北中米W杯が閉幕、史上最高レベルの大会を振り返る

(CNN)米国・カナダ・メキシコで共同開催されたサッカー・ワールドカップ(W杯)北中米大会が幕を閉じた。3カ国・16都市で104試合が行われ、308ゴールが生まれた激戦の末、優勝トロフィーを掲げたのはスペインだった。
アルゼンチンとの決勝は、中立の立場で見る人にとっては必ずしも白熱した試合とはならなかったが、大会を通じて最も優れたチームが最後に優勝を飾ったという意味では、妥当な結末だったと言えるだろう。
世界中の「ラ・ロハ(スペイン代表の愛称)」のサポーターが同国2度目の優勝を祝う一方で(スペイン担当編集者注:祝祭が遠くノース・ロンドンでも催されたことは、筆者の頭痛が証明するところだ)、それ以外の人々は感動的で記録ずくめ、さらにスーパースターの共演となった今大会を振り返っている。
実のところ今回のW杯には、何年も前から多くの懸念が寄せられていた。安全に開催できるのか? 地元の人々の関心を集められるのか? 巨額の赤字を出すのではないか? 実際には諸々の批判が的中した部分も見られたが、それでもなお、2026年大会は際立った成功を収めたと評価できるだろう。
それは政治家や統括団体に依拠した成果というよりも、現地に大挙して押し寄せ、共に祝祭を楽しんだ何百万人ものファンのおかげだろう。そしてピッチに登場し、最高のパフォーマンスを披露したスーパースターたちや、予想をはるかに上回る番狂わせを演じた強豪国以外の代表チームの功績に他ならない。
そこで本記事では、W杯特集の締めくくりにふさわしく、大会屈指と呼べる魔法のような瞬間の数々を振り返って行きたいと思う。
各賞の行方は優勝したスペインがメインのトロフィーを掲げる前に、決勝終了後にはいくつかの個人賞も授与された。
大会10ゴールを挙げたフランスのキリアン・エムバペはゴールデンブーツ(得点王)を受賞。その過程でワールドカップ歴代最多得点記録も更新した。スペイン代表DFパウ・クバルシは最優秀若手選手賞、ウナイ・シモンは最優秀GKに贈られるゴールデングローブ賞、そしてMFロドリが大会最優秀選手に贈られるゴールデンボール賞をそれぞれ受賞した。
このように公式の賞は決定したわけだが、ここで本記事でも、独自の各賞受賞者を選出したいと思う。いわばCNNが選ぶ、W杯版アカデミー賞だ。
いくつかの決定には異論があるかもしれないが、それはそれで結構。筆者もかなり疲れているので。
ベストゲーム賞スペインのファンには申し訳ないが、最高の試合は決勝ではなかった。幸運にもこの約1カ月間、我々は数々の素晴らしい試合を目にすることができた。
筆者の頭に真っ先に浮かぶのは、エスタディオ・アステカでのイングランド対メキシコだ。途中から10人となり、高地という条件と熱狂的なホームサポーターに苦しみながらも、「スリーライオンズ(イングランド代表の愛称)」は共催国を相手に何とか耐え抜き、準々決勝進出を果たした(訳注:最終スコアは3―2)。
その他、カボベルデがウルグアイと2―2で引き分けた試合も見事だった。「ブルーシャークス(カボベルデ代表の愛称)」は決勝トーナメント1回戦のラウンド32でも、前回王者アルゼンチンを延長戦まで追い詰めた。
しかし総合的に判断して、ベストゲーム賞は決勝トーナメント2回戦、ラウンド16で「アルビセレステ」ことアルゼンチン代表がエジプト相手に3―2で逆転勝ちした試合に贈ろうと思う。あの試合には全てが詰まっていた。数々の物議を醸す場面、圧巻のゴール、そしてリオネル・メッシがお膳立てした奇跡のような大逆転劇。
これでアルゼンチンのファンにも、何かしらの賞が一つ授与されたことになるだろうか。
ベストゴール賞通常ならこの部門の賞を選出するのは至難の業なのだが、今回についてはかなり簡単だったと思う。受賞者は、決勝トーナメントでアルゼンチン相手に驚異的なゴールを決めたカボベルデのシドニー・ロペスカブラルだ。
このゴールが別格だった理由はいくつかある。まずシュートそのものが秀逸だった。サイドでマークをかわした後、中へ切れ込み、美しいカーブをかけてボールをゴール右上隅へ突き刺した。
加えて得点状況の重要性も見逃せない。ゴールが決まったのは延長戦。相手はメッシ率いるアルゼンチンだ。あの瞬間、突如としてカボベルデのファンは奇跡を信じ始めた。
最大の番狂わせこの部門はチーム内でも議論になった。何度もカボベルデの話ばかりして申し訳ないが、小さな島国がここまでの戦いを見せると予想していた人はほとんどいなかった。理論上、彼らの結果の大半は番狂わせに思える。
一方で、大会史上最も小さな国として出場したキュラソーが、グループステージでエクアドルと引き分けたことも印象深かった。
だが熟慮の末、この賞はラウンド32でドイツを破ったパラグアイに贈る。もちろん、現在のドイツ代表が選手層の面でやや苦しい状況に置かれているのは理解しているが、それでも単純に戦力だけを考えればパラグアイには勝利するのが妥当だったはずだ。
ところがパラグアイはこの試合で先制すると、粘り強い戦いぶりでドイツの反撃をわずか1点に抑えた。その後も命懸けの守備で逆転を許さず、最終的に「アルビロハ(パラグアイ代表の愛称)」はPK戦で欧州の強豪ドイツを下したのだった。
今日の名言ここで表彰式を少しばかり中断して、W杯優勝がスペインにとってどれほど大きな意味を持っていたのかをお伝えしよう。
以下は、決勝戦で唯一のゴールを決めて母国を優勝に導いたフェラン・トレスの言葉だ。
「ゴールは4700万の国民が決めた。自分のゴールでも、代表に選ばれた26選手のゴールでもない。最初から決まる運命にあったゴールだ。決勝点となったのは必然だった」
最大の論争表彰に戻ろう。残念なことにこの部門には、有力候補がいくつか存在する。
まだキックオフも行われないうちから、大会にまつわる多くの問題がメディアの見出しを飾っていた。まず、ソマリア人審判のオマル・アブドゥルカディル・アルタン氏が米国への入国を拒否され、本人にとって夢だった大会は始まる前に終わってしまった。さらに、イラン代表は劣悪な扱いを受け、直前になって練習拠点の変更を余儀なくされたうえ、試合のたびにメキシコの拠点と米国とを往復しなければならなかった。
しかし最も大きな騒動を引き起こしたのは、米国代表のスター選手フォラリン・バログンに出されたレッドカードの判定だった。とりわけトランプ米大統領が自らその判定を覆そうとしたことが注目された。
それは権力を持つ人々が世界をどのように見ているかを浮き彫りにする出来事だった。本来ならトランプ氏がこのような問題に介入すべき理由は皆無であり、大会を統括する国際サッカー連盟(FIFA)がそれに耳を貸す理由もまた存在しないはずだった。
この出来事は、米国代表にとって悲しい結末につながった。今大会の米国代表は何度も素晴らしいプレーを見せ、新しい世代にサッカーというスポーツへの関心を抱かせてくれたのだが。
そういうわけでこの部門に関して、本当の意味での「勝者=受賞者」はいないということになる。
最大のスターではいよいよ、今大会で最も際立った活躍を見せた選手の名を発表しよう。この部門には何人かの有力候補がいる。
もちろんメッシは素晴らしく、全盛期を彷彿(ほうふつ)させるような魅惑的なパフォーマンスを披露した。そしてエムバペもまた、国際大会での勝負強さを改めて証明した。
さらにイングランドのジュード・ベリンガムは、「スリーライオンズ」で圧倒的な存在感を放った。カボベルデ代表GKのボジニャも、一夜にしてスターの座を手にした。
しかし、十分に議論を重ねた末、今回はこの賞をアーリング・ハーランドに贈ることにする。
まずはっきりさせておくと、このノルウェー代表のストライカーはピッチ上でしっかりと結果を残した。ブラジルという5度の優勝を誇る強豪国を破ってチームを準々決勝へ導き、重要な場面でゴールも決めた。一方で、その規格外の個性もまた、世界中の人々を魅了してやまなかった。そうした人々の中には、実際の試合を見てさえいない人も大勢いた。
ハーランドのミームや動画クリップはあらゆる場所で拡散され、世界中でそっくりさんイベントまで開催された。何事にも独特なアプローチで取り組むこの25歳の若者に、人々はすっかり心をつかまれた。
「自分の人生には、かなり満足している」。大会を去った後で、ハーランドはそう語った。
特別功労賞最後にもう一部門。この手の授賞式にはたいてい付きものの賞に言及しよう。
同賞は基本的には、メッシがサッカー界で成し遂げてきたあらゆる功績を称(たた)えると共に、多くの人が抱く疑問――「いよいよ代表引退か?」――に答えることを目的としている。
とはいえ実際のところ、メッシが本当に代表から引退するのかどうかはまだ分からない。39歳となった今、世界最高レベルの相手と試合全体を通してフィジカルで渡り合うのは、さすがに難しくなっている。それでもなお、「まだ十分プレーできるのではないか」と思わせるような輝きを随所に見せているのは事実だ。
ただ決勝戦終了後に流した涙は、本人の心境を物語っているのかもしれない。もはや自らの実力を証明する必要など何もなく、キャリアで手にできる全てのタイトルを勝ち取ってきた選手だ。今後のことはゆっくりと時間をかけて考えるのだろうが、今大会を最後にアルゼンチン代表のユニホームを脱ぐ可能性は間違いなくある。もっとも、我々は以前の大会でも同じ発言を繰り返しているわけだが。
試合終了のホイッスル今夏を彩った「ビューティフル・ゲーム(美しいゲーム)」の祭典とは、これでひとまずのお別れとなる。それでもそう遠くないうちに、選手たちは世界各国の主要リーグに戦いの場を移し、また数々の素晴らしいプレーを見せてくれるだろう。
ファンとしてはそれまでの数週間、ビーチでのんびりと過ごしながら英気を養うことにしようか。スポーツ界屈指のドラマが繰り広げられた、北中米大会の思い出を振り返りながら。
それでは、アディオス!
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本稿はCNNのベン・チャーチ記者による大会総括記事です。
