「桜を見る会」で招待客と記念撮影する安倍晋三首相(中央)(2019年4月、時事)

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 安倍晋三首相主催「桜を見る会」を巡りさまざまな指摘がある中、「マルチ商法を展開していた『ジャパンライフ』の元会長も招待状が出ていた」と問題視する声があります。ジャパンライフは経営破綻し、多くの被害者が資産を失いましたが、そもそも「マルチ商法」とはどのようなものでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

販売組織を連鎖的に拡大

Q.マルチ商法とは、どのようなもので、何が問題なのでしょうか。

牧野さん「マルチ商法は、個人を販売員として勧誘し、さらにその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務の取引のことをいいます。

法律で禁止されている『ねずみ講』とは異なり、商品販売を媒介させて合法的に組織運営を行えば、事業の合法的な営業が可能です。ただ、商品販売のノウハウなどがない主婦や若者が勧誘されて、売れない商品の在庫を抱えて問題が生じることがあるようです」

Q.ねずみ講は違法ということですが、ねずみ講とマルチ商法は何が異なるのでしょうか。

牧野さん「ねずみ講(無限連鎖講)は、先に組織に加入した人が後に加入した人から金品(有価証券を含む)を受け取る仕組みで、物品のやりとりが行われない組織です。例えば、1人が2人ずつ勧誘するとしてこの過程を繰り返していくと、結局は破綻することになります。ねずみ講は『無限連鎖講の防止に関する法律』(ねずみ講防止法)によって、開設・運営・勧誘が禁止されています。

『物品のやりとりが行われない』点が、商品販売を媒介させているマルチ商法との大きな違いです」

Q.マルチ商法は合法とのことですが、規制を受けていると聞きます。どのような規制でしょうか。

牧野さん「マルチ商法は合法ですが、『特定商取引法』において、『連鎖販売取引』として定義され、規制されています。その定義は(1)物品の販売(または役務の提供など)の事業であって(2)再販売、受託販売、もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を(3)特定利益が得られると誘引し(4)特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む)をする取引をいいます。

特定商取引法の規制では(1)販売業者の氏名、商品(役務)の種類、取引の特定負担事項、統括者の氏名・住所・電話番号等の表示義務(2)不当な勧誘行為の禁止、書面の交付義務、クーリングオフ(書面受領日もしくは商品の引き渡しが後であれば、その日から20日以内に無条件解約が可能)の適用などが定められ、厳しく規制されています」

Q.「ネットワークビジネス」という言葉がありますが、マルチ商法とは違うのでしょうか。

牧野さん「最近は、特定商取引法で定義された連鎖販売取引について、ネットワークビジネスやコミュニケーションビジネスと呼ばれることが増えています」

Q.ジャパンライフは最終的には、「預託商法」を行って破綻しています。これもマルチ商法の一種なのでしょうか。

牧野さん「『販売預託商法』は、高い利率による利益還元や物品等の販売価格相当額での買い取り(実質的な元本保証)をうたって、消費者から多額の金銭の拠出を募る手法ですが、実際に運用事業は存在せず、消費者から拠出された金銭を別の消費者の配当に充てて、最終的には破綻する商法を一般に指します。

被害が発生している場合は、『出資法』における『出資金の受け入れの制限』(出資法1条)や『預かり金の禁止』(同法2条)の違反、刑法246の詐欺罪に該当する可能性があると指摘されています。

消費者庁の発表によると、ジャパンライフは販売預託商法を行う中で消費者に対し、『販売のあっせんをして、別の人を会員にすればボーナスが得られる』旨を話して勧誘しており、これは特定商取引法の連鎖販売取引に該当します」

Q.マルチ商法で被害に遭わないための心構えや注意点を教えてください。

牧野さん「勧誘のときは成功話を聞かされるようですが、誰でも簡単に利益を得られるものではなく、もうかる話などそう簡単にありません。誰でも成功するものではないので、冷静に考えてみることが大切です」