東京・上野といえば、アメ横や動物園がシンボルだろうか。JR上野駅は交通アクセスも良く、周辺には企業や百貨店、飲食店が密集し、繁華街という言葉がぴったりの地域である。

だが、進む道を変えると、街の様相も変わる。筆者が足を運んだのは、東上野である。日曜日の昼下がりだというのに、驚くほど人が少ない。人よりも、目に付くのは、大手パチンコ・パチスロメーカーのビルの数の多さだ。

そして、その一角に「東上野コリアンタウン」があった。同じコリアンタウンでも、新大久保のような流行感はゼロ。K-POPの音楽は流れていない。いわゆる昔の匂いがする場所だ。


「東上野コリアンタウン」の路地裏(画像は、2019年12月15日、編集部撮影、以下同)

その歴史は1948年までさかのぼる


人、人、人

JR上野駅は騒がしい。中央口から、上野公園に向かう人や、上野御徒町中央通りからアメ横に足を運ぶ人でごったがえしている。けたたましい消防車のサイレンや、第3日曜日に駅前にのぼりを掲げる街宣車。

だが目当ての場所はここではない。めちゃくちゃ旨いキムチが、上野のどこかにあると、昔親から聞いたことがある。場所は東上野だ。JR御徒町駅と上野駅間の昭和通りを曲がった所にあるそうで...。ぶらぶら歩いてみると、突然パチンコ・パチスロメーカーの会社のロゴが見えてきた。


ニューギンや平和、三共のロゴが...!

だが全くコリアンタウンの匂いはしない。歩く速度を速めると、SANYOや高尾、Daiichi、そして北電子が。


「海物語」に「ひぐらしのなく頃に」...。そしてピエロまで!

ピエロがトレードマーク。スロットのジャグラーで名前を知られる「北電子」を通り過ぎると、韓国語が掲げられたお店が。路地裏には、しっかりと「東上野コリアンタウン」と、提灯がぶら下がっていた。


古めかしい...

そうか、ここに旨いキムチがあるのか。「創業60年」、「伝統の味」という言葉に目を奪われ、「共栄」というキムチ店を物色してみることに。


人が多くなってきた

ちらちらと様子をうかがっていると、店員のおばさんが、「誰用に買うんですか」と聞いてきた。話を進めながら、「ここらへん一帯はどんな町なのですか」と聞くと、

「ここはね、東上野コリアンタウンですよ。(歴史が)長いんです」

と話してくれた。


キムチは白菜だけではない。トマトやネギキムチまで

一言だけ述べた後、「共栄キムチ」のおばさんは忙しそうに、ほかの客の対応に追われてしまった。

「ネギ、200グラムありますか」

と、町に慣れていそうな客が、目当てのキムチの名前を口にし、サッと購入。キムチというと、白菜のイメージだったが、前提が覆された。

「古くから馴染みのある人、古い人がよく買い物に来るんですよ。コリアンタウンといっても、とにかくここは主旨が違います。生活の場です。観光客はなかなかこないですね。キムチおいしかったらまた来てください」


日本の甘いキムチと違って、酸味と辛さが強かった。美味しいぞ

「東上野コリアンタウン」とは、東京都内で最も長い歴史を持つコリアンタウンである。公式サイトもあり、こう記述されている。

「その発祥は戦後間もない混乱期である昭和23年(1948年)までさかのぼり、『御徒町商店街』より枝分かれし『上野親善マーケット』として現在の場所に、焼肉店・キムチ店・肉店・民族衣装店等が集まったことに端を発しております。

その後約60年という長い間『本物の味・質』をみなさまに提供し続ける事によって、今現在も東上野の町を大いに賑わしております」

たしかに、見渡すと沢山の韓国料理店が目に付く。民族衣装店は見当たらなかったものの...。


こちらにもキムチのお店


なにやら会談が行われそうなお店


上野肉店には、牛や豚の内臓がごろん


焼肉、焼肉、焼肉...

静けさ漂う一角にどっしりと構えた「東上野コリアンタウン」。

韓国通にはたまらない雰囲気であること間違いなしだった。