2日、朝鮮労働党中央委員会第7期第14回拡大会議に参加した金正恩氏(2020年7月3日付朝鮮中央通信)

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北朝鮮で2日、朝鮮労働党中央委員会第7期第14回拡大会議が行われ、金正恩党委員長の司会の下、新型コロナウイルスを巡る国家非常防疫活動などについて討議した。

金正恩氏は会議で、「われわれが世界的な保険医療危機の中でも悪性ウイルスの境内侵入を徹底的に防御し、安定した防疫形勢を維持しているのは党中央の先見の明の指導力と党中央の命令、指示に一糸乱れず動く全人民の高度の自発的一致性が獲得した誇らしい成果である」と自賛。

しかしその一方、「最近、周辺諸国と隣接地域で悪疫の再感染、再拡散の推移が持続している」としながら、「早まった防疫措置の緩和は想像することも、挽回することもできない致命的な危機を招くことになる」と警鐘を鳴らした。

「致命的な危機」に言及した金正恩氏の念頭にはおそらく、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のときのような社会の混乱があるに違いない。

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北朝鮮は現在まで国内での新型コロナウイルス感染者の発生は「ゼロ」であるとの立場を崩していないが、非公式ルートの情報に基づけば、相当数の感染者と死亡者が出ている可能性が高い

デイリーNKの内部情報筋によると、この5月末からの1ヶ月間で平壌、江原道(カンウォンド)、黄海北道(ファンヘブクト)の3つの地域だけで70人の高齢者が発熱、嘔吐、下痢など感染症が疑われる症状で、養老院などに隔離された後に死亡した。死因について現場では、パラチフスなどの細菌性感染症であるとの判断を下しているという。ただ、パラチフスと違って抗生剤を投与しても症状が改善しない患者がおり、呼吸困難を伴うケースもあることから、「コロナではないか」との疑惑が広がったとのことだ。

また、デイリーNKの別の情報筋によると、拡大会議では秘密警察である国家保衛省が金正恩氏から厳しく叱責されたという。中国との国境地帯に配置された同省の要員らが密輸業者からワイロを受け取り、違法な越境を見逃しているために、防疫のための国境封鎖が意味をなさないとの趣旨だったようだ。

さらに、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が8日、平安北道の情報筋の話として報じたところでは、拡大会議では国家非常防疫指揮部の幹部数人が、やはり国境管理上の問題で責任を取らされ、解任されたという。

北朝鮮の防疫対策の実態は、金正恩氏が拡大会議で語った「党中央の命令、指示に一糸乱れず動く全人民の高度の自発的一致性が獲得した誇らしい成果」とは、ほど遠いものなのかもしれない。