「紳士の品格」40代のラブコメディ、20〜30代はなぜ居場所をなくしたのか
ラブコメディの主人公になれない現実の20〜30代の“不都合な真実”
「紳士の品格」、40代のラブコメディが登場した。20代、30代はどこに行ってしまったのだろうか。40代になっても、チャン・ドンゴンは相変わらずイケメンでラブコメディも演じきることができる。だが、彼がラブコメディを演じられるのは、ただ優れた外見のおかげではない。私たちのドラマが変わったのだ。
チャン・ドンゴンが帰ってきた。しわやたるみ、垂れた頬が少し(ほんの少し)見えるが、構わない。とにかくチャン・ドンゴンは“チャン・ドンゴン”なのだから。チャン・ドンゴンは、韓国では個人の名前というより、“イケメン”の代名詞として認識されてきた。韓国でチャン・ドンゴンという名前を持つ数万人は、ただ一人のチャン・ドンゴンのせいで不必要に見くびられたり、同情されたに違いない。
だが、見逃しがちな事実がある。チャン・ドンゴンが復帰したことや、チャン・ドンゴンがつけている安全ピンがものすごく高いということより、もっと重要な事実がある。それは、“40代が主人公のラブコメディ”が登場したことだ。「火花」のような“クラシックな不倫ロマンス”でもなく、週末ドラマの脇役の、遅咲きの恋愛でもなく、生き生きとした“ラブコメディ”だ。
“彼女たちがたとえ今よりもっと若く見えたとしても、人気ドラマに出演した時は20代前半だった”
これは、予想できなかったことではないかもしれない。かなり前からラブコメディから20代が消え、30代が主流になった。1990年代から2000年代前半まで、ラブコメディの中心は20代だった。キム・ヒソンや彼女のようにラブコメディを独占した90年代の女優について考えてみよう。キム・ヒソンが「ミスターQ」や「トマト」に出演したときはまだ22〜23歳で、キム・ヒョンジュもそれくらいの年頃が全盛期であり、ソン・ヘギョが「秋の童話」に出演したときはわずか20歳だった。
最近のドラマを見ると、強烈なインパクトを与えたドラマのほとんどが30代以上の俳優が出演したものだった。今年に入り、20代の主人公が登場したドラマのうち目を引いたのは、「太陽を抱く月」「ファッション王」くらいで、ほとんどのドラマには30代の俳優が登場し、20代の俳優が年齢とは関係のない役を演じていた。
どうしてこうなったのだろうか。なぜ40代までが20代の居場所を奪うことになったのだろうか。様々な芸能産業では、構造的な原因が複合的にあるだろうが、ドラマだけをみると原因は意外なところにあるかもしれない。
ラブコメディの視聴者たちが期待している非現実的な恋愛のために、必要なラブコメディの前提条件がいつくかある。ドラマに登場するような素敵なレストランに行かなければならない、男性主人公は女性を車で家まで送らなければならない、一人暮らしのマンションがなければ、干渉されずに服を着たままシャワーを浴びることもままならない。
では、2012年の20代はこのようなラブコメディの前提条件を満たすことができるのだろうか。たとえレストランに行けず、車やマンションがなくても、そのような前提条件を満たすことができる“王子様”(と書いて“チーム長”と読む)に会えるところに生活基盤を置いているのだろうか。さらに、最近のドラマは“ジャンルもの”が多い。病院、警察、裁判所などを題材にするジャンルドラマの主人公は、専門職でなければならず、専門職を演じるためには20代より30代、40代が適している。
“なぜ恋愛ではなく、就職が20代の最大の問題になったのか。両方ともうまくいっていない人間としてどちらか片方でも良くなってほしいが、なかなかうまくいかない。顔、スタイル、似ているところは一つもない20代の芸能人と私に、一つの共通点がある。私たちは職場を失っている!”
ドラマの外では、“最近の20代”は未だにキムパブ(韓国式海苔巻き)天国(安い食堂のこと)でご飯を食べ、電車の定期券を持って、親のすねをかじり、大多数は20代半ばまでただの大学生だ。現実では、20代で成功して専門職に就いた人々は、新聞に出るほど珍しい。毎回学園ものばかり撮るわけにはいかないため、ラブコメディもこのような現実と無縁ではいられない。レストラン、車、マンション、会社、専門職を描くためには30代が必要だ。
近頃の20代は、30代になるための“準備期間”で“未完成な時期”でもある。ラブコメディのような派手な恋愛をすることは、20代には難しい。自分の意思とは関係なくサンポ族(恋愛、結婚、出産の三つを諦めた世代)になった人間の一員として、この言葉は十分な理由があってできたのだと実感する。近頃のドラマでの20代は、厳しい現実と高い理想の間で悩み、みっともない恋愛をしたり(「メリー&テグ 恋のから騒ぎ」)、自分より年齢も、条件も上である“大人”に恋をしたり、尊敬したりする(「ハイキック3〜短足の逆襲」)姿を見せている。このすべてが果たして偶然なのだろうか。韓国のドラマが現実に合わせて変化しているのではないだろうか。
20代が厳しいことはさておき、30代まで40代に圧倒されるようになったのは「紳士の品格」だけなのだろうか。実は、30代も20代と同様に厳しい。ようやく社会生活を始めたばかりか、あるいはまだ何かを準備している30代がほとんどだ。
チーム長、本部長と呼ばれ、レストラン、車、マンション、専門職などの条件を揃えるためには最初から財閥の3世として生まれるか、財閥の3世に愛される女にならなければならないという不都合な真実がある。この不都合な真実を上手く隠して見せてきたラブコメディも、このような現実に気づいたのではないだろうか。
30代になっても相変わらず派手な恋愛は難しい。その上、今の社会は40代をもはや年を取って疲れている年齢だとは思わない。成熟した年齢、本当の人生を知る年齢、または独身でいる可能性もある年齢(40代シングル4人「経済的安定を望むなら、結婚はしてもしなくてもいい」、住宅、ファッション界でシングル産業が急成長、京郷新聞特集「私は40代シングル」)
“紳士の品格より先に40代の建築事務所所長の男性が登場したドラマ「結婚できない男」で主人公のチョ・ジェヒ所長が一番羨ましく思えた瞬間は、お金のことを心配せずに牛肉を食べるときと、自分名義のマンションに入るときだった。「結婚できない男」が、韓国より先に人口構造の変化と高齢化を経験している日本の現実を反映したことを考えると、これは単なる特定のキャラクターの問題ではなく、社会の変化の問題だと言うこともできる”
チャン・ドンゴンは、ドラマで自分の会社、従業員、マンションを持った40歳のイケメン建築事務長として登場する。非現実的な容貌だが、車とマンションを持っている20代の本部長、または30代のチーム長よりは現実的だ。40代なのだから。
もちろん「20代と30代は厳しい。だが、私も40代になるとあんなふうに素敵になれるかもしれない」と思わせるもう一つの“不都合な真実”かもしれない。性急な予言かもしれないが、チャン・ドンゴンのようなイケメン俳優が、50歳のラブコメディを撮影する日もそう遠くはなさそうである。40代になっても親のすねをかじる未婚のカンガルー族(ニート)が増え、30〜40代と50〜60代の資産増加率の格差が約4倍だという統計もある。
思ったより40代も厳しいかもしれない。立派な車や自分の家を持ち、素敵なレストランに出入りするには50代近くにならなければならないのか。韓国で“お金のない若者”はつらい。
