【安沼 保夫】「LUUPは危険な乗り物ではない」…元警察官が人生初めての乗車で感じた「高い利便性」
LUUPの件で元同僚に連絡→ブロック
近所の駐車場内に“緑の電動キックボード”のポートがあることは知っている。しかし、そこに置いてある乗り物を利用している人は見かけたことがない。初めて実物を目撃したのは、確か5年前の原宿だ。ミニスカートの女性が颯爽と乗りこなしているのを見て、なんだかオシャレな乗り物だなあという印象を受けたことを覚えている。
はっきり言って、「LUUP」という乗り物に対して私はそのくらいの印象しか持ったことがない。
そんな私に、「元警察官はLUUPをどう思っているのか」というテーマで記事を執筆してほしいと依頼が来たので驚いた。
元警察官のコメンテーターやYouTuberはたくさんいる。どの方も刑事や公安、白バイなどの輝かしい経歴の持ち主ばかりで、階級も警部補以上の方が多い印象だ。私のような特に目立った実績もなく、ノンキャリで階級も巡査部長止まりの元警察官に、このような依頼をいただけるのは本当にありがたい。
「そもそもお前誰やねん」というツッコミが聞こえてきそうなので自己紹介をさせていただく。
私は大学卒業後、22歳で警察官になった。交番や機動隊、留置係を中心に約20年勤めたものの、パワハラが原因で退職し、現在は別の公務員として働いている。
「警察の不条理を何としてでも世に知らしめたい」
この一心でnote記事から出版までこぎつけたのが、安沼保夫のペンネームで書いた『警察官のこのこ日記』(三五館シンシャ)だ。
大きな話題……とまではいかなかったが、いくつかの媒体で取り上げていただき、ネット記事を寄稿するようになった。提案する記事は、警察の構造的問題やパワハラ関連が多い。警察組織の問題を改善したいのと、かつての私のようにパワハラで悩んでいる人の応援になればと思ったからだ。
しかし、冒頭でも述べた通り、私とLUUPの関わり合いは極めて薄い。乗ったこともなければ、警察官時代に取り締まったこともない。元同僚とも疎遠になっているので現場の声も聞けない。
ちなみに元同僚の何人かに意見を求めてみたが、当たり障りのない、国会答弁のような回答ばかりだった。記事にされることを警戒しているのだろう。返信をくれないどころか、ブロックされたりもした(笑)。
私の出版が、ある種の裏切り行為と思われている節もある。それも仕方がない。
人生初のLUUP乗車を決意
手始めにLUUPに対するイメージ調査のため、高校や大学の同級生らにグループLINEでアンケートをとってみた。
回答の選択肢は「よく使う」「たまに使う」「使ったことはある」「使ったことはないが興味はある」「使ったこともないし使うつもりもない」「むしろ嫌悪感」「何それ?」の7項目。一番多かったのは「むしろ嫌悪感」で、「早急に廃止すべき」という選択肢をわざわざ作って回答した人もいた。ちなみに使ったことのある人間はひとりだけであった。
母校の50名程度の学生グループにも、「早急に廃止すべき」の項目を足して同様のアンケートを依頼したところ、「使ったことはないが興味はある」が1位で、「使ったこともないし使うつもりもない」がほぼ同数で2位。「使ったことはある」は2名のみで、「むしろ嫌悪感」、「早急に廃止すべき」、「何それ?」の回答もそれぞれ数名いた。
LUUPについてYouTubeで検索すると、肯定派より否定派の動画のほうが多く、後者のほうが再生数も伸びているようだ。特に、LUUPの違反者を晒すようなショート動画が目についた。例えば、逆走したり歩道を通行したりする利用者や、違反を注意されて逆ギレする利用者が槍玉に上がっていた。
さらには、今年6月に発生したLUUP利用者の死亡事故が悪評に拍車をかけている。
いずれにせよ、LUUPの世間的な評価はあまり芳しくないようだ。
しかし、ふと思った。LUUPという乗り物は本当に危険なのだろうか?
確かに、ショート動画で晒されていたLUUP利用者の交通違反はひどかった。一方で、世間には交通ルールを守らない自転車、いわゆる“チャリカス”も多数いる。というか、個人的な感覚ではそちらのほうがよっぽど危ない気がする。
一時期、娘の小学校登校に通勤がてら付き添っていたことがあり、そのときに一時停止無視をしたり、児童の横スレスレを猛スピードで走行したりする危険な自転車に何度も遭遇し、怒りと不安を覚えた。
依頼を受けたのが金曜日の夜。翌土曜の朝に思いたって、LUUPに乗ってみることにした。物事に対する批評、特に批判をするときには、対象がどんなものかを知っておく必要があるからだ。
交通ルールテストを受けてみた
電動キックボードは2023年7月の道路交通法改正により、一定基準を満たしたものは「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」に分類されるようになった。16歳以上は運転免許不要、ヘルメット着用は努力義務で公道走行が可能となっている。
こうした法律のもと、LUUPを利用するには身分証の登録と交通ルールテストの全問正解が必須だ。LUUPアプリをダウンロードして、身分証を撮影する。身分証は運転免許証やマイナンバーカード、保険証から選択。電動キックボードではなく電動自転車のみの利用なら、身分証は不要らしい。
そして交通ルールテストは14問全てに正解しなくてはならない。ちなみに昨年5月までは11問だったそうだが、変更されたようだ。元警察官の知識を総動員してテストに挑戦した結果、2問不正解だった。不覚。再チャレンジにて合格。
ちなみに間違えた問題は、ひとつは完全な勘違いによるもので、もうひとつは右折方法に関する問題であった。LUUPも、原付のように三車線以上の道路を右折する場合にのみ、二段階右折をするものと思い込んでいたが、常に二段階右折をしなくてはならないようだ。自転車と同じである。
これで乗車準備は完了。ポートのある近所の駐車場へ向かう。
どちらの足を前にするかで迷ったが、スノーボードでは左足が前のレギュラースタンスだったことを思い出し、左足を前にして乗ったらしっくりきた。
後ろ足で蹴って助走をつけ、右ハンドルに付いているレバーを親指で下げて加速。原付のイメージでグリップを手前に回すものと思っていたが、それだと押して歩いているときに誤って加速する恐れがあるので、こちらの加速方式のほうが安全だと感じた。
元警察官がLUUPに乗ってみた
駐車場内で慣らし運転をした後、公道へ出る。公道といっても一車線のみの市道で、休日の早朝ということもあり、交通量は少ない。思い切ってフル加速すると上体がのけぞったので、やや前傾姿勢をとる。慣れてくるとスノーボードのような疾走感を覚えた。とはいえ、最高時速は20キロまでしか出ないようになっている。
他方、「いい歳したおっさんがLUUPなんて乗ってんじゃねえよ」と思われていないだろうか。何となく周囲の目が気になる。絶対誰も気にしてないだろうけど。
裏路地を走行中、向こうからワゴン車がきた。ゆっくり走行すれば問題なくすれ違えると思ったが、念のため左端に停車し、通過を待つことにした。すれ違いざま、ワゴン車の運転手が怪訝な表情でこちらを見た……気がした。
それから近所を一周し、走行距離約1km、10分足らずの初ライドは終わった。
自転車の小回りと原付の加速感を掛け合わせた便利な乗り物で、ゆっくり走ればそれほど危険でもない。これが、LUUPに初めて乗ってみた元警察官の率直な感想だ。
しかし、使い方によっては、自転車と原付の危険性を煮詰めた乗り物にもなり得る。
キックボードは、本来公道での使用が制限されている玩具の扱いであった。それが、時速20kmまでしか出ないとはいえ、いまや指先ひとつで一気に加速できる乗り物になっている。原付に乗るときのように免許の交付は不要で、アプリのテストさえクリアすれば、自転車のように公道を乗り回すことが可能だ。
LUUPの初回登録特典として、どうやら最初の10日間は30分以内の乗車が何度でも無料のようだ。うまく使えば実費はかからない。
残りの期間でLUUPを乗り倒し、さらに安全性を確かめてみることにした。
つづく記事〈なぜ乗ったこともない人間がLUUPを叩くのか?…実際に乗り倒した元警察官が抱く「世間への大きな違和感」〉で、詳しく報告する。

