初出演・主演作で全編セリフなしの難役に挑んだエレーナ・アンが来日

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 第27回東京国際映画祭で最優秀芸術貢献賞、WOWOW賞を受賞した映画『草原の実験』で、ヒロイン役を務めたエレーナ・アンが、公開に合わせて来日。26日、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムでの初日舞台あいさつに登壇した。映画初出演にもかかわらず言葉を一切発しない難役に挑戦し、ピュアでエキゾチックなまなざしで観客を魅了した彼女は、「映画を評価していただき、皆さんにお会いできて光栄です」と笑顔で喜びを表しつつ、今後女優を続けるかについては「検討中」との意外なコメントをして、会場を驚かせた。

 韓国人の父とロシア人の母の間に、モスクワで1998年に生まれたエレーナ。父がオーディションに送った写真が、アレクサンドル・コット監督の目に留まり大抜てきとなった。撮影時は15歳だったという彼女は「セリフがないことより、まず映画に出ることが大変でした。とにかく初めてなのでいつも不安で、カメラの前で常に緊張していました」と撮影を振り返る。

 続けて彼女は「わたしの演技が、皆さんに気に入ってもらえるか心配でしたが、出来上がった作品は、雰囲気やディティールなど全てにおいて大好きです。大きなスクリーンで自分を観るのは、不思議な気分ですね。この映画がたくさんの方に褒めていただき、とてもいい気分です」とにっこり。幸運なスタートを切った彼女に「女優としての今後」に関して質問が出ると「全て幸運にもたまたま起こったこと。今は(ソウルに住まいが移り、進学するため)韓国語の勉強をしたい。演技の勉強も検討したいですが」と控えめな答え。「ぜひ女優を続けてください、またスクリーンでお会いしたいです」と進行役がコメントすると、会場からも大きな拍手が起こっていた。

 本作は、1949年に旧ソ連のセミパラチンスク(現在のカザフスタン共和国)で行われた原爆実験をモチーフに、少女と2人の青年の三角関係を描くラブストーリー。アンジェイ・ワイダのもとで映画を学んだ、『ブレスト要塞大攻防戦』などのコット監督が、雄大な草原を舞台に、若者の恋愛模様と社会的メッセージが混然(こんぜん)となった衝撃の人間ドラマを幻想的に描きだす。(取材/岸田智)

映画『草原の実験』は公開中