2025年6月12日、乗客乗員242人を乗せたエア・インディアの旅客機が離陸直後に市街地に墜落、1名を除く全員の死亡が確認されました。学生の宿泊施設をも巻き込んだ凄惨(せいさん)な墜落事故でしたが、唯一生存した乗客は奇跡的に腕に打撲傷を負ったのみで、墜落現場から歩いて去って行く様子が目撃されています。このような飛行機事故でどの座席が最も安全なのかについて、科学系ニュースサイトのLive Scienceが解説しています。

What's the safest seat on a plane? | Live Science

https://www.livescience.com/technology/whats-the-safest-seat-on-a-plane

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学航空学部のチェンルン・ウー准教授が「致死率は自動車の運転よりもはるかに低い」と述べている通り、飛行機は自動車などに比べて非常に安全な移動手段といわれています。

2024年8月に発表された研究によれば、民間航空機での1回のフライトにおける死亡確率は1370万分の1と報告されています。また、アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)の2001年から2017年にかけてのデータによると、旅客機の墜落事故の約94%で生存率は100%でした。



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どの座席が最も安全かという問いに対して、ウー准教授は、確固たる科学的研究はないと指摘。ノースダコタ大学の航空安全研究者であるダニエル・クワシ・アジェクム氏も「すべては墜落の力学によります」と述べているように、安全性は事故の状況に大きく左右されます。しかし、過去のデータや専門家の知見から、いくつかの傾向を推測することは可能だとのこと。

例えば、着陸時にコントロールを失うといった比較的エネルギーの低い事故の場合、アジェクム氏は「構造的に生き残るためには、どこに座っているかが本当に重要になります」と語ります。こうした状況では、機体前部にエネルギーが集中しやすいため、後部の方が安全である可能性があるとのこと。

実際に、2015年に連邦航空局のデータを分析した結果、機体の後方3分の1の座席の死亡率は32%で、中央3分の1では39%、前方3分の1では38%だったことがわかりました。また、列の位置別に見ると、機体後部の中央席の死亡率が28%と最も低く、最も高かったのは客室中央3分の1の通路側の席で44%でした。

ただし、機体の尾部が衝撃の大部分を受けた場合、後部座席の乗客よりも中央や前部の乗客の方が助かる可能性があります。実際にいくつかの事故では、亡くなった乗客が生存者の間に不規則に点在していたことがわかっています。このため、連邦航空局は、機内に「最も安全な座席」というものは存在しないと論じています。

一方で、ウー准教授は「翼の近くの座席も安全性が高い可能性がある」と指摘しています。その理由として、翼の周辺は構造的に非常に頑丈に作られていること、そして非常口に近く、迅速な脱出に有利なことを挙げています。ただし、この中央部分の下には燃料タンクがあり、墜落時に火災や煙が発生する危険性も存在します。



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最終的に専門家が最も重要だと強調しているのは、座席の場所そのものではなく、緊急時の行動です。アジェクム氏は、「客室乗務員の指示に従わなければなりません。それが最も重要なことだと思います」と断言しました。

また、事故の際には荷物を残し、90秒以内に迅速に避難することが極めて重要であるとも述べています。ウー准教授は、「自分の座席位置を把握」し、搭乗した際には必ず最寄りの非常口までの列の数を数えておくなど、常に備えておくことを推奨しています。