※写真はイメージです

写真拡大

連日厳しい暑さが続く夏。この時期になると、「汗をかきやすいので、なんとか発汗を少なくしたい」と受診される患者さんが増えてきます。話を伺うと、汗の量だけでなく、「汗によるにおいが気になる」という悩みを抱えている方が少なくありません。
「汗をかいたから臭う」と思いがちですが、体臭は汗の量だけでは決まりません。実は、「何を食べているか」によって、においの強さだけでなく、他人が感じる「心地よさ」まで変わる可能性があります。今回のテーマは、夏に気になる体臭と食卓の意外な関係です。

◆汗そのものは実は無臭

そもそも、汗そのものはほぼ無臭だということをご存じでしょうか。脇にあるアポクリン汗腺からの分泌物には、脂質やアミノ酸など、においのもとになる成分が含まれていますが、出た直後はほとんどにおいません。

これが皮膚の表面にすむ「常在菌(バクテリア)」によって分解されることで、あの特有のにおい物質に変わります。つまり、汗は体臭の「完成品」ではなく、いわば材料。皮膚の細菌が汗を“加工”して、初めて独特のにおいになるわけです。

そのため体臭は、「どんな成分が汗と一緒に出るか」「どんな細菌がいるか」「汗や皮脂が皮膚にどれだけ残るか」の掛け算で決まります。そして毎日の食事は、このうち、においの「材料」となる成分を大きく左右します。

◆赤身の肉は体臭を強くする?

チェコのカレル大学の研究チームが、健康な男性17人を対象に、赤身の肉の摂取と体臭の強さを調べた面白い研究があります。参加者は時期を分けて、赤身肉を毎日食べる2週間と、肉を食べない2週間の両方を経験しました。

それぞれの期間の最終日に、脇の下にパッドを24時間挟んで「体臭」を採取しました。香水などの影響も除いた上で、被験者とは別の女性たちに、体臭の「心地よさ」「強さ」「魅力度」を評価してもらいました。

結果は実に興味深いものでした。赤身の肉を食べた期間の男性の体臭は、肉を食べなかった期間に比べて「不快で、においも強い、魅力を感じない」とばっさり評価されたのです。

◆なぜ赤身の肉で体臭が変わったのか

理由は、まさに汗の成分と細菌の関係にあります。肉を食べることで、脇から分泌される脂肪酸などの量やバランスが変わり、皮膚の細菌が分解した後のにおいにも違いが出た可能性が考えられています。

肉のにおいがそのまま汗に漂うというより、体臭の「材料」の組み合わせが変わったのではないか、というわけです。

◆野菜や果物が多い人の汗はフルーティー?

では、野菜や果物はどうでしょうか。オーストラリアのマッコーリー大学などの研究チームが、男性の食事内容と体臭の関係を調べた研究があります。この研究では、緑黄色野菜やフルーツに含まれる「カロテノイド」という色素の皮膚への沈着度合いを測定し、野菜などの摂取量を客観的に評価しました。

すると、野菜やフルーツを多く食べ、皮膚の黄色みが強い男性の汗ほど、女性から「魅力的で、心地よいにおいがする」と高く評価されたのです。さらに詳しくみると、「フローラル(花のような香り)」「フルーティー」といった好印象な香りを持っていることも分かりました。

反対に、パンやご飯などの炭水化物の摂取量が多かった男性の汗は、においが強く、心地よさが低いと評価されてしまいました。

なぜ野菜やフルーツが体臭の印象をよくするのでしょうか。カギの一つとして考えられるのが「抗酸化作用」です。

人間の体ではストレスや代謝によって活性酸素が発生し、皮脂が酸化すると、加齢臭の一因となるにおい成分が生まれます。野菜やフルーツに豊富なカロテノイドなどの抗酸化成分が、こうした皮脂の酸化を抑え、においの変化に関わっている可能性があります。