海外ひとり暮らし、賃貸の備品が壊れて困惑。遠慮する日本人とスペイン人の「驚きの対応」の違い
53歳でスペインに単身留学し、現在はジョージアに滞在中のRitaさん(56歳)。スペインで暮らすようになってから、人と話すなかで、「あ、ここ、日本と全然違うな」と感じる場面がいくつもあったそう。今回はそのなかから、とくに印象に残っている価値観の違い3つをご紹介します。どちらが正しいかではなく、「見えている景色の違い」として、つづってくれました。

壊れたポットと遠慮の話

あるとき、賃貸部屋のポットが壊れました。オーナーに連絡すると、「今すぐ行けないから、近くで買っていいよ。領収証をもらってくれたらあとで返すから」と言われました。
でも私は、どのポットを選べばいいのか分からないし、高すぎたらどう思われるだろう、と気になったし、そもそも、物件の備品を自分で買うこと自体に、だいぶ気が引けました。
結局、オーナーが買ってきてくれるまで待つことにしました。
その話をスペイン人の友人にすると、「わ、それって日本人らしい!」「遠慮しすぎだよ。毎日不便になるじゃない」「買っていいって言われたら、すぐ買うよ」「なにを買えばいいか分からなかったら、壊れたポットを持って行って“これと同じの”って言えばいい」
と、次々に返ってきて、私の行動にとても驚いた様子でした。なるほど…。
相手の気持ちを先回りして考え、行動が後回しになる日本人と、直面している不便をまず解消しようと行動するスペイン人。どちらも、その国なりの合理性なのだと思います。
「連絡先を交換する」意味は国によって違う

もう1つ、印象的だったのは連絡先の交換についてです。
スペイン人の知人が日本を旅行した際、交流会などでLINEなどの連絡先を100人以上と交換したそう。けれど、実際に連絡が来たのはたった3人だけだったのです。
「どういうこと? なんのために交換したの?」と、とても戸惑っていました。
たてまえ、という言葉は知っているけれど、それなら最初から交換しなければいいのに、と。
海外では、連絡先を交換する=友達になる、という感覚が強く、続けるつもりがなければそもそも交換しないことが多いようです。
さらに知人は、「この100人以上の連絡先をいつ消したらいいのかもいまだに分からない」と、困ったように言っていました。
その話を聞きながら、私は内心「ああ、日本ではありえそうだな」と思ってしまいました。でも、だからといって、うまく説明できる言葉も見つからず、私は「気を悪くしないで…」としか言えませんでした。
ただ、ふと考えたのです。もし私が海外で、100人と連絡先を交換したらどうだろう、と。
きっと私は、「わあ、友達ができた!」「カフェ仲間が増えるかも!」「ちょっと忙しくなっちゃうかも!」なんて、うれしくなってしまう気がします。
「連絡先を交換しよう」というひと言に、それぞれが込めている意味は、国や文化によって、ずいぶん違うのだと感じました。
鍵を預けるという「信頼」

そして最後にもう1つ。とても印象に残っている出来事があります。
スペインで住まいがすぐに決まらなかったときのことです。
「2週間旅行に行くから、その間うちに泊まっていいよ」と、鍵ごと部屋を貸してくれた知人がいました。本当にありがたい申し出でした。
同時に、あまりにもあっさりと鍵を渡してくれたことにとても驚き、そして正直、緊張もしました。信頼してもらっている分、「なにか壊してしまったらどうしよう」「汚したらどうしよう」と、普段以上に気を張って、丁寧に、丁寧に暮らしたのを覚えています。
またこれは別の友人が体験した話ですが、「1か月旅行に行くから、留守の間、3日に1回観葉植物に水をあげてほしい」と、家の鍵を預かったことがあるそうです。
留守中の家に入るという行為は、たとえ親しい友人でも、なかなかお願いしづらいことではないでしょうか。親族でもなければ、少しハードルが高いと感じる人も多いと思います。
それを友人や同僚に、さらっと任せる感覚。そこには細かい説明も、過度な心配も、疑いもありません。人との距離の近さ、そして「信じること」を前提にした、関係性の築き方を感じます。
「違い」があるからこそ、おもしろい

日本人の遠慮、慎重さ、気配り。スペイン人の率直さ、信頼の置き方、即決力。
どちらが優れているという話ではなく、それぞれが大切にしている場所が少し違うだけなのだと思います。
異国で暮らしていると、日本人である自分の「当たり前」が少し距離をもって見えてきます。違いに戸惑いながら、違いに救われながら、それもまた、海外で暮らすおもしろさの1つだと感じています。
