親の老後は“自分の予行演習”　認知症介護で見えた家族コミュニケーション術

YouTubeチャンネル「じたばたシニアライフ_普通の夫婦と猫の暮らし」が公開した動画では、夫婦が認知症の親を介護するなかで経験した紆余曲折を語り、40〜50代から備えておきたいポイントを具体的に紹介している。

動画では、親の単身生活が難しくなったと感じた初期サイン、近隣トラブルや詐欺被害、そして最終的に同居が困難だと判断するに至るまでの経緯がつぶさに語られる。

「えっ、認知症かもしれない？」と夫が感じたのは、それまでしっかりしていた母親の物忘れが増え、味の好みが急に変わり、作り置きの食事を食べ残すようになったことがきっかけだったという。火災リスクを考慮してガスコンロをIHに替えるなどの対策を講じたものの、症状の進行とともに自己管理は徐々に難しくなっていった。

さらに近隣住民とのトラブルも発生した。民生委員からは、母親が「火つけてやるだに」と怒鳴ったとの連絡が入り、自宅の庭にごみを投げ込まれたと訴えるなど、地域での孤立が深まるにつれて問題行動が増えたという。

対策として夫婦は郵便物の整理、買い物の代行、栄養バランスを考慮した作り置きの提供などを実施した。特に「こんなに大きいお弁当買ってきてくれたの？」と母親が大喜びする様子から、手作りよりも“買ってきてもらった特別感”がうれしいという意外な発見があった。

一方で、屋根の修理やオレンジの購入をめぐる悪質な勧誘にも遭い、母親は被害を自覚しないまま支払ってしまったことも明かされた。

夫婦は、住み慣れた環境を離れることによる「リロケーション・ダメージ」を懸念し、安易な同居を避けていた。しかし台風の日、物置小屋が飛ばされないよう縛り付けに向かった際に母親がけがを負ったことを機に、一人暮らしの限界を痛感。専門クリニックを受診して認知症と診断された後は、介護保険サービスを利用し、デイサービス専用施設に通うことで生活の質が改善したという。

動画では、「昔から子どもと親が同居するのが当たり前」という風潮や「嫁が介護を担うべき」といった旧来の価値観に触れつつ、親の介護は「自分の老後の予行演習になる」という前向きな視点を提示。「ちょっとおかしい」と感じた時点での早めの受診と、介護保険の枠を超えた家族や地域の支援者の存在が重要だと強調している。

最後に夫婦は、何でも話し合える信頼関係を築くこと、そして「人の力を借りる」ことの大切さを訴え、「介護は一人では難しい」と結んでいる。