「大学院に入学」→38万円 「子宮がんで入院」→200万円…出会いはマチアプ 女子大生に騙された70代男性の告白 大金を失ってなお「また会えるかも…」とつぶやく理由
昨今、交際相手を探す「マッチングアプリ」で知り合ったカップルは珍しくもなんともない。それほど、「SNSでの絆」が世間に浸透しているのだ。しかし酸いも甘いもかみ分けた70代の男性は、その絆を信じてコロリと騙された。相手は九州から出てきた女子大生。詐欺と分かって告訴した末に彼女は逮捕されたが、男性の心は、いまもなお揺れていた。
***
【写真を見る】「愛してる」「ぎゅってしたい」「10万円ほしい」…女子大生から送られた「ラブLINE」と「金銭要求LINE」
大学院の受験料と入学金
70代男性に恋愛感情を抱かせ42万円を騙し取ったとして、7月2日、警視庁大崎署が神奈川県横浜市の会社員女性(22)を逮捕した。騙されたのは、東京都内で芸能関係の会社を経営するA氏。仕事柄、女性の扱いに慣れていたはずでは、と水を向けると、「それはそうなんですけど……」と切り出し、滔々と語るのだった。

「彼女と知り合ったのは登録数が250万人を超えるとうたう大手のマチアプです。妻を3年前に病気で亡くし、食事相手になってくれる女性を求めて登録していました。すると昨年3月に彼女からメッセージがあり、5月には直接会う関係になった。レストランをとって一緒に食事をし、話をする。業界などの女性とは違う新鮮さに惹かれたのだと思います」
自然と、毎日のようにLINEでやりとりするようになった。そのなかで、当時、さる国立大学で学生生活を送っていた彼女から、東京大学の大学院への進学を望んでいると聞かされる。
「しかも、元三菱重工勤務の父親が亡くなり、その関係の借金の返済で生活が苦しいという。それで食事した際のタクシー代や帰省のための費用として、数万円ずつ渡していました。正直、頼りにされていると思っていました。LINEでは互いに“愛してる”と送りあい、肉体的な関係はありませんでしたが“ぎゅってしたい”なんてやりとりもしていた。早い話、彼女にのめり込んでいたのです」
その流れで、昨年8月から今年2月にかけて、女子大生は“大学院の受験料が必要”と4万円を求め、“大学院に追加合格した”と、入学金名目の38万円を要求。A氏はすべて振り込んだ。
「永眠いたしました」
大学院の受験も追加合格も、真っ赤なウソだった。A氏が続ける。
「それが逮捕容疑となったわけです。が、彼女には一応、学生証や住民票などを出してもらっていました。この点がいまも理解しがたい。それらは本物でした。騙そうとしていたのになぜ本物を出してきたのでしょうか」
その理由を聞けなかったのは、女子大生が、子宮とリンパ腺のがんにかかり入院生活を余儀なくされていると伝えてきたからだ。少し前には、マチアプをやめたはずの彼女が、A氏が贈った『フェスタリア』のイヤリングを着けた写真を使い、マチアプを再開。それが原因でケンカとなり、予定していた北海道旅行も中止していた。
「これらが昨年9月ごろのことでした。以降も入院費用などの諸経費を200万円ほど振り込んでいます。実はこの時期、私自身もがんの手術をしたこともあって彼女への依存度が高くなっていました。ですが決定的な“事件”によって、詐欺だと確信したのです」
A氏は、入院費用を彼女ではなく入院先の病院の口座に振り込んでいた。
「しかし驚くことに、彼女は“親族がまちがって振り込んでしまったので自分の口座に転送してほしい”と病院に依頼し、実際に振り込ませていました。しかも私には、母親を装って“娘と連絡を取るのは難しい”旨のメッセージも送ってくるようになっていた。そして今年4月、衝撃的な内容が届いたのです」
“女子大生の母”からだった。娘が、〈かねてから入院加療中のところ、4月4日、享年22歳にて永眠いたしました〉と記されていた。
「連絡が取りにくくなり怪しいと感じてはいました。でもさすがに、亡くなったという連絡にはショックを受けた。それで病院に電話したら、彼女が入院してなかったことが分かりました。そればかりか、この連絡で、私が病院に振り込んだ入院費用が転送されていた事実も判明したのです。彼女とのやりとりなどの証拠を揃え、警察へと足を運びました」
「どこかで会えるかも」
逮捕後、留置施設にいる彼女から2通の詫び状が届いたという。そこには謝罪を重ねる言葉が綴られ、父親は健在であり大学院進学も事実ではない、婦人科にかかったことはあるものの、がんなどではなかった、云々……。
今後についてはこう書かれている。〈まずは、両親の力を借りてにはなりますが、Aさんにきちんとお金を返したいと思っています〉〈ここを出られたら、まずは再就職先を探します。親せきがいる北海道、神奈川、長崎のどこかにする予定です〉
騙されたのは、自身が隙だらけだったからでしょう。そう語ったA氏が、最後に呟いた。
「手紙に、北海道や神奈川、長崎とあります。どこかで会えるかもしれない、などと思ってしまっている」
SNSではなく、手紙に絆を感じたか。まさに「墓場に近き老いらくの、恋は怖るる何ものもなし」である。
(示談成立により、女子大生は後に不起訴処分となった)
デイリー新潮編集部
