「119 エマージェンシーコール」公式サイトより

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 2月3日にフジテレビ系列で放送された月9ドラマ「119 エマージェンシーコール」第3話のエンドロールから、「撮影協力・横浜市会 横浜フィルムコミッション 横浜市役所アトリウム」、そしてひときわ大きく表記されていた「協力・横浜市消防局」のクレジットが消えた。横浜市横浜市消防局の全面協力を得て撮影されていたドラマだが、中居問題の影響がここにも……。

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 元タレント・中居正広氏の女性トラブルに端を発した問題は、とうとうフジのドラマにまで影響が及んだ。「119 エマージェンシーコール」は119番通報を受けて救急車などの出動を指示する指令管制員たちを描いた物語で、横浜市消防局の全面協力の下で撮影されている。

「119 エマージェンシーコール」公式サイトより

 その横浜市から協力が得られなくなるかもしれないという懸念は、1月23日に行われたフジの社員説明会で明かされていた。番組スタッフが手を挙げ、次のように質問した。

社員:今、1月の月9ドラマ「119 エマージェンシーコール」という番組を担当しています。(中略)番組は横浜市消防局の完全タイアップと特別協力をいただいて制作しておりまして、番組の中の設定も横浜市の消防局という名前を実際に使っております。活動服、ユニフォームもすべて対応してもらって使用したり、普段、ロケ場所としては使用させてもらえないような市の施設も使用させていただいて、なんとか今までやって来ております。(中略)実際、横浜市の消防局のほうに、一般回線ですけれども、市民の方からのクレームが入っているという状況があります。今後もし119番通報の緊急回線に同じようなクレームが入った場合、協力自体を中止せざるを得ないという話を受けました。これは、このドラマの企画意図と内容に照らすと当然の判断だと思います。そうなった場合、撮影はストップせざるを得なくなり、このまま回復しなければ最終回まで放送することができない状態になります。そういう状況にあることに関して、社長のお考えを伺いたい。(中略)我々に番組を続けさせてもらうための武器を、材料をください。

 これに対してフジの港浩一社長は「対応を考えます」としか答えられなかった。そうこうするうちに、クレジットから横浜市横浜市消防局の名が消えたのだ。

市長は「しっかりと注視」

 実は、この社員説明会の前日、横浜市の山中竹春市長は定例会見でこんな質問を受けていた。

記者:フジテレビと連携協定を結んで市の消防局が全面協力していると昨年発表がありました。タレントのトラブルをめぐってフジテレビが調査委員会を設置するなどの動きもありますが、市長の受け止めと、この件で何か今まで市として対応したことがあるのか、今後フジテレビに対応を求めたり、そのあたり市長のお考えをお聞かせください。

山中市長:その件については承知しておりますが、市として何か特段のアクションを起こしたということはございません。今さまざまな状況が推移していると、流動的だと思いますので、今後の状況をしっかりと注視していきたいというふうに思っています。

 注視した結果、クレジット削除という結論になったのか、果たして「119」は最終回まで放送できるのか――横浜市に聞いた。応対したのは横浜フィルムコミッションだ。

「『119』については横浜フィルムコミッションが撮影支援を行い、市議会のある市会棟が横浜市消防局の外観として使用されるとのことで横浜市会に協力を仰ぎ、同様に横浜市役所アトリムにも声がけをさせていただきました。あくまでも横浜市のPRになればとのことでしたが、今回の問題で『フジテレビに協力すべきでない』『制作費を出しているのか』といった声がありました。もちろん制作費などは出していませんが、そういった声がある以上、積極的な広報はしないほうがいいということでクレジットの削除要請をさせていただきました」

「あぶ刑事」は大歓迎

 削除要請はいつ行われたのだろう。

「1月21日です」

 となると、23日の社員説明会、その前日の市長会見よりも早いことになる。

「市長は撮影協力という内容でお答えしたのだと思います。撮影協力は今も続けているわけですから」

 ちなみに、本来23日に放送予定だった第3話は、フジのやり直し会見が10時間以上に及んだため延期となった。それが2月3日に放送されたわけだ。

 横浜フィルムコミッションは、横浜を舞台にしたさまざまなドラマや映画の撮影に協力してきた。新垣結衣主演で大ヒットした「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)や昨年公開された映画「帰ってきた あぶない刑事」などもそうだ。ダンディー鷹山(舘ひろし)とセクシー大下(柴田恭兵)が横浜狭しと暴れまわる「あぶ刑事」にクレームはなかったのだろうか。

「基本的にありません。よくよく精査すれば『街がうるさくなる』などの声もあったかもしれませんが、すごくポジティブな意見ばかりでした」

「119」のスタッフや出演者だって中居問題とは無関係だが、視聴者とは勝手なものだ。

「もちろん『119』にも『楽しみにしているドラマなので最後まで協力してあげて』という声もあるのですが……」

 では、消防局にはどんなクレームがあったのだろう。横浜市消防局の企画課に聞いた。

「スタッフの熱意は伝わっている」

「やはり『フジテレビに協力するのはいかがなものか』といった声がある一方で『ドラマを見て119番通報をどうすればいいのかわかった』という声もいただいています」

 ドラマスタッフは、119番の緊急回線にクレームが入ることを心配していたが、

「申し訳ありませんが、この件に限らず入電内容についてはお答えしていません」

 横浜消防局が協力のクレジットを削除要請したのはいつか。

「それは公表していません」

 1月20日には総務省消防庁が「119」とタイアップした約5500枚のポスターを全国の消防本部に配布する予定だったが延期している。それも影響しているのだろうか。

「消防局が全面協力したのはドラマを通じて業務内容を理解していただくためです。消防庁のポスター配布の延期より世論を考えた結果です。1月17日に行われたフジテレビの最初の会見など、毎日、情報を確認して、積極的に広報するべきではないという結論に至りました。フジの社員説明会でのドラマスタッフの熱意は報道で知りました。その熱意は伝わっていますので、最後まで協力できればいいと思っています」

 苦渋の決断だったようだ。

デイリー新潮編集部