【ワインvsビール・蒸留酒】死亡リスクに明暗…18万7000人・21年追跡で分かった「量」の境界線を医師が解説
晩酌のグラス1杯のワインに、罪悪感を覚えたことはありませんか? ノルウェー公衆衛生研究所が発表した大規模調査の結果では、お酒の種類や量によって死亡率に差が見られ、特に少量のワインを飲む人は死亡率が低い傾向にあることが分かりました。今回はこの研究内容と、健康的なお酒との付き合い方について、中路先生に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
ノルウェー公衆衛生研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。
中路先生
ノルウェー公衆衛生研究所の研究員らは、心血管疾患やがんのない16歳から99歳の男女18万7294人を平均21年間追跡し、ワイン、ビール、蒸留酒の摂取量と死亡率との関係を調べました。追跡期間中に1万5642人が死亡。非飲酒者と比べ、14日間の飲酒量が1~9杯ではハザード比(死亡リスクの相対的な高さを示す指標)が0.91とやや低く、10~19杯では1.01でほぼ同程度、20杯以上では1.44と明らかに高くなりました。虚血性心疾患(心臓の血管が詰まる病気)による死亡は少量の飲酒でやや低下しましたが、アルコール関連疾患による死亡リスクは飲酒量が増えるほど大きく上昇しました。ワインを少量摂取していた人は、少量のビールや蒸留酒を併せて飲んでいるかどうかにかかわらず死亡率が低い傾向にあり、ワインを含まない組み合わせでは非飲酒者との差はほとんど見られませんでした。研究員らは、少量のワイン摂取が死亡率の低さと関連すると結論づけています。適切な飲酒量の目安とは?
編集部
今回のテーマに関連する、適切な飲酒量の目安について教えてください。
中路先生
厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として、1日平均で純アルコール約20g程度(ビール中瓶1本や日本酒1合にあたる量)を目安として示しています。これは通常のアルコール代謝能力を持つ人に向けた目安です。ただし女性は男性より少ない量が適当とされます。少量の飲酒で顔が赤くなるなど代謝能力が低い人や65歳以上の高齢者はさらに少ない量が適当とされ、アルコール依存症の人は適切な支援の下で完全断酒が必要です。また、普段飲酒しない人に新たに飲酒を勧めるものではありません。この目安はあくまで健康リスクを抑えるための参考値であり、体質や体調によって適量は異なります。自身の状態を踏まえ、適量を守って無理のないお酒との付き合い方を心がけましょう。内容への受け止めは?
編集部
ノルウェー公衆衛生研究所の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
本研究は大規模かつ長期にわたる追跡調査であり、飲酒と死亡リスクの関係を考える上で大変有用な報告と受け止めています。ただし、あくまで観察研究であり、「ワインを飲むと長生きする」というような因果関係を証明したものではない点には注意が必要と考えます。むしろ、少量のワインを楽しむ人には、食事とともにゆっくり飲む、休肝日を設けるといった生活習慣が身についている場合が多いと推察されます。そうした背景要因が、死亡率の低さに影響している可能性も考えられます。そのため、「ワインそのものが体によい」と単純に捉えるのではなく、「節度ある飲み方ができる人は健康を保ちやすい」と読み解くのが自然でしょう。日常の診療でも、「少量のお酒は体によいと聞いたので」と話す患者さんに少なからず出会います。今回の結果は一見そうした印象を後押しするようにも見えますが、私がとりわけ注目すべきだと考えるのは、20杯以上でハザード比が1.44まで上昇している点です。少量域での差はわずかである一方、摂取量が増えるとリスクの上昇は明確であり、酒の種類にかかわらず、特にアルコール関連疾患による死亡リスクは確実に高まると考えます。
つまり、この研究から受け取るべきメッセージは「種類よりもまず量」だと考えています。ワインを選べば安心というわけではなく、自分にとっての適量を知り、飲む前に「今日は何杯まで」と決めておく、水と交互に飲む、週に数日は飲まない休肝日をつくる、といった工夫が重要です。この結果を、お酒を飲まない人に飲酒を勧める根拠とすべきではないという点も改めて認識しておきたいと思います。研究結果を「安心材料」としてではなく、自身の「飲み方を見直すきっかけ」として受け止めてもらえればと思います。
編集部まとめ
今回の研究では、少量の飲酒、特にワインを日常的に楽しむ習慣が、死亡リスクの低さと関連することが分かりました。とはいえ、お酒は量を守ってこそ健康に生かせるものです。厚生労働省が目安とする1日純アルコール約20gを意識しながら、自身の体調や年齢に合わせて、無理のない範囲でお酒と付き合っていきましょう。

