【上海在住のえいちゃん】”りりちゃん超え”の「結婚詐欺」で数億円を荒稼ぎ…中国で相次ぐ「頂き女子」事件、国を揺るがす社会現象に
本稿では中国の「頂き女子」事情を解説している。前編では農村部において女性による結婚詐欺が繰り返される実情を解説した。後編では代表的な頂き女子事件と、その影響で生まれた大ヒットゲームを紹介する。
前編記事『中国で話題の"結婚詐欺の街"「花果園」…数百の婚活業者が男性から全財産を奪う「頂き女子」ビジネスが急成長』より続く。
頂き女子事件の元祖:翟欣欣事件
中国における頂き女子の元祖ともいえるのが「翟欣欣(チャイ・シンシン)」だ。
これは中国で大きな話題を呼んだ結婚詐欺事件で、現地メディアである極目新聞によると、犯人である翟欣欣は婚姻関係を利用した高額な金銭詐取を繰り返した。
被害者は少なくとも4名で、この事件は犯人が短期間の結婚・離婚を繰り返すなかで相手の高額な財産を搾取したのが特徴だ。
第1回:結婚期間70日、現金20万元+車30万元
第2回:結婚期間90日、BMW+現金750万元
第3回:結婚期間非公表、北京の高級別荘
第4回:結婚期間41日、起業家の全資産を相続
このように、犯人は短期的な結婚を繰り返すことで、合法を装いながら高額な資産を収奪していった。
4回目の結婚では、2017年に精神的に追い詰められた被害者が自殺に至り、社会的非難が爆発的に高まった。被害総額は少なくとも数千万元(数億円)規模で、本人は2023年に逮捕・起訴され、2025年9月には懲役12年の判決が下された。
社会現象となった「胖猫事件」
胖猫(パンマオ)事件は、2024年に中国で大規模な社会問題となった事件である。
ことの始まりは2024年4月、湖南省出身の21歳の男性(通称:胖猫)が、重慶長江大橋から飛び降りて自ら命を絶ったことにある。
この事件が及ぼした影響は甚大で、胖猫を追悼するために現場の橋へ8000食ものフードデリバリーが注文されるなど過熱化し、2025年3月には中国中央テレビ(CCTV)が特別番組を放映して鎮静化を図るほどの事態に発展した。
彼はチャットアプリで知り合った27歳の重慶出身の女性と交際しており、遠距離恋愛を嫌がる彼女のために湖南から重慶へ移住していた。しかし同年3月、二人の関係に亀裂が生じ、胖猫は「私たちはもう終わりだ」という最後のメッセージを送った後、橋から身を投げた。
胖猫の死後、彼の姉がSNS上で弟のチャット履歴や送金記録を公開し、「女性が恋愛を名目に弟を騙し、金銭を搾取した」と告発。この投稿は瞬く間に拡散され、姉のSNSアカウントのフォロワー数はわずか10〜20日の間に263人から290万人以上へと急増した。
その結果、交際相手の女性の個人情報が晒されるなど、大規模なネットリンチを引き起こした。さらに、捜査を担当した警察官までもが「女性と癒着している」といったデマを流され、バッシングの対象となった。
しかし、警察の捜査によって、事件に至るまでの金銭のやり取りは双方向であり、一方的な詐欺行為は成立していないことが判明する。
また、彼の姉は複数人に投稿を代筆させるなどして、意図的に世論を誘導していたことも発覚。インフルエンサー運営会社が関与し、短編動画やライブ配信を通じて追悼グッズを販売し、収益化を図っていた実態も明らかになった。
弟の死を口実に交際相手への報復を試み、大規模な世論操作を通じて巨額のインプレッションと利益を得る。
この事件は単なる「頂き女子」事件の枠を超え、SNS時代における男女対立の先鋭化、悲劇のコンテンツ化を映し出した象徴的な事例と言えるだろう。
実話をもとにした「頂き女子ゲーム」が大ヒット
2025年6月にSTEAMでリリースされた『頂き女子ゲーム(捞女游戏)』は、発表と同時にSNS上で大きな話題となり、瞬く間に中国市場の売り上げトップとなった。
このゲームが大ヒットした理由の一つは、実際に発生した「頂き女子事件」をモチーフにしている点にある。
ドラマ仕立ての本作でプレイヤーが操作するのは、大学を卒業したばかりの男性主人公だ。自身と親の生活を支えるため、昼は会社員、夜はフードデリバリーと、まさに昼夜を問わず働き詰めの生活を送っている。
そんな彼は偶然出会った美しい女性に惹かれ、彼女に勧められるままライブ配信に通ううちに恋心を募らせていく。次第にのめり込んでいった彼は、「母が重病にかかった」といった彼女の言葉を信じ、多額の投げ銭やプレゼントを贈るようになる。そして最終的には、祖父の遺産まですべて失い、彼女も姿を消してしまう。
劇中に登場する頂き女子「陳欣欣」のモチーフは、先述した中国の頂き女子の元祖とも言える「翟欣欣」である。また、主人公が配信を視聴する際に使うアカウント名「笨猫(愚かな猫)」は、二つ目の事例である「胖猫事件」を想起させる。
前半では頂き女子に弄ばれ、資産を騙し取られた主人公だったが、後半では一転して復讐劇が描かれる。金も心も奪われ一度はどん底に落ちた主人公は、その後起業家として成功。かつて自分がハメられたのと同じ手口を使い、「反・頂き女子」としての復讐を開始するのだ。
本作はあまりの社会的反響の大きさから、タイトルを『頂き女子ゲーム(捞女游戏)』から『感情詐欺シミュレーション(情感反诈模拟器)』へと変更を余儀なくされたが、現在もSteamで購入可能だ。
中国社会における過酷な頂き女子事情と、その裏に潜む激しい男女対立。リアルな現代中国の一面を体験したい方は、このゲームを手に取ってみてはいかがだろうか。
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