「殺害指示を伝えただけ」「他人の犯罪を手伝っただけ」…「宝島さん夫妻殺害事件」初公判で飛び出た「指示役」「仲介役」驚きの弁明 実行犯たちの衝撃の報酬額とは
一昨年4月、東京・上野で複数の飲食店を経営していた宝島龍太郎さん(当時55)と妻の幸子さん(同56)が殺害され、死体が遺棄される事件が発生した。後に殺人や死体遺棄などで逮捕されたのが、被害者の長女・宝島真奈美被告(33)と、その内縁の夫の関根誠端(せいは)被告(34)ら7名。俗に言う「宝島さん夫妻殺害事件」である。
6月22日、指示役や仲介役として関与したとされ、殺人と死体遺棄・損壊の罪に問われている佐々木光被告(30)と平山綾拳(りょうけん)被告(27)の裁判員裁判初公判が東京地裁(中川正隆裁判長)で開かれた。同事件を巡って逮捕、起訴された7名のうち、公判が開かれるのは、これが初めてのケースである。初公判では、事件に関わった者たちの役割分担や報酬、そしてどのように夫妻が殺害されたかが明らかになった。被告らのずさんな犯行計画と、残虐な殺害態様について述べた【前編】に続き、【後編】では、殺害によって実行犯たちが得た報酬額と、佐々木、平山両被告が法廷で述べた“弁明”について詳述する。

【前後編の後編】
【高橋ユキ/ノンフィクションライター】
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1500万円の報酬
(4月16日未明の)殺害の間、佐々木被告は平山被告に対し「殺害はまだ終わらないのか」と催促の連絡を入れている。待ち合わせ場所でプリウスを降りて徒歩で現場に到着していた平山被告はガレージの外で見張りをしており、殺害が終わった旨の報告を受けると、リモコンを使いガレージを開ける。実行役の2人はプリウスに遺体を積み込み、栃木県に運搬しガソリンを使って焼却した。
その後、佐々木被告は上野で関根被告と落ち合い、あらかじめ約束されていた報酬1500万円を受け取る。このとき関根からガレージの血痕を掃除するよう言われ、報酬とは別に現金100万円も上乗せされた。佐々木被告はその後、品川区の居酒屋で平山被告と待ち合わせ、報酬の現金1400万円が入ったバッグを手渡す。ふたりは犯行現場の清掃のために洗剤などを購入して現場ガレージに向かい、清掃後に解散した。さらに佐々木被告は同日午後2時から5時までの間、家電量販店で高圧洗浄機やホースなどを購入し、もう一度一人でガレージの清掃を行っている。一方の平山被告はその頃、プリウス返却のために埼玉県の自宅にやって来た姜光紀被告(カン・グァンギ=逮捕当時20。実行役)に、若山耀人被告(きらと=同20。実行役)と二人分の報酬500万円を渡し、姜と二人で上野に買い物に行き、約120万円の貴金属を購入した。
「他人の犯罪を手伝っただけ」
一連の計画は終始ずさんである。こうして報酬の受け渡しが終わった頃、夫妻の遺体が発見されたことが報じられるや否や、関根被告は佐々木被告に対し「実行役を出頭させて指示役の存在を隠すように」と命じたのだ。佐々木被告からこれを伝えられた平山被告は、実行役2人に連絡を取り、若山被告の住む千葉県で落ち合う約束をしたが、2人に飛ばれてしまう。そのため平山被告はみずから出頭。佐々木被告はこのとき、平山被告のスマホを没収し「自分の名前は出すな」と口止めしたという。
今回の公判では、佐々木、平山両被告の果たした役割について、それぞれの弁護側は以下のように主張している。まず佐々木被告の弁護人は公訴事実を認めながらも、「橋渡し役にすぎない」と訴えた。
「殺害には関与しておらず、実行役とは接点すら持っていない。実行役を動かしたのは平山で、佐々木さんは橋渡し役にすぎません。佐々木さんは関根の意思を下流に伝達する一区間でしかない。動機も存在しない。報酬を目当てにしていた他の共犯と異なり、報酬は一切もらっていない。加担したのは関根からの命令」(佐々木被告の弁護人による陳述)
一方、平山被告の弁護人は「他人の犯罪を手伝ったに過ぎず共同正犯ではなく、ほう助犯にとどまる」と主張。自ら交番に出頭していることから自首が成立し、刑が減軽されるべきだと訴えた。また佐々木被告から受け取った報酬入りのバッグには本来1400万円が入っているはずが「数えたところ1320万円だった」とも主張。佐々木被告による抜き取りを匂わせている。
自ら用立てた金によって…
この多額の報酬がどのように準備されたかも初公判では明らかになった。前田亮被告(36=逮捕当時。殺人などで逮捕)は宝島さんから店舗用物件の仲介を依頼されており、2024年1月、サンエイ商事から前田被告の会社口座へ約4677万円の契約金が振り込まれていた。ところが前田被告はこの金を実際の契約支払いに充てずに放置。4月上旬になり前田被告から物件所有者に対し「宝島さんの体調不良」として契約延期を申し入れ、契約を白紙にしたが、預かったお金を返金せず所有していた。
事件直前、前田被告はこの口座から1800万円を引き出し、殺害や遺体処分の報酬とその他の費用として準備したという。新たな店舗のために用立てた金によって夫妻は命を奪われたのだった。佐々木・平山両被告の公判は7月に判決が予定されている。
【前編】では、被告らのずさんな犯行計画と、残虐な殺害態様について述べている。
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高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。
デイリー新潮編集部
