見苦しくうるさすぎ、あまりに米国的? フランスで巻き起こるエアコン論争

パリ(CNN) 前回の熱波から回復しきっていないフランスが、新たな熱波に身構えている。気象予報士の予測では今週、猛烈な暑さが戻ってくる見通しだ。それに伴い、6月に繰り返し聞かれた「なぜフランスはエアコンをつけないのか?」という疑問が改めて浮上している。
すでに自ら対策を講じている人もいる。パリ地方各地にあるスーパー「リドル」の外には、エアコンを手に入れようと数十人が列をつくった。パリ郊外のオーベルビリエでは、人混みの圧力に耐えきれずドアが壊れ、買い物客の間でけんかが発生。買い物客の1人は地元紙パリジャンの取材に、「踏みつけられている人を目撃した」と振り返った。別の客は「ショックだった。四方八方から押されて、残念ながらエアコンは手に入らなかった」と語った。
フランスのエネルギー移行省によると、エアコンを所有しているフランス人家庭はわずか24%程度。2年前の18%に比べれば増えたが、隣国イタリアの約50%にはまだ遠く及ばない。
パリ郊外に住むアレクシアさん(26)はまたしても熱波が迫っていることを知り、我慢の限界に達した。「購入を検討していたエアコンがすべて品切れ状態だった。そこで、完全に売り切れてしまう前に1台手に入れようと、慌てて購入に走った」
フランスでエアコンが設置されている学校はわずか7%。先週には教室の気温が耐え難いほど上がり、数千校が休校になった。保健当局によると、6月の猛暑のピーク時には6日間で2000人以上の超過死亡が記録されており、エアコンに対するフランスの文化的抵抗感は和らぎ始めている。
フランス人の間では長年、エアコンは見苦しくうるさい、不要なもの、そして何より「米国的」なものとみなされてきた。空調された空気を吸い込むと病気になるという根強い思い込みも存在する。フランス建築の伝統ではむしろ、厚い石の壁やよろい戸付きの窓など、夏の暑さが比較的しのぎやすかった時代に機能していた「パッシブクーリング」が頼みだ。
規制の問題もある。フランスは煩雑な手続きや官僚主義で知られる国で、この点はまさにエアコンの設置に当てはまる。パリの街並みを特徴づける19世紀の建物では、室外機の設置許可が得られないことも多い。ナポレオン3世の治世下でジョルジュ・オスマンがパリ大改造を行った際に建設された建物の多くは、歴史的建造物の保護規則で屋上やファサードの景観の統一性が守られているためだ。
2027年大統領選が近づく中、エアコン問題は政治争点化しつつある。マリーヌ・ルペン氏率いる極右政党「国民連合」は、エアコン導入を最も強く主張。すべての学校や病院に空調を整備する全国的な「気候計画」や、3000万〜4000万世帯の空調設置を支援する230億ドル規模の政府保証付き無利子ローンを要求している。
左派の姿勢は割れている。伝統的に最もエアコンに懐疑的だった「緑の党」は姿勢を軟化させており、党首のマリーヌ・トンドリエ氏は、少なくとも一部の学校や病院では冷房が今や不可欠だと認める。一方、極左政党「不服従のフランス」の指導者ジャンリュック・メランション氏はエアコン設置に警鐘を鳴らし、至る所に設置すれば「かえって弊害が増える」と指摘する。
政府の立場はその中間で、病院への緊急用エアコンの設置は承認しつつも、断熱優先の暑さ対策を放棄しているとは見られないように腐心している状況だ。議論がいかに白熱しているかは、政府の熱波対策をめぐり緑の党が不信任決議案を提出したことで明らかになった。決議案が可決される可能性は低いが、この問題がどれほど深く政治問題化しているかがうかがえる。
エアコンへの抵抗は環境的な観点からも論じられている。基になっているのは、エアコンがエネルギー消費を通じて気候変動に直接寄与するという考え方だ。
エアコンを集中的に使用すると、排熱によって都市部の気温が上昇する場合がある。これは局所的な現象であり、温暖化物質による地球温暖化とは異なるが、エアコンを使える人と使えない人の間の格差は拡大する。
環境活動家はまた、議論が「エアコンあり」対「エアコンなし」という二者択一に矮小(わいしょう)化され、原因ではなく対症療法に焦点が当たっているとも主張する。
ただ、個々人がどれだけ気候変動の原因と闘おうと、多くのフランス人にとって対症療法を講じる必要性はもはや避けて通れない。
