「通勤電車でスマホ」は損している…脳内科医が「記憶力も注意力も上がる」と太鼓判を押す"数字探し脳トレ"
※本稿は、加藤俊徳『すぐに実践したくなる すごく使える脳科学テクニック』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■通勤電車は「見る力」を鍛えるのに最適
毎朝の通勤時、電車に乗っている間ずっとスマホを見ている、という人は多いのではないでしょうか?
動画を見る、ゲームをする、朝のニュースをチェックする……仕事の前にリラックスしたり、仕事相手との話題のために情報を取り入れるといった意味ではいい面もありますが、脳を鍛えるという観点からすると、ちょっともったいないです。
実は、通勤電車の中は脳のトレーニングにとてもいい場所なのです。
電車に乗りながら脳を鍛える方法のひとつに、窓の外に見える景色の中から特定の数字を見つけるというものがあります。
街の中には看板や標識があふれていますね。それらを注意深く観察してみましょう。その際に「5」でも「8」でも、好きな数を決めて、その数を探してみるようにしてください。
動く電車の中から特定の数字を見つけるときには、視覚系脳番地を一生懸命働かせます。動いているものを認知する箇所は、後頭葉にある視覚系脳番地の中の、側頭葉に接している部分にあります。側頭葉は見たものを識別して知識として記憶する場所でもあるため、同時に記憶力を鍛えることにもつながります。
■記憶力や注意力もトレーニングで向上可能
えっ、ものを探して見るだけで脳が活性化するの? と驚きですよね。オーストラリアの研究者エミリー・G・ロウ氏らの研究によると、人がものの動きを見分けるとき、脳は遠回りせずにすばやく視覚運動情報を送る「近道ルート」を使っていることがわかりました。
このルートは、よく使うほど視覚運動情報がスムーズに流れるようになり、動きの認識がより速く正確になります。視覚の働きは、生まれつきだけでなく、日々の経験によって鍛えられる可能性が示されています。
特に、仕事や作業の手順を映像やお手本で見ても一度ではなかなか覚えられない、という人に、このトレーニングはおすすめです。
「見る力」を養うと同時に、記憶として定着させる能力も向上しますし、探し物が見つけやすくなったり、人やもののちょっとした変化にすぐ気づけるようになったりと、仕事の能力全体の底上げにつながります。
「見る力」を向上させるトレーニングとしては、人ごみの中をすり抜けて歩く、というのも有効です。ただ人の流れに乗って歩くのではなく、行き交う人々の間を縫うようにして進んでみましょう。
人ごみの中で人にぶつからずに歩くには、周囲の人の動きを見て、空いたスペースを探し、足を運ぶというプロセスが必要ですね。これをうまくやれるようにトレーニングすれば、視覚系と運動系の脳番地を同時に鍛えることができます。
見る力を養うには、眼球の動きも大きく関わっています。
車窓から数字を探したり、人ごみを歩くときには、眼球は大きく動いていますね。ところが、スマホばかり見ていると眼球はあまり動きません。脳を活性化させるためにも、通勤中には意識的にスマホから目を離す時間をとってみてください。
■アイデアが必要なときはまず家の外に出る
新しい企画を出さないといけない、課題の解決策を示さないといけない……なのに、いいアイデアが浮かばないときってありますよね。
そんなとき、早起きして家で頭をひねっていても、なかなか「これ!」という案は浮かばないもの。それは、家の中には気を散らすものがとても多いからです。家族が起きてくる物音だったり、朝ごはんを用意しないといけなかったり、洗濯物が仕上がった合図が聞こえたり……そんな環境にいると、脳の集中はどうしても妨げられてしまいます。
アイデアがほしいときには、まず家の外に出ること。集中を途切れさせる環境から距離を置くのです。
■いつもと違うルートをテキパキ歩く
せっかく早起きしたのであれば、家で考え込んでないで職場へ向かってしまいましょう。そのとき、いつもと違うルートを通って行くと、いいアイデアが浮かびやすくなります。
いつも同じ道を歩くということは、いつもと同じ景色を見て、何も考えなくても目的地にたどり着けますよね。でも、脳は刺激に慣れやすい性質を持っているために、毎日同じルートを通っているうちに、刺激がなくなって働きが停滞してしまいます。
ところが、初めて通るような慣れない道や、めったに通らないめずらしいルートだと、見るもの聞くものがすべて新鮮。「この家の庭木は美しいな」「こんなところに新しい店ができたんだ」など、さまざまな発見があります。それらは視覚系や聴覚系脳番地を刺激し、また迷わないように方角を考えたりすることで思考系脳番地も刺激されます。
歩くという行為そのものも脳を活性化させます。運動系脳番地は、すべての脳番地と密接に関係し、影響を与えるため、運動脳を鍛えることは脳全体の機能の底上げになるのです。
そして、ダラダラとゆるいペースで歩くのではなく、テキパキとスピーディーに歩くこともポイント。もともと「歩く」という行為は、人類にとっては狩りで獲物を捕らえるために、目的地まで行くためのもの。つまり労働という目的達成の原点です。ダラダラと歩くよりもテキパキと歩くほうが、より多くの成果を出すことができたというのは想像に難くありません。
私はクリニックでの診察でも、患者さんに歩いてもらうことがよくあります。仕事に集中できない、うまくこなせないといった悩みのある方は、たいてい歩き方が緩慢です。
いつもと異なる通勤ルートをさっそうと歩く。それによって今までにない考え方ができたり、ひらめきが生まれやすくなるので、ぜひ試してみてください。

■仕事帰りで疲れていても勉強はできる
1日仕事をすると、頭も体もぐったりと疲れます。
資格取得や昇格のため勉強をしたい、はたまた最近始めた語学の勉強を進めたい……そんな気持ちはあるのに、平日の仕事後は、疲れからなかなか勉強が手につかない人は多そうです。
でも、実のところ脳全体が疲れ切ってしまっているわけではありません。
たとえば、デスクワークで書類やパソコンの画面とにらめっこをしている時間が長い人は視覚系脳番地を酷使しているし、人と話す営業などの職種の人は言語を司る伝達系脳番地が疲れている、というように、仕事の内容によって使う脳番地に偏りはあり、仕事終わりに疲れているのは、主にそこの脳番地だけ。日中使っていない脳番地の部分はまったく疲れていません。
このことをうまく活用しましょう。
■カフェでPodcastを10分聴くだけでもいい
日中あまり使われていなかった脳番地を使って刺激すると、脳はリフレッシュして疲れているという意識がなくなるのです。

ですから「疲れているから勉強ができない」ではなく、「疲れているから勉強して脳の疲れを取ろう」というのが忙しい社会人には合理的な考え方です。
ここで大事なのは、仕事で使っているのとは別の脳番地を使うこと。視覚系を長時間使っている人ならば、ポッドキャストや音読など聴覚系をたくさん使う方法で勉強してみる、といった具合です。
学生時代は何時間も机にかじりついて参考書を広げるのが「勉強」でした。でも忙しいビジネスパーソンは、まとまった時間なんて休みの日以外はなかなかとれません。
それなら仕事帰りのカフェで10分、仕事とは違う脳番地を使って勉強すれば、脳のリフレッシュにもなるし勉強もコンスタントに進みます。忙しいなら忙しいなりの勉強法というのはあるものなのです。
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加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医、加藤プラチナクリニック院長
新潟県生まれ。医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、助詞強調おんどく法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、強み弱みを診断し、これまでに1万人以上を治療。著書には、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)などがある。※「脳番地」(登録第5056139 /第5264859)は脳の学校(登録4979714)の登録商標です。
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(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)
