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ニュースのその先を考える記者解説。15日のテーマは「紛争地の医療への攻撃 なぜ“正当化”」についてです。国際部・福井桜子記者が解説します。

■医療への攻撃は“戦争犯罪”も… 攻撃による死者数が急増

今月2日にロシア軍が攻撃したウクライナ南部の病院の様子です。

――病院と言われなければわからないくらい、中も外もぐちゃぐちゃで、攻撃の激しさがわかりますね。

地元メディアによりますと、集中治療室などが攻撃を受け、医師1人が死亡したということです。

――戦争はあってはならないですが、その上で、病院への攻撃は許されないことですよね?

国際人道法では、紛争地での病院や医療従事者などの保護が義務づけられていて、医療への攻撃は戦争犯罪になるとみなされています。

ただ、ここ数年の医療への攻撃件数をみてみると、2022年、ウクライナ侵攻が始まった年ですが、そこから毎年1000件を超える攻撃が確認されているんです。

さらに、医療への攻撃による死者数をみても、ここ数年、急増していて、去年は1984人もの命が失われたということです。

■ウクライナやパレスチナ自治区など なぜ医療が標的に?

――攻撃はどの地域で起こっているのでしょうか?

去年、医療への攻撃が最も多かったのは、ウクライナで583回。その次に多かったのがパレスチナ自治区で、ガザ地区では去年10月に停戦した時点で、完全に機能している病院はひとつもない状態でした。

そして、最も死者数が多かったのが、内戦中のスーダンで1620人。国内の医療施設の3分の1以上が、機能不全に陥っているということです。

――そもそも、なぜ医療が標的に?

紛争地などで活動する国境なき医師団の報告書によりますと、意図的に医療を攻撃する理由としては、次のようなことが考えられるということです。

・負傷した戦闘員の復帰を阻止するため。

・医療施設から資源を略奪し、戦闘員が金銭的な利益を得るため。

・その地域で医療にアクセスできないようにすることで、住民を強制的に移住させるため。

イスラエル軍は攻撃“正当化”…救急隊が標的に “正当化”された攻撃は罪に問えない?

今回、イスラエル軍の攻撃が続く中東レバノンで、救急隊のボランティアとして活動していた息子(ジュードさん・15歳)を亡くしたという救急隊のリーダーに話を聞きました。

救急隊リーダー・スレイマン氏
「救急隊員や医療従事者が日常的に、かつ繰り返し攻撃の対象となっている。息子は救急隊の制服を着て、救急用のバイクに乗っていたのに攻撃された」

これについてイスラエル軍は、ジュードさんを「敵対組織の一員だ」として攻撃を正当化し、証拠の提示は拒否しているということです。

――敵だからといって、医療への攻撃を正当化するのもおかしな話では?

これまで医療への攻撃は、「誤った攻撃だった」と説明されることが多かったのですが、実は最近、「国際人道法のもと攻撃を正当化」する傾向が強まっているんです。

国際人道法では、紛争当事者に医療の保護を義務づける一方、医療施設などが軍事利用されている場合、その保護を受けられなくなるとしています。

最近はこの「保護の喪失」を盾に、明確な証拠も示さないまま、病院が攻撃の拠点となっているなどと主張し、攻撃を正当化するケースが増えているということです。

国際法が専門の早稲田大学法学学術院の萬歳寛之教授によりますと、国際法は、一つの国のように政府機関がとりまとめているわけではないので、このように自分たちに都合よく解釈されてしまうというハードルがあるそうです。

――“正当化”された医療への攻撃は罪に問えないのでしょうか?

紛争地では、戦闘の継続により現地で調査ができないため、ほとんどの場合、事実認定をするのが難しいそうです。

こうした中で国際社会ができることは、攻撃した側に証拠を出すよう求め、あとで必ず裁かれるというプレッシャーをかけることだとしています。

■「医療への攻撃を許さない」

――福井さんがこのニュースで一番伝えたいことはなんでしょうか。

「医療への攻撃を許さない」ということです。

紛争地において病院や医療従事者は、敵味方の区別なく命を救う使命を担う、人々の最後の砦です。

医療への攻撃は踏み越えてはならない一線だと再確認し、繰り返される攻撃に無関心にならないことが求められていると思います。