運動量やハードワークでは、ある一定のところまでしか進めない。ロンドン五輪でもコンフェデでも、日本代表は1試合毎にハードワークできたできない繰り返していた。ロンドン五輪での準決勝のメキシコ戦では、もはや日本代表は疲労困憊状態で力尽きていた。前半30分ぐらいでもう選手は動けなくなっていた。コンフェデでは、アジア最終予選の疲労が初戦のブラジル戦では少なからずの影響を与えていたし、第3戦のメキシコ戦では第2戦のイタリア戦での疲労が出ていた。運動量やハードワークは短い期間に何試合も何試合も継続させられない。フィジカルコンディションが良ければ、という事では常勝チームにはなれない。


確かに、ロンドン五輪で準決勝まで勝ち進めたのは、コンフェデでイタリアに3点を奪う事ができたのは、運動量とハードワークによるものだったが、それに頼り過ぎてしまうと、ある一定のところまでしか進めない。将来性も高くならない。運動量とハードワークで日韓W杯では4位という成績を残した韓国の成長は止まっている。2008年のEUROではベスト4まで勝ち進んだロシアも2010年のW杯では欧州予選で敗退。2012年のEUROでもグループステージで敗退。フース・ヒディンクが残した傷跡と言っても過言ではないと思う。

他にも、マガト、ビエルサ、もしかしたらイビチャ・オシムもそうかもしれないが、運動量とハードワークに高い優先順位を置いたサッカーでの好成績は長続きしない。更に例を挙げれば、2008年のEUROでは圧倒的な運動量とハードワークでベスト8まで進出したクロアチアも、2010年のW杯では欧州予選で敗退し、2012年のEUROでは1勝1分1敗4得点3失点でグループステージ敗退となった。運動量とハードワークは限定的にしか使えない。運動量とハードワークに高い優先順位を置き過ぎると成長を阻害する。

従って、現在の日本代表の中盤の選手に私が求めているのは運動量やハードワークではない。もちろん、もう少しのスタミナのアップは求めているが、相手よりも2倍も3倍もハードワークする事までは求めていない。運動量とハードワークに頼り過ぎたサッカーをすれば南アフリカW杯前までの岡田ジャパンの二の舞になる。では何を求めているのか? それは守備意識と守備能力の高さ。何度も書くようだが、トップ下の選手でも状況によってはボランチのように守備をする、SHの選手でも状況によってはSBのように守備をする、まずはそういう高い守備意識。

そうするためには、確かに今以上の運動量やハードワークは必要ではあるが、しかし、だからと言って、今の2倍も3倍も運動量やハードワークが必要になる訳ではない。運動量が豊富な選手とは言えない、そして、年齢も35歳である、そういう中村俊輔という選手が実際にやっているのだから、今の日本代表の全ての選手にもできるはず。最近のサッカーではFWのパフォーマンスと中盤での守備力がチーム力の大きな鍵を握るようになっている。もしかしたら、CBの人材は世界的不足しており、そういう事も関係しているのかもしれない。

そして、次に求めているのが個における守備力の向上。日本代表の守備力の低さが個の守備力の低さに起因しているのは間違い無い。しかし、それはCBなどのDFだけに言える事ではなく、ボランチや2列目の選手にしてもそうだと言える。日本人のFWというのは守備に献身的でFWとしては守備力のある選手が多いが、なぜかMFの選手にはそういう選手が少ない。能力が攻撃に偏り過ぎていたり、守備にパワーを使うと攻撃にパワーを残せなかったり、受け身となって守る事に優れているような選手が少ない。