カッコイイのに消える運命だった? 失われた2ドアクーペ5選

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失われた2ドアクーペたちを振り返る

 近年、セダンやステーションワゴン、そしてクーペが激減してしまいました。こうしたモデルはかつて隆盛を極めていたものの、ニーズの変化にはあらがうことができず、次々と姿を消してしまったのです。

失われてしまった往年の2ドアクーペたち

 なかでもクーペは1980年代から1990年代にかけて若者から絶大な支持を得ており、スペシャリティカーやスポーツモデルなど、各メーカーがラインナップしていました。

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 しかし、1990年代の中頃から人気の低迷が顕著になり、2000年代になると激減し、現在ではかなりレアな存在です。

 そこで、現行モデルの系譜に存在した失われたクーペを、5車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「カローラレビン」

FFスポーツカーとして成熟したものの消滅してしまった「カローラレビン」

 トヨタは1972年に、2代目「カローラ」をベースとした高性能な2ドアクーペの初代「カローラレビン」(同時に「スプリンタートレノ」)を発売。

 比較的安価な価格とトップグレードには1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載したことで、当時の若者から人気となります。

 その後も、常に初代のコンセプトを継承しながら代を重ね、1987年登場の5代目からは2ドアクーペのみに回帰。そして1995年には7代目がデビューしました。

 外観は前傾姿勢をとる短距離ランナーのようにスピーディかつスタイリッシュなフォルムのクーペで、トップグレードには165馬力を誇る1.6リッター直列4気筒5バルブDOHC自然吸気エンジンを搭載。

 同じくトップグレードにはスーパーストラットサスペンションやヘリカルLSDを装着したモデルを設定するなど、優れた運動性能も高く評価されました。

 しかし、クーペ市場の縮小から2000年に生産を終え、レビンの長い歴史に幕を閉じ、以降はカローラシリーズに2ドアクーペはラインナップされていません。

ホンダ「シビック クーペ

アメリカで開発・生産されて輸入されたスタイリッシュモデルの「シビッククーペ

 2021年6月24日に、11代目となるホンダ新型「シビック」がワールドプレミアされる予定で、現在、再び注目を集めています。

 シビックは1972年に初代が誕生。当初は2ドアノッチバックのみでしたが、3ドアハッチバック、4ドアノッチバック、ステーションワゴン、5ドアハッチバック、4ドアセダンとボディラインナップを拡充しました。

 そして1993年に、5代目シビックをベースにした「シビック クーペ」が登場。アメリカで企画・開発・生産されたモデルで、日本には「アコードクーペ」や「アコードワゴン」と同じく輸入車として販売されました。

 シビック クーペは好調なセールスを記録し、1996年には6代目ベースの2代目シビック クーペを発売。

 先代と同じくアメリカで開発・生産されたモデルで1グレードのみ。エンジンは1.6リッター直列4気筒VTEC-Eを搭載し、最高出力120馬力と性能的にはマイルドです。トランスミッションもCVTの「ホンダマルチマチック」のみとされるなど、スムーズなドライブスタイルを強調しています。

 ボディはフロントセクションが3ドアハッチバックやセダンと共通で、セダンと同サイズのクーペボディは伸びやかでスタイリッシュです。

 しかし、先代ほどの人気は獲得できず、2000年に生産を終了。その後も北米ではシビック クーペは継続して販売されましたが、2020年に6代目をもって廃止されました。

 次期型については、今のところアナウンスされていません。

●三菱「ミラージュ アスティ」

使い勝手が良好で高性能なモデルもラインナップされた「ミラージュ アスティ」

 三菱初代「ミラージュ」は1978年に誕生。同社初のFF車であり、スタイリッシュなボディにコンパクトカーでは初のターボエンジン車をラインナップし、高い人気を誇りました。

 その後、ミラージュは三菱を代表するベーシックカーとなり、現行モデルは2012年に発売された6代目で、2020年には先進安全技術の強化と共にフロントフェイスを一新するビッグマイナーチェンジが図られています。

 このミラージュには1991年登場の4代目並びに、1995年登場の5代目で、2ドアクーペの派生車「ミラージュ アスティ」がラインナップされました。

 ボディは3ドアハッチバックと同様なフロントフェイスで、比較的大きめのキャビンとすることによってスタイリッシュながらも良好な居住性を確保。

 なかでも5代目ベースの2代目ミラージュ アスティには特別な高性能モデル「RXバージョンR」を設定。エンジンは最高出力175馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒MIVECを搭載し、チタン合金製吸気バルブの採用や、低速と高速のカムプロフィールの切り換えタイミングの変更などのチューニングが施されています。

 さらに「ランサーエボリューション」を彷彿とさせる大型リアスポイラーや、OZ製15インチアルミホイール、MOMO製ステアリングホイールが装着されるなど、内外装もスポーティに演出。

 しかし、この代をもって2000年にミラージュ アスティは生産を終了し、現行モデルは5ドアハッチバックのみとなっています。

モータースポーツでも活躍したクーペとは?

●日産「スカイラインクーペ 370GT」

大排気量自然吸気エンジンを搭載したラグジュアリーモデルの「スカイラインクーペ 370GT」

 日産「スカイライン」は3代目の途中(1970年以降)から、4ドアセダンと2ドアクーペ(ハードトップ)を主力としてきました。

 しかし、2002年に生産を終えた10代目(R34型)をもって、2ドアクーペがラインナップから消滅。ところが2003年に新たな「スカイラインクーペ」(CV35型)として復活しました。

 大型のボディを生かした流麗なフォルムから一定の人気を獲得し、2007年には次世代のCV36型へとバトンタッチ。

 正式な車名は「スカイラインクーペ 370GT」でグレードは4タイプ、上位の「Type S」と「Type SP」では6速MTも設定されました。

 外観はセダンとイメージを共有するデザインながら、細部の造形はクーペ専用とされ、抑揚のあるグラマラスで流麗なフォルムが印象的です。

 エンジンは最高出力333馬力を誇る3.7リッターV型6気筒自然吸気エンジンで、同エンジンは「フェアレディZ」に先んじて搭載されるなど、高性能なビッグサイズクーペという明確なコンセプトを打ち出していました。

 その後、13代目スカイラインがデビューした後もクーペは継続して併売されましたが、2016年に生産を終了。3代目から始まったスカイラインクーペの長い歴史に幕を閉じました。

 なお、北米では現行スカイラインとプラットフォームを共有するクーペのインフィニティ「Q60」が現在もラインナップされています。

●スバル「インプレッサ リトナ」

ラインナップ拡充で追加されたものの売れなかった「インプレッサ リトナ」

 スバルは大ヒットした初代「レガシィ」よりもさらにコンパクトなモデルとして、1992年に初代「インプレッサ」を発売。

 発売当初は4ドアセダンとステーションワゴンのふたつのボディタイプで展開し、高性能グレードの「WRX」が設定され話題となり、レガシィに続くヒット作になりました。

 そして1995年に、新たなラインナップとして2ドアクーペの「インプレッサ リトナ」を発売。

 クーペ版インプレッサはもともと海外専用モデルとして販売されていましたが、ラインナップ拡充のため日本でも展開されました。

 しかし、すでに2ドアクーペのニーズは低下し始めていたことに加え、インプレッサは高性能なセダンとステーションワゴンというイメージが定着していたため販売は低迷。

 1996年のマイナーチェンジでリトナは廃止されてしまいましたが、代わりにリトナをベースとした高性能モデルの「WRX Type R STiバージョン」が限定販売されました。

 1997年から世界ラリー選手権を戦うクルマが「WRカー」に移行すると、スバルはクーペをベースにラリーカーを仕立て、3年連続のマニュファクチャラーズ(メーカー)チャンピオンを獲得するなど活躍。

 さらに、このWRカーのレプリカモデルとして、1998年に400台限定の2ドアクーペ「22B STiバージョン」が発売されました。

 この22B STiバージョンを最後に、インプレッサの2ドアクーペは設定されていません。

※ ※ ※

 昔はクーペをラインナップするクルマは珍しくなく、今では考えられませんがトヨタ「クラウン」やホンダ「レジェンド」にもクーペがラインナップされ、ちゃんとニーズもありました。

 さらに、クーペでも比較的室内が広い実用的なモデルも多く、かつてはファミリーカーとしても十分に機能していたといえます。

 しかし、今や2ドアクーペというと高級なパーソナルカーか、86/BRZのような趣味のクルマというポジションで、SUVやミニバンが人気の現状ではラインナップの拡充は絶望的でしょう。