ダイエットをしているのに「なかなかやせない」のはなぜか。イシハラクリニック副院長の石原新菜さんは「1日の生活の中で基礎代謝は60〜70%のエネルギーを消費するが、体温が1度低下すると基礎代謝量が12%減少するともいわれる。やせにくくなる原因のひとつに“冷え”もある」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、石原新菜『体温を1度上げると不調はすべて解消する』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■30代になるとやせにくくなるのはなぜか

多くの人が30代を過ぎたころから、それまでと同じような生活をしていても太りやすくなります。一度太ってしまうと「なかなかやせないな」と実感することも。

また、体の外に水分が排出されにくくなって、むくみの症状となって現れることもあります。

その原因は「基礎代謝」の低下にあります。

「代謝」とは、体を動かすエネルギーや体をつくる材料を生み出すさまざまな化学反応を意味していて、生命の維持や活動に欠かせないものです。それが、加齢や自律神経の乱れ、ホルモンの異常などによって低下してしまうのです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fstop123

■「基礎代謝」が最大のエネルギー消費

私たちの体は、寝ている間でも、心臓が動いて血液を全身に送り出したり、肺が動いて呼吸をしたり、食べたものを消化して栄養分を吸収したりといった活動をしています。こうした、生命を維持するための活動に必要な最低限のエネルギーを「基礎代謝」といいます。

代謝には、「基礎代謝」のほかに、立ったり座ったり、家事や運動など、日々の生活の中で活動したときに消費するエネルギーの「生活活動代謝」と、食べ物を消化吸収するときに消費するエネルギーの「食事誘導性熱代謝」があります。

私たちは、日々の生活の中で大量のエネルギーを代謝して(消費して)生きています。その割合は、基礎代謝が60〜70%といちばん高く、次は生活活動代謝で20〜30%、食事誘導性熱代謝が約10%となっています。

私たちの体は、基礎代謝のために多くのエネルギーを使っているのです。

基礎代謝量(基礎代謝によるエネルギー消費量)が高い人は、寝ているだけ、息をしているだけでも多くのエネルギーが消費されるため、太りにくいという特徴があります。

「やせの大食い」といわれるようにたくさん食べても太らない人もいれば、一生懸命ダイエットをしているのに、すぐに太ってしまう人もいます。これは、基礎代謝量の違いに要因のひとつがあるのです。

■体温が1度下がると基礎代謝は12%低下する

基礎代謝量は、身長と体重、年齢などの影響を受けますが、中でも筋肉量に大きく左右されます。同じ体重でも脂肪が少なくて筋肉量が多い人のほうが、基礎代謝量は高くなります。

基礎代謝は若いときには活発で、基礎代謝量も多いのですが、年齢を重ねるとどちらも徐々に低下していきます。これも、加齢とともに、筋肉量が低下するためと考えられます。

基礎代謝の低下には、「体の冷え」も大きく関与しています。

体温が1度下がると、代謝は約12%も低下するといわれています。体が冷えていると、それまでと同じ食事や生活スタイルを続けていても、代謝はどんどん悪化して、むくんだり、太りやすくなっていきます。

「冷え症」の人は低体温状態で代謝が悪いままなので、一度ついた脂肪が落ちにくく、ダイエットをしてもやせないといった事態に陥(おちい)ってしまうのです。

■自覚のない「隠れ冷え症」が危ない

「体が冷えていますね」。不調を訴えて、クリニックにいらっしゃる患者さんに、診療の結果をそうお伝えすると、「え、特に寒くないし、私は冷え症ではありません」とおっしゃる方は少なくありません。

でも、この自覚のない「冷え」こそ、実は注意が必要です。

困ったことに、自分は暑がりだと思っている人の中にも、「隠れ冷え症」さんがいます。頭や顔はのぼせて暑いのに足腰は冷たいという「冷えのぼせ」さんは、たいてい、自分は暑がりだと思っています。

平熱が36.5度以上ある人でも、足が冷えているのであれば、それは本当の体温ではありません。下半身が冷えているために、上半身に血が上ってしまっているだけ。今の体温計はほとんどがわきの下で測るものなので、このタイプの人は体温が高めに出てしまうのです。

寒さを感じなくても、足先やお腹に手を当てて冷たかったら、「隠れ冷え症」の可能性があります。体の表面はほてっていても、内臓は冷えているという人もたくさんいます。この場合は、お腹や胸を触ってみると、ヒヤッと冷たいのが特徴です。

■太り気味で汗かきな人は「水太り」の可能性……

太りぎみで汗かきな人も、冷え症を疑ったほうがいいでしょう。まったく逆のように思えますが、本当に体が温かい人は、動いてすぐに汗をかくことはありません。

石原新菜『体温を1度上げると不調はすべて解消する』(プレジデント社)

少し歩いただけで汗が出てくる人は、体の中に満杯まで水が溜まっている「水太り」の状態です。そのために、体をちょっと動かしただけで、その水が汗となって体の外にあふれ出してくるのです。こうした人の体温を測ってみると、35度台ということもよくあります。

「冷え」に対して少しでも自覚症状があれば、体を冷やさないように自然と気をつけるものですが、「隠れ冷え症」は自分では気づかないため、対策を立てるきっかけがありません。そうして放っておくことで、ますます冷えが進行して、体調不良や病気の原因となってしまうのです。

ぜひ自分の体の傾向を知り、日頃から体の冷えやむくみなど、ちょっとした変化に敏感になっていただきたいと思っています。

■現代社会には「体を冷やす」落とし穴だらけ

現代社会には、知らず知らずのうちに「体を冷やす習慣」がたくさんあります。

ここ数年の梅雨時や夏の暑さは、エアコンなしで過ごすことが難しい状況です。でも、暑い屋外から汗だくで戻って、そのまま着替えることなく、Tシャツやノースリーブなどの肌を出す衣服でエアコンの効いた室内に長時間いれば、体は冷える一方です。

加えて、アイスクリームや氷菓子、冷えたビールにアイスコーヒーなどをたくさん摂っていては、体が冷えないわけはありません。猛暑の中では当たり前のようになっていますが、これには注意が必要です。

寒い冬でも、おしゃれ優先で、首元が大きくあいたセーターや足首を出した短めのパンツを身に着け、ぶるぶる震えている人を見かけます。これは、「冷え」を自覚するしない以前の問題で、ご自身の体を大切にしていない証拠ですね。

■“浴槽キャンセル界隈”は要注意

最近は夏だけでなく、1年を通して「入浴はシャワーだけ。湯船には浸かりません」と言う人が少なくありません。

でも、シャワーだけでは体が芯まで温まりません。湯船に浸かるときのように全身の血流を改善する効果もないため、夏のエアコンや冬の冷気による「冷え」が体に残ったままになってしまいます。

また、「しっかり食べないと体が冷える」と思っている方は意外なほど多いものです。でも実際はまったく逆のお話です。

空腹になる間もなく食べ続けていると、胃腸などの消化器官はずっとフル回転している状態です。その間、血液は消化器官に集中するため、熱を発する器官である筋肉や心臓、肝臓などに届く血液が少なくなって、体温が下がってしまうのです。

特に運動不足での食べすぎは最悪です。エネルギーとして消費されなかった糖質や脂質が血液中に残ってしまい、全身の血流を悪化させて、冷えに拍車をかけてしまいます。

■筋肉量が少ない女性は「冷えやすい」

「冷え症」というと、女性特有のトラブルというイメージがあります。実際には、男性で冷え症の方も少なくありませんが、男性に比べて女性が冷えやすいというのもまた事実です。

男性と女性とでは、そもそも体の構造が異なります。体格や体型、生殖器官、声、髪質や肌質など、さまざまな違いがあるのですが、中でも、筋肉量の違いは顕著です。

一般に、男性は女性よりもがっちりしていて脂肪が少なく、その分、筋肉が発達しています。一方、女性は体に脂肪がつき、ふっくらとしていて、筋肉の量は男性に比べて多くありません。

筋肉には熱を生む働きがあります。脂肪には体の熱を逃がさないように保温する役目がありますが、筋肉のように熱をつくることはできません。

体の中には、肝臓や心臓、脳など、自分で熱を生む臓器もいくつかありますが、最も熱を発するのが筋肉です。1日の中で、体温の40%程度が筋肉によってつくられています。そのため、筋肉量の少ない女性は男性に比べて冷えやすいというわけです。

■漢方で見る「陰性体質」と「陽性体質」

漢方でいうと、ほとんどの女性は生まれつき水をため込みやすく冷えやすい「陰性体質」です。一方、男性はほっそりとした一部の方を除いて水をため込まず冷えにくい「陽性体質」です。

特に筋肉質でがっちりしている男性は陽性体質で暑がりなので、陰性体質で冷えがちな女性とは体感温度が違います。夏になるとエアコンの設定温度で男女の意見が分かれることがありますが、これも体の構造の違い、体質の違いを理解すれば納得がいくはずです。

年代別にみると、筋肉量は20代でピークを迎えます。その後は加齢とともに少しずつ減少します。そして、50代以降は努力しなければ1年で約1%程度筋肉が減っていくといわれています。

写真=iStock.com/vchal
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vchal

下半身には太ももなどの大きな筋肉が集まっており、全身の筋肉の約7割を占めています。そして、加齢によって、特に下半身の筋肉量の減少が顕著に進むことがわかっています。

■しなやかな筋肉が血流を良くする

また、冷えには筋肉量だけでなく、筋肉のしなやかさも影響しています。

血管の壁が厚く弾力性に富む動脈は、心臓の収縮によって送り出された血液の圧力で、ふくらんだり萎(しぼ)んだりして全身に血液を送っています。

それに対して静脈は自分で血液を運ぶ力はほとんどなく、足の筋肉が収縮したり弛緩(しかん)したりしてポンプのように血液を押し上げています。

長時間同じ姿勢をとり続けたり、運動不足だったりすると、足の筋肉が硬くなって血液を押し上げる力が弱くなり、血流が悪くなって冷えてしまうのです。

■運動が大事であるもっともな理由

先に、筋肉量は基礎代謝量に影響を及ぼすというお話をしました。筋肉がたくさんついている人は体温が高く、代謝も盛んに行われています。基礎代謝量が高いのです。

そのため、筋肉質の人はたくさん食べてもそれほど太りません。食べても、その分ちゃんとエネルギーが消費されて脂肪が燃えるからです。

これに対して、筋肉が少なく体が冷えやすい女性は、低体温で代謝も落ちてしまいがちです。この状態でダイエットのためにと食事制限をしてしまうと、筋肉が減少してさらにエネルギー消費量が減り、かえって太りやすくなってしまいます。

■運動不足の男性も体が冷えやすく、太りやすくなる

もともと筋肉量が少ない女性だけでなく、男性でも日頃から運動不足で筋肉が減少してくると、つくり出せる熱の量が少なくなり、体が冷えやすく太りやすくなっていきます。

体力の落ちた高齢者、座っている時間が長い人、体を動かす習慣がない人は、体が冷えやすいと認識してください。

男女ともに、運動をしたり、日常生活でも体を動かしたりして筋肉量が増えれば、自分自身で体を温めることが可能です。体温が上がり、血行のいい体になります。

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石原 新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長・内科医
医学生の頃から、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實とともに、海外で自然医学の基礎を養う。現在は、父の経営するクリニックで漢方薬処方を中心とする診療を行うかたわら、テレビ・ラジオへの出演や、執筆、講演活動などを積極的に行う。著書に『病気にならない 蒸しショウガ健康法』(アスコム)、『やせる、不調が消える 読む冷え取り』(主婦の友社)、『体温を1度上げると不調はすべて解消する』(プレジデント社)など多数。
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(イシハラクリニック副院長・内科医 石原 新菜)