子供が学校に行かないとき、親はどうすればいのか。愛情がある家族だからこそ、フラットに見られなくなるのは当然だという。元中学校教員のやんばる先生こと水野孝哉さんが書いた『15歳から身につけたい 「あえてひとり」を選べる力』(KADOKAWA)より、やんばる先生と生徒のジュンとの対話形式でお届けする――。
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tatyana_tomsickova

■不登校の裏に説明のつかない葛藤や恐怖

ジュン:先生、僕、弟がいるんですけど、ここ1カ月ぐらい学校に行ってないんです。親は若干パニックで。

でも、本人は部屋でゲームをしたり、意外とけろっとしてて。このままでいいわけないんですけど、学校の話をしようとすると黙っちゃうんですよね。こういう場合、どうしたらいいんでしょう。何かしてあげられることってありますか?

やんばる先生:うん、それは、ジュンも親御さんもきっとすごく心配だよね。不登校って、「負の連鎖」になって、時間が経てば経つほど学校に行きづらくなるっていうリアルが、まずあると思う。

1日休むくらいならいいけど、2日、3日、1週間……と時間が経つと教室の空気が変わっていって、本人にとってはそれがものすごいプレッシャーになる。周りの子もどうしたらいいかわからないし、先生も悩む。そういったとんでもなくハードルが高い状況になってるっていうことを理解してあげることが先決かな。

家にいるときはけっこう普通に見えても、本人の中では説明のつかない葛藤や恐怖がうず巻いている状態なんだよ。まずは、その状況を理解する。

ジュン:うーん……。弟がオンラインゲームで仲間と盛り上がってるのを見ると、「サボってるだけじゃん」とか「行けば?」って思っちゃうんですけど……。

■学校は復帰のハードルが異常に高い

やんばる先生:悩んでまったく動けなくなる子もいれば、心にフタをして「学校なんか行かなくてよくね?」って開き直る子もいる。ジュンの弟さんは後者かな。どちらの場合でも、急に登校できるようにはならないから、もし家族だけで難しかったら、外部の力を借りることも必要だと思う。

ジュン:外部? たとえばどんなところですか?

やんばる先生:公的機関の無料相談窓口やカウンセラーなど、専門機関だね。なぜなら、不登校の理由はケースバイケースすぎて、家族だけでは捉えきれないから。たとえば、不登校の子には発達障害のあるケースも多い。

本人も、なぜ行けないのかわからない、行きたくない理由もわからないときに、専門家から意見をもらうことで解決策が見えてくることがある。

そもそも、40人もの同年代を集めて、授業を長時間受けさせる学校という場所自体、ある種の「いびつな場所」なんだよ。だからそこに合わない人間がいるのは、ごく自然なこと。

「発達障害」って、「障害」という言葉がついちゃっているけどそれは“欠陥”ではなくて、たまたま「ある傾向がある人」が「ある傾向の場所」に合わないというだけ。客観的な視点からそれがわかれば、どうすれば本人が生きやすいのか、ベストな教育を受けられるのかが見えてくるんじゃないかな。

■発達障害は0か1ではない

ジュン:たしかに、家族だけだとドツボにハマっちゃうことはありそうですね。

やんばる先生:家族っていろいろな要因がからむから、フラットに見てあげることが意外と難しい。親御さんは、愛情と責任感ゆえに、「なんでうちの子はこうなんだろう……」って最初から否定的に見てしまうこともある。

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でも「否定」という色眼鏡をかけて見ていたら現実を正しく捉えられない。専門家は、そういうこり固まったメガネをはずしてフラットに見てくれる。先入観なく分析してくれるプロだと思うよ。

ジュン:うちの弟、充電したらそのうち学校に行くようになるだろうって思ってたんですけど、そういう理由が隠れている場合もあるんですね。

やんばる先生:みんながみんなそうではないけどね。ちなみに発達障害って、今は「障害がある/ない」ではなく、「そういう傾向が強い/弱い」っていう、「スペクトラム」という考え方が広まってきてる。0か1かじゃないってことだね。

口で言ってもわからない子が、図で見せたら速攻でわかるんだったら、「言語情報より視覚情報に強いという特性がある」とわかる。特性を理解すれば、見当違いな努力を強要したり、叱ったりすることは避けられるよね。

■メガネをかけ直すためにプロの目が必要

ジュン:うちの弟も、本人も言葉にできないような引っかかりがあるのかも……と思いました。でも先生、もし不登校がこのまま長く続いちゃったら、どうすればいいんでしょうか。

水野孝哉『15歳から身につけたい 「あえてひとり」を選べる力』(KADOKAWA

やんばる先生:自力での復帰は、あまり期待しない方がいいと思う。急に学校に行くのは、3点しか取れない子に「明日100点取れ」と言うようなものだから。大事なのは、「スモールステップの階段」を用意してあげること。

4点、5点にするにはどうすればいいか。その戦略を立てるために、外部組織と「戦略会議」をするつもりで相談しに行ってほしい。

ジュン:プロと相談して、一歩ずつ進む戦略を練る、と。それはわかるんですけど、親にどう言えばいいかなあ……。

やんばる先生:「愛情があるからこそ、フラットに見られなくなるのは当たり前。だから、メガネをかけ直すためにプロの目が必要なんだ」って伝えてごらん。

そして、

・「放課後登校」から始めるのがいいのか?
・「フリースクール」という別のフィールドが合うのか?

……といった具体的なステップを検討したらいい。

ジュン:選択肢を増やして、段階を知ることが大事なんですね。

やんばる先生:そう。不登校は「終わり」じゃない。中学は行けなかったけど、高校で人間関係が変わったら行けるようになるパターンもある。とにかく、「今」だけで判断しないこと。

そして不登校の子を抱えるご家族に伝えたいのは、「愛を与えて、その子を受け入れていれば、基本、ブラスに動く」と信じていいということ。

……大丈夫。ジュンは、弟さんがエネルギーを充電できているかどうかだけ、見ていてあげてほしい。ジュンのご家族なら、きっとうまくいくよ。

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水野 孝哉(みずの・たかや)
YouTuber、株式会社せんせい市場 代表取締役
大学卒業後5年間、公立中学校で教員として勤務。毎日生徒と向き合いながら教育に力を注ぐ中で教育の課題を痛感する。何か自分にできることはないかと考え退職。現在は教育アプリ開発などを手がける株式会社せんせい市場の代表取締役を務め、「公教育の外からの改革」に取り組んでいる。2022年に開設したYouTubeチャンネル「やんばるゼミ」は、学校あるあるや生徒への想いが伝わる動画が好評を博し、2026年4月時点で登録者数は70万人、総再生回数は23億回を突破している。
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(YouTuber、株式会社せんせい市場 代表取締役 水野 孝哉)