人のユニホームを着ることを望んでいたはず。松井氏の考えひとつで、次期監督に就任するサプライズがあっても不思議ではない。

◆「生え抜き縛り」を壊せるか…橋上代行監督への期待

 この2人以外にも、原辰徳前監督、桑田真澄氏、川相昌弘氏、工藤公康氏などの名前も挙がっているが、いずれも球団OBばかり。令和の時代においても、巨人軍監督は「生え抜きスター」が務めるべきという不文律が崩れることはないのだろうか。

 そこで筆者が密かに期待しているのが、26日から指揮を執っている橋上秀樹代行監督の続投だ。橋上代行監督は、阿部前監督と同じ安田学園高校の出身。そんな縁もあって昨季から阿部前監督を支えていた。

 橋上代行監督は現役時代をヤクルト、日本ハム、阪神で過ごし、巨人にとっては憎きライバルだった野村克也氏の薫陶を受けた一人。現役引退後は、コーチとして多くの球団を渡り歩き、戦略作戦面での評価は極めて高いものの、正式な巨人軍監督となると、多くのOBが反発しそうではある。

 それでも指導者としての評価は高く、実際に代行監督として指揮を執った2戦目で大胆な選手起用を披露。坂本勇人を3番、丸佳浩を7番でスタメンに据えると、それが見事に的中する形で、新体制下の初勝利をマークした。

◆思わぬ形での早期退任…巨人は変われるのか

 元をたどれば、阿部前監督のスパルタとも評される指導は、選手の間では不評だった。キャンプでは若手に走り込みや打ち込みを徹底させるなど、チーム力の底上げに必要不可欠な指導を行っていた。しかし、時に厳しく選手を叱責する場面もあり、若手の萎縮を招いていると論じられたこともあった。

 3年契約の最終年の今季は、優勝を逃せば退任が既定路線ともいわれていたが、思わぬ形での早期退任。当然、チーム内には動揺も広がっているが、逆に選手は力みが取れて、選手がいい意味で結束する可能性もあるだろう。

 今季も最下位候補だったヤクルトが池山隆寛新監督の下、生き生きとしたプレーを見せ首位争いを演じているのが好例だ。監督が代わるだけでも、チームが大きく生まれ変わることができる。

 橋上代行監督がコーチとして培った手腕を発揮し、思わぬ好結果を残した時、巨人は次期監督をどうするか、頭を悩ませることになるかもしれない。

 20数年前、阪神は外様監督を迎え、古い体質を脱却。暗黒期を過去のものとした。今度は巨人が伝統という名の呪縛を断ち切る時なのではないだろうか。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。