3月20日は祝日だが…

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 あす3月20日の土曜日は「春分の日」。ただ、日曜日が祝日の場合は「振り替え休日」がある一方、土曜日の場合はないため、損をした気分の人も多いのではないでしょうか。しかし、実は過去を振り返ると「土曜日が祝日の場合も振り替え休日を」という動きが国レベルであったようです。土曜日と日曜日の扱いの違いに関する法的根拠も含めて、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

「週休1日制」時代のまま…

Q.そもそも、「祝日」はどうやって決められているのでしょうか。

佐藤さん「日本の祝日は『国民の祝日に関する法律』で定められています。祝日は日本国民がよりよき社会、より豊かな生活を築くため、国民皆で祝い、感謝し、記念する日とされており(同法1条)、休日になります(同法3条1項)。同法2条では、元日、成人の日、建国記念の日、天皇誕生日、春分の日、昭和の日、憲法記念日、みどりの日、こどもの日、海の日、山の日、敬老の日、秋分の日、スポーツの日、文化の日、勤労感謝の日という16の祝日を定めています」

Q.土曜日が祝日の場合、振り替え休日がない理由を教えてください。

佐藤さん「『国民の祝日に関する法律』では祝日が日曜日に当たる場合、その日の後において、その日に最も近い祝日でない日を休日とすると定めています(3条2項)。そのため、日曜日については振り替え休日があります。

しかし、土曜日についてはこうした定めがないため、祝日が土曜日にかぶってしまっても振り替え休日はありません。そもそも、振り替え休日の制度は1948年の『国民の祝日に関する法律』制定当時にはなく、1973年の法改正で設けられました。その当時、社会はまだ週休1日制が大勢で、日曜日のみ休むのが主流だったので、振り替え休日も日曜日とかぶった場合のみとされました。

その後、1980年ごろから、多くの企業が週休2日制を導入するようになり、2002年に公立小中高校で週休2日制(学校週5日制)が完全実施されました。こうして、社会は徐々に土曜日も休むようになっていきましたが、『国民の祝日に関する法律』の振り替え休日に関する規定は改正されていないため、土曜日が祝日の場合は振り替え休日がないのです」

Q.過去に、土曜日の場合でも振り替え休日にする動きが国レベルであったと聞きます。どうなったのでしょうか。

佐藤さん「社会に週休2日制が実質上浸透し、土曜日が休日とされることが多いことを踏まえ、民主党政権時(2009〜2012年)、土曜日が祝日と重なった場合も振り替え休日とする案が検討されていました。しかし、2012年12月の政権交代により白紙となり、こうした方向での法改正はなされないまま、今に至ります」

Q.土曜日が休日の企業に勤めている人の中には「損をした」気分の人もいるようです。やむを得ないことなのでしょうか。

佐藤さん「祝日の振り替え休日については先述した通り、法律で定められているため、土曜日が休みの企業に勤めている人が土曜と祝日が重なって休日の日数が増えなくてもやむを得ないでしょう。

法律上、一般的な企業の休日については『毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない』(労働基準法35条)と定められていますが、休日の曜日は決められていません。例えば、『水曜と日曜が休み』という人もいると思います。そのため、『国民の祝日に関する法律』が土曜日の振り替え休日を定めていないとしても、必ずしも不合理とはいえないでしょう。

なお、公務員については法律上、日曜日、土曜日、祝日、年末年始が休日とされています」

Q.土曜日が祝日の場合、企業が独自に振り替え休日を設けることはできないのでしょうか。

佐藤さん「土曜日が祝日の場合、企業として振り替え休日を設けることはできます。実際、働き方改革の一環として、祝日が土曜日と重なった場合、前日の金曜日を振り替え休日としたり、別の日に独自の振り替え休日を設定したりしている企業もあります。

きちんと休むことで英気を養い、仕事の効率が上がることはよくありますし、ワーク・ライフ・バランスが重んじられる今、各企業が独自の休日を充実させることは大切でしょう。各企業の状況に応じて、さまざまな制度を検討してみてもよいのではないでしょうか」