試合後、ポジティブに考えたいと語った中村俊輔<br />【photo by Kiminori SAWADA】

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 「ハーフタイムに、岡田さんも『ああいう形だとカウンターで0−2で終わるケースもあるけれど0−1でここに戻ってこれたことはよかった』と言っていたし、みんな別に暗い雰囲気はなかった」とこの試合で、久しぶりに先発出場を飾った内田篤人が振り返る。

 「先制すること」を重要なポイントとして挑んだオマーン戦だったが、前半12分右サイドからのFKのこぼれ球から打ったムハマドのシュートから失点してしまった日本。「落胆するとかそういうことは全くなかった」と中村俊輔は語る。

 先に失点することは予想としては最悪の展開と言ってもいい。しかし、そういう状況でも前線にロングボールを蹴るようなこともなく、最後までパスを繋いでいくという日本のサッカーを貫き通した。勝ち点「3」を得ることはできなかったが、攻撃の組み立てをしっかり行ったことは評価できる。同点に追いついた要因は、ハーフタイムに監督含め選手たちが、試合をポジティブに捕らえ、後半に挑めたことだと思う。

 17時15分キックオフ。日没まで1時間余りという時間だったが、この日の強い日差しがさんさんと照り続けている。キックオフ時のプレス席の気温は35度を上回る程度だったが、試合が行なわれたスタジアムは、スタンドが低く、ピッチ上に影がほとんど無い。昨日の公式練習までの間、日陰のグラウンドでトレーニングを行なっていた日本の選手にとって、あの暑さは尋常ではなかったようだ。昨年のアジアカップを経験していない闘莉王は「考えられないくらいの暑さだった」と言い、オマーン入り後、「去年のアジアカップを経験しているから」と余裕を見せていた中村俊も「アジアカップのベトナム以上だった」と試合後語った。

 そして、迎えた後半。日本は遠藤が中盤の底でバランスを取っていた。そして、「久しぶりの試合だったし、90分持つか心配だったから、前半は抑えていた。でもスコアも走らなくちゃいけないスコアだったし、僕は怪我で長い間休んでいたからね。なんとかしたかった。走れるところまで走ろうと決めた。まあ、結果最後にはきちゃいましたけど」という内田が、何度も右サイドの高い位置からクロスを上げる。

 さらにもう一人、後半から明らかに激変した男がいる。そう、松井大輔だ。後半開始早々から、自身で仕掛けるプレーが増えた。「前半は、中盤で僕が死んでいたので、後半は積極的に中へ行こうとした。そこからリズムがつかめた。前半よりも後半のほうが良さが出た。天候が変わり涼しくなったので、動きやすくなった」と振り返る。

 後半8分、長谷部からのパスを受けた玉田が、「良いボールが入り、仕かければ何か起きるかと思った」とドリブル突破、相手のファールを誘いPKを得る。キッカーは遠藤。お得意の蹴り方で、ゴール右へボールを沈め同点に追いついた。

 「俊が蹴るのかなと思っていたけど、ボンバー(中澤)が、『ヤットが蹴れ』と言っていたから」と遠藤。中村は「GKが僕のことを研究しているという新聞記事を読んでいたし、ヤットのことは知らないと思ったから、ヤットが蹴ったほうが効果的だと思った」と話している。

 しかし、その5分後、今度は闘莉王がファールを冒し与えてしまったPKを今度は楢崎がセーブし、チームを救った。「自分がチームに貢献できるのがPKだった。自分の力を証明できる場面でもあったから、集中した」と、今季Jリーグで2本のPKをすべて止めている守護神は、PK以外でも相手の決定機を止めており、まさに大車輪の活躍だ。

 後半28分にゴール前の混戦で、相手GKを蹴った大久保と、松井を突き飛ばしたアルナウフリが共に退場。その後は、お互いに好機を作りながらも、追加点を奪うことなく、試合は1−1で終了した。