(※写真はイメージです/PIXTA)

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「不倫」「浮気」「離婚」「セクハラ」……銀座さいとう法律事務所には、今日も有象無象のトラブルが舞い込みます。本連載では、齋藤健博弁護士が実際に寄せられた事例をもとに、男女の法律問題を解説していきます。

娘の姿でよみがえった10年越しの“違和感”

外資系の金融機関に勤務するAさん(44歳)は、共働きの妻・Bさんと17歳の娘・Cさんとの3人家族です。妻を思いやって、妻の実家近所に購入したマイホームで暮らしていました。とにかく仕事が忙しいことから家族に使える時間は皆無に等しく、特に思春期のCさんとは距離ができていました。

Aさんはガタイがよく、仕事では成果を上げる一方、家庭内の不和を極度に嫌い、家族に対しては気弱なところがあり、言いたいことがあっても飲み込むこともしばしば。そのため、最近娘の香水の匂いがきつく、服装がブランド物ばかりになったものの、「学生としていかがなものか」と悶々とするばかりでした。

そんなAさんには、10年以上胸の内に秘めてきた悩みがあります。Aさんがまだ30代前半のころ。休日出勤を終え電車から降りると、妻らしき人物が前方を歩いています。どうやら、男性と手を繋いでいるようです。妻らしき人物はなんとなく後方に気配を感じたのか、繋いでいた手をパッと放したものの、後ろを振り返ることはありませんでした。

Aさんは、その人物が妻であったことはほぼ確信していましたが、直接Bさんに問い詰めることなく時が過ぎていきました。

--しかし、その違和感がよみがえる出来事が起きます。

仕事中、次の商談のために東京駅へ向かっていると、娘のCさんが50代と思しきスーツの男性と手をつないで歩いているのを目撃したのです。どんな関係かはわかりません。しかし、年齢の組み合わせが明らかに不自然でした。

Aさんはあまりのショックに、帰宅後すぐに娘を呼び出しました。

「誰だあの男は!」

返事はありません。返事がないことに焦りと怒りが混ざり、Aさんの感情はさらに昂っていきました。気づけば、妻のBさんにまで声を荒げます。

「お前も俺に隠していることがあるだろう!」

それでも2人はなにも答えません。その日を境に、妻と娘はAさんに対して口をきかなくなりました。Aさんは「そこまですることはないだろう」と思いましたが、その折、タイミング悪く単身赴任が決まり、Aさんは単身、海外へ旅立つことに。

お盆に帰国したときには、Aさんが自宅に到着するやいなや、妻と娘は「これから出かける」といって、Aさんを無視してどこかへ行ってしまいました。

年末年始に帰国すると…自宅が“もぬけの殻”に

年末年始、休暇を取って日本に帰ると、想像を超える仕打ちが待っていました。自宅がもぬけの殻なのです。近所にある妻の実家の様子も見にいってみましたが、同様にもぬけの殻で、庭には雑草がかなり生えている状態でした。

そうこうしているうち、Aさんに「婚姻費用分担請求」が届きます。

中を読むと、「Cがヨーロッパの大学に留学をしているのでその費用を支払え」との旨が書かれています。Aさんは娘が留学に行くことすら知らされていませんでした。

「婚姻費用分担請求」の過大請求は免れたが…残された“深い溝”

婚姻費用分担請求とは、夫婦が別居しているあいだ、収入の多いほうの配偶者に対し、生活費や養育費などの費用を支払うように求める法的請求のことです。この点、不貞行為が確実に立証できる場合には、婚姻費用の範囲を「養育費部分だけ」に制限することができます。

Aさんのもとには、「留学費用・ホストファミリーへの支払い・パーティ参加料など、Cさんの海外生活にかかる費用をすべて支払え」という請求が届いていますが、本来、こうした費用は夫婦双方の承諾がなければ請求できないというのがルールです。ただし、同居している場合には「推定的承諾」といって、「同居していたのだから、承諾があったとみなす」という扱いができることがあります。

Aさんが探偵を雇って調べた結果、やはりBさんに不貞関係があったことが判明。相手は妻と同じ会社に勤務する男性でした。Aさんは高等裁判所まで争った末、婚姻費用は「通常の養育費のみ」とする判決を勝ち取りました。

「お父さんとお母さんはもうダメだ」と娘Cさんに伝えたAさん。Cさんは留学の継続が難しくなり、帰国を余儀なくされました。結局、AさんとCさん、そして娘との関係はさらに疎遠になってしまったのです。

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